道中
お待たせ致しました。
前回予告では道中と初めての街としましたが、分けさせていただくことになりました。
拙い文章ですが最後まで読んでいただけると幸いです。
ハーミットの人口を120万人から12万人に、冒険者を4万人から3万人に訂正いたしました。
魔の森から最も近い街ハーミットまでは約90kmあり、ハーミットまで残り30kmの所まで来たシグルズ達は、走るのを止めて歩き出した。ボールスたちと別れてからここに来るまで10分と掛からずに来てしまっているのだが、これでも全力で走っていたわけではなく、周囲に影響を与えないように足元や周囲に結界を張ったうえで、力を抜いて走っていたのだ。
「さて、ここからはゆっくり行こうか」
「私はもっと走りたいのだが」
運動し足りないとエレインが不満げに言う。
「う~ん、色々確認したいからな……」
「ならば主殿はこのまま進めば良いのだ。私はその辺の魔物でも狩ってくる」
「それならいいかな、全部は狩っちゃ駄目だからね?」
「分かっている」
エレインはそう言うと何処かに駆け出して行った。
「早いなー。ゼス、悪いんだけどやり過ぎないように見張って来てもらえるかな?」
エレインの活発ぶりにシグルズは苦笑いしながらも、魔物が全滅してしまっては今後が困る、と肩に座っているゼスに頼んだ。
「そうだね、僕も行ってくるよ」
「うん、お願い。それと、魔物の素材は勿体ないから持ち帰ってね」
ゼスは空間魔法を使えるためアイテムボックスのように異空間に物を保存できるのだ。
「分かった、じゃあ行ってくるねー」
ゼスはシグルズの肩からふわりと宙に浮き上がると、エレインが走って行った方向に一瞬で飛んで行った。シグルズは
ゼスの姿が見えなくなると、自分の腕に抱かれて眠っているバルドの背中を片手で撫でながら、歩く速度を速めた。
「さてと、まずはじいちゃんに貰った金から見てみるか」
メニューによってアイテムボックス内の一覧表を表示させながら、ボールスに貰ったマジックバックの中身を全てアイテムボックスに移すと、表示されたそのあまりの額に目を見開き思わず足を止めてしまった。
「これで多少なのかよ、じいちゃん……」
表示された内容は以下の通りだ。
星金貨10枚・白金貨400枚・金貨1300枚・大銀貨1000枚・銀貨600枚・大銅貨800枚・銅貨500枚
日本円にして総額約141億円。物価の違いが日本と比べて余りないミレイユで、シグルズは突然大富豪になってしまったのだ。
「たぶん冒険者時代に稼いだんだろうけど……SSSランクは伊達じゃないってことか」
シグルズは深く息を吐きながらも再び歩き始めた。
「まあ、これで当分は資金の心配をしなくて済むんだから、感謝しないとな」
シグルズはメニューを閉じると自身の姿を見た。
「次は服だな、流石にこのまま街に入るのは不味いよな」
今のシグルズの服装は、遠目から見れば平民が着ている一般的な物に見えるが、よく見ると明らかに上等な材質で出来ている事が分かる。ミレイユでは魔物対策のためにどんなに貧しい村でも必ず塀で囲まれていていて、門があり門番がいるため、この服装のまま街の中に入るとなると間違いなく門番に止められるだろう。これといった武具もつけず、見た目がか弱い少女が魔物が蔓延る街の外から来た上に、服が上等で傷一つないなんて、どう見たって異常事態だからだ。
「自分で作っておいて言うのもなんだけど、俺の装備って大体派手なんだよな。目立たないって言ったら暗帝一式くらいか」
そう、彼が作った装備はどれも煌びやかで、唯一黒色がメインになっている暗帝一式が外見的には一番まともな装備であった。
「よし、瞬間換装と」
シグルズがスキルを発動すると一瞬で装備が変わり平民の服から漆黒の暗帝そうびになった。最初に装備を作ってから更に改良が加えられた○帝一式装備と神皇一式装備は、胸当てや脛当てなどの軽鎧が既存の装備と同じ効果を付与した状態で追加され、新たに【適温調節】【自動伸縮】【防汚】が全ての装備に付与されている。
