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未来日記  作者: 秋華(秋山 華道)
3/22

みかんの友達

みかんが俺を睨んでいる。

これは俺に、ノート使えという無言の圧力だ。

昼過ぎに起きて飯を食った後、部屋に戻ってから10分、ずっとこの状況が続いている。

 宗司「はぁ~。今日もなんか書いてみるか。」

 みかん「宗司最後ーー!!!」

それを言うなら最高でしょ?

それともホントに最後なのか?

死ぬのか俺?

そう言えば、2日前まで俺は死にたいと思っていたんだよな。

でもなんだろう。

今はそんな気が全くしない。

 宗司「みかん?」

 みかん「うーん。早く~!書いて書いて~!」

・・・

可愛い。

こいつのおかげかな?

なんだか死ぬのが惜しくなってきたような気がする。

よし、ノート書くか。

で、何を書く?

欲望のままに書いても、それはどうせ達成されない気がする。

些細な事を書くか?

些細な事なら、自分で普通にできるよな。

てか、善意に優しく、悪意に厳しいとか言ってたな。

ココは自分の為じゃなく、誰かの為に使うってのがいいのかも。

でもさ、俺友達いないじゃん?

ニートじゃん?

そんな事言っても、誰にも俺の善意を与えられないじゃないか。

ふと、俺の目に入るのは、小さな魔女ッ子みかん。

 宗司「おまえさ、何か欲しい物とか望みとかあるか?」

俺はみかんに聞いてみた。

 みかん「望み?んー、エナジーくれ!」

ノートを書いてくれれば良いって事か?

それだとなんにもならないんだけど。

 宗司「それ以外だと?」

 みかん「遊ぼう!!」

・・・子供だ・・・

あっ!そうか。

よく考えたら、こいつはどう見ても子供。

まあ、このまま人間サイズになったら、子供ってよりも、中学生くらいの容姿っぽいけど、子供に必要なのは友達じゃないだろうか?

 宗司「お前、仲間とかっているのか?」

 みかん「仲間?」

 宗司「ああ、お前と同じ、ちっこい魔女ッ子がいるのかと聞いている。」

 みかん「んー。いるんじゃないかな?見たことないけど。」

ほう、いるのか。

でも見たことが無い?

 宗司「見たことないのに、どうしているってわかるんだ?」

 みかん「この星にいるかどうかはわからないけど、いるのは確かなのさ。で、おそらくはこの星にも、いる確率はそこそこあるのだ。」

 宗司「ふむ。じゃあ、誰かと一緒にこの星に来たわけではないのか。でもおそらくいるだろうと。」

 みかん「うん。」

 宗司「じゃあ、ココに魔女ッ子に会うって書いたら、会えるのか?そしてみかんと友達になったって書いたら、友達になれるのか?」

やっぱり、友達って大切だよね。

俺友達いないから、凄く欲しいモン。

なんでも話せる友達が。

できれば女の子がいいけど。

 みかん「宗司優しいのだ・・・」

みかんは目に涙を浮かべて感動していた。

しかし・・・

 みかん「でも、無理だと思うのさ・・・」

みかんの顔はすぐに悲しそうな顔になった。

 宗司「どうしてだ?ノートに書いたら、実現されるんだろ?」

悲しそうな顔を見ていたら、こっちも悲しくなってきた。

 みかん「そうなんだけど、この星にいないと流石に無理なのさ。」

 宗司「さっきいるっていったじゃん?」

いるって言ったのにいない?

どういう事だ?

 みかん「おそらくいるけど、出会う事のできる魔女ッ子がいないのさ。」

こいつ、自分で魔女ッ子って言ってやがる。

ふふふ。

って、それはどうでもいいんだけど。

 宗司「どうしてだ?」

いるのに会えない。

なんか悲しくなるだろが。

 みかん「んー。一言で言うと、ノートを持つ人間同士が干渉しあえないように、魔女ッ子同士ではお互いが見えなくなるの。もちろん人間の方からも。」

なるほど。

こんなノートを持つ奴が集まったら、何しでかすかわからないとでも言うのだろうか。

確かに、今俺一人だから何していいか思いつかないけど、沢山集まれば何かとんでもないことができてしまうかもしれない。

ん?まてよ。

でも、俺はこいつにノートを貰う前に出会ったわけで、もう一人同じように見えれば、そいつも俺の魔女ッ子になるんじゃ?

