3. エプロンの衝撃再び
もう1つエプロンの小話。
最終話の直後のお話です。
ロッカとフランの甘ったるいコントのようなやり取りが終わり。ロッカを追いかけてフランも食堂から出ていった後。
ディドイは先程から飲んでいたコーヒーを口にして、顔を盛大に顰める。冷めきっていて、元々美味しくないコーヒーがさらに美味しくなくなっている。
はぁ、とため息を吐きながら、先程ロッカから押しつけられたプレゼントに視線をやる。
「良い予感はしないんだけどな……」
そう言いながらも、律義に中身を確認するあたり、ディドイの人の良さは並はずれている。
しかし、包み紙の中から出てきたソレを見た瞬間、ディドイの表情は無になる。そしてそのまま無言でソレを食堂のゴミ箱に叩きこむ。
「……仕事に戻ろ」
深いため息を吐いたディドイは、疲れたような足取りで食堂を出ていくのだった。
§ § § § §
そしてその時、幸か不幸か食堂に居た幾人かの女性たちは、ディドイが出ていくのを静かに見送ったあと、無言の目配せで素早くゴミ箱の側に集合していた。
女官や侍女、下女に数の少ない魔女などなど。身分を問わず、仲良く集合していた。
その様子を見た男性陣がビクリと震えていたが、そんなことには構わず、女性陣はひそひそと話し合う。
「先程ディドイ様が捨てられたのは、何でしょうか」
「魔女のロッカさんが手作りしたナニか、らしいです……」
「音やディドイ様の身振りからして軽いもののように思いますが」
「では、これでしょうか?」
食堂のゴミ箱ということにも怯まず、下女の一人が一番上にあった綺麗な布を拾い上げて広げる。
「これは……!」
「ディドイ様にもさぞお似合いになるでしょうね」
「ロッカさんって天才!!」
「是非ともディドイ様にお召しになって頂きたいわ」
女性陣が口々に賞賛の声を上げるそれは、きっちり綺麗に縫いあげられた水色のエプロン。胸の真ん中には、可愛らしい白狼のワッペンが縫い付けられている。
「縫製の技術も素晴らしいですが、色合いやデザインが、ディドイ様にピッタリの物を見立てるなんて……」
「でも、以前のフリルたっぷりのエプロンも捨てがたいですわ」
「それなら、セクシーなデザインのエプロンなんていかがかしら?」
それぞれが思い描くエプロンへと話題は転換していき、そのまま女性陣の暴走へと発展していく。
「ではここに、『ディドイ様にエプロンを再び!』計画の発動を宣言します!」
その言葉と共に、決意を新たにした女性陣は散っていく。
そしてその計画は、この場に居なかった多くの女性職員にも拡散され。
今度は様々なデザインのエプロンを手にした女性陣に追い回されるディドイの姿が、度々城内で見かけられるようになったのだった。