そして装備に魔力を流すことで、自身の周囲にその装備の属性を顕現させることが出来るようになった。例えば炎帝装備なら炎を自身の体に纏ったり、周囲の温度を上げるなんてことが出来るし、暗帝装備ならば闇を纏うことで姿を消したり、自身の背後に闇のオーラを出すことで相手に恐怖を与えることが出来る。これらは込める魔力によって効果が変わり、全てが自身にとっては無害、つまり顕現した炎で火傷をするなんて事がないようになっている。神皇一式装備は全ての属性を自由に切り替えて纏うことができ、同時に全ての属性を纏うと装備が虹色に光り輝くようになっていて、この光にはどんなものにも精神に安らぎを与える効果がある。
「これで良しと。武器は双破剣でいいかな」
もう一度瞬間換装を使ったシグルズの腰には、ローブに隠れてはいるものの鞘に収まった双破剣がしっかりと装備されていた。
「あとは、ハーミットについて確認しとくか」
晴天の空に浮かんだ眩しい太陽の日差しを遮るため、ローブのフードを深めにかぶり、バルドをローブの中にいれたシグルズはイグニスから聞いた情報を整理し始めた。
「確かエルブス王国最南端の街で、最も魔の森に近いことから街周辺の魔物の強さが他の街とは比べ物にならないほど強いためにエルブス王国有数の冒険者数とクラン数を誇り、その冒険者の質も非常に高いか。人口は約12万人でその内約3万人が冒険者とか凄いな。冒険者は荒くれ者が多いってじいちゃんが言ってたけど、ハーミットを治めている貴族の私兵が治安を維持してるって話だから、その兵士たちも相当強いんだろうな。魔の森からの魔物の氾濫を警戒して作られた街だから、街の外周を囲んでいる塀も非常に頑強で、過去に数回あった周辺の魔物の急増による大進行を、全て返り討ちにしてきたか。自分のクランを作るならここは最高の環境なんだろうけど、それは冒険者ランクを上げてから考えればいいか」
クランとは冒険者ギルドに所属する同じ目標を持った冒険者の集団の事を指す名称で、クランに所属していると、そのクランのランクに応じたギルドから様々な恩恵が得られる。クランの結成には条件があるのだがそれは冒険者に登録したときにギルドで説明してもらおうと思う。
「ハーミットについてはこんなもんかな。ん……これは」
シグルズは足を止めてマップを見ると、シグルズに急速に接近する赤い点が15個も表示されていた。ここに来るまで敵を示す赤い点はいくつもあったが、シグルズ達の走る速度が余りにも早かったために敵が近づいてくる暇はなかったのだが、今は普通に歩いているため近づいてきたのだ。
「グレーウルフか。なんだか懐かしいな」
姿が見え始めたグレーウルフ達は、シグルズを取り囲むように広がるとすぐには襲い掛からず、唸りながらシグルズの様子を窺った。
「グルルルル」
「こうしてみると結構可愛いんだよな。エレインの毛並みには劣るけど、やっぱりモフモフはいいよな~」
いつかは狼系の魔物の軍勢を作ってみたいなと呑気に考えていたシグルズは、グレーウルフに囲まれても平然としていた。
「とは言っても、いつまでもいられると迷惑だからな。そろそろどいてくれるかな?」
そう言うとシグルズは最低威力の威圧を放った。
「キャイィィンン!」
グレーウルフ達は小さく悲鳴を上げると数歩後ずさった。
「傷は最小限にっと、サンドニードル」
シグルズは森土魔法で地面から15個の細長い土の塊を作り出し宙に浮かせると、それぞれを別々のグレーウルフ達に向かって放った。
「ガフ!」
「キャン!」
放たれた土の塊は全てが反応できないままでいたグレーウルフの眉間を突き破り、その命を絶った。
「終わりっと、グレーウルフぐらいならこんなものか」
シグルズはグレーウルフに近づいていくと、完全解体を使って死体の処理を済ませ、素材をアイテムボックスにしまうという作業を繰り返していった。
「ん~♪」
何事もなかったかのように綺麗な鼻歌を歌い始めたシグルズは、地平線の先に見え始めたハーミットの外壁を目指して進むのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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次回 初めての街ハーミット