 宗司「ご主人様が決まってない魔女ッ子に会っても見えないのか?」

 みかん「ううん。見えるよ。でももう何日も経ってるし、ご主人様をみつけてない魔女ッ子なんて、いないと思う。」

見込みはほとんどないって事か。

でも、ゼロではないんだよな。

 宗司「試してみて、いいか?」

おれは一応聞いてみた。

 みかん「そんな事する人って、いるんだね。ご主人様の過去の歴史の中で、そんな事する人見たことないのだ。」

 宗司「おお!俺って史上最初の人間になるのか。なんかかっけぇー!」

俺はノートに書き始めた。

魔女ッ子がいれば、見つけるのに、たいして手数が必要な気がしない。

それにこれは善意だ。

と思う。

俺はノートの二行目に、「俺はみかん以外の魔女ッ子に出会った」と書いた。

 みかん「きっと、出会ったの後に、気分をあじわったとか書かれちゃうのさ。」

なるほど。

無理な事を書いた時は、そんなふうにかわされるのか。

文字が書かれ始めた。

一行だけだったので、すぐにその行為は終わった。

なになに、「今日も俺は散歩に出る。すると公園で」書かれていたのはこれだけ。

その後に、俺が書いた、「俺はみかん以外の魔女ッ子に出会った」があるだけ。

 みかん「えっ!?もしかして、まだ本当にご主人様が決まっていない魔女ッ子がいるの?てか、こんなに近くに?」

みかんが驚いている。

これはそうとう珍しい事なのだろう。

ってか、俺が初めてこんな事を書いたんだから、珍しいどころか初めてなんだろうけど。

 宗司「まあ、そういう事だ。とりあえず公園、行ってみるか。」

俺は少しフリーズ状態のみかんを肩に乗せると、家を出た。

今日は犬とすれ違う事もなく、すぐに公園についた。

パッと見、魔女ッ子らしい姿はない。

 宗司「小さいからな。」

俺はちょっと不安そうなみかんの頭を指でなでた。

みかんはちょっと嬉しそうにしていた。

ベンチまで来た。

しかし魔女ッ子らしい姿は見えない。

 みかん「やっぱり、何かの間違いだったのかなぁ~」

少し、いやかなり、みかんは残念そうな顔をしていた。

 宗司「そうあわてなさんな。ココで会うことになってるんだから、少し待ってみるべ。」

俺はベンチに座って、背もたれに体をあずけて上を見る。

ポコッ!

白だ。

何かが上から落ちてきた。

そして顔に乗っかった。

おそらく、ベンチの上まで張り出している枝から落ちてきたのだろう。

もちろん、鳥の糞が落ちてきたわけではない。

なんせドキドキワクワクな白が見えたのだから。

 魔女ッ子「あれ?どうしたんだろ?この人、私を通り抜けないよ?もしかして、ご主人様?」

ちょっと喜んでいるようだ。

良かった良かった。

でも、先に顔からおりてくれないかな?

ずっと白いのが見えてるんですけど。

 みかん「・・・」

 宗司「どうしたみかん。お前にも見えるのか?」

 魔女ッ子「ええっ!もしかして、この方は、既に所有者になっちゃってる?」

俺の顔の上で立つ魔女ッ子の前に、みかんが立つ。

ってか、俺の顔の上で、なにしてんだこの野郎。

野郎じゃないな、白いのが二つ見えるもんな。

 みかん「うん。こいつは私のなのさ。」

いや、別にみかんの持ち物になった覚えは無いぞ?

 魔女ッ子「うーん。譲ってくれる気は?」

なんと、譲る事とかもできるんだ。

ってか、二人とも俺が面倒みる事はできないのか?

 みかん「譲るなんて、できないのさ。」

 魔女ッ子「だよね・・・」

魔女ッ子は俺の顔の上で、ガックリと座り込む。

白いのが見えなくなった。

 宗司「てか、いつまでチミ達は、俺の顔の上にいるのかね?」

俺は二人を捕まえる。

 みかん「うわぁぁ!!」

 魔女ッ子「きゃー!な、何を?」

暴れる二人を、二人?

まあいいや、二人をベンチの上に置いた。

二人とも、ちょこんと座ってこっちを見ていた。

・・・

可愛いよな。

俺はオタクではないけど、美少女フィギュアを集める方々の気持ちが、少し分かった気がした。

 宗司「お前達、今日から友達な。」

俺は二人を、交互に指さす。

 みかん「んー。ロボダッチ?」

 宗司「いや、全然違うし。しかもなんでそんな古いもの知ってるんだ?」

 魔女ッ子「あっ!勉強ロボ!」

 宗司「ああいたね。って、お前もなんでそんなの知ってるんだ!?」

俺のツッコミは無視して、みかんと魔女ッ子は見つめ合っていた。

 みかん「よろしくなのさ。」

 魔女ッ子「うん。こちらこそ。」

うんうん、良かった良かった。


俺は、両肩に両魔女ッ子を乗せて、家路に向かっていた。

 宗司「で、お前名前は?ああ、俺は尾北宗司だ。」

 みかん「ああ!名前言っちゃった!」

どういう事だ?

 宗司「名前言っちゃダメなのか?」

 みかん「契約を成立させるには、名前を聞き出して、それをノートに書く事なんだよ!」

 宗司「じゃあ二人とも俺に仕えればいいじゃないか。」

 みかん「ダメだよ。後から契約されちゃうと、先の人が追い出されるのさ。きっと・・・」

・・・

きっとってのは、過去に実例がないからって事なんだろうけど。

 魔女ッ子「そんな事しないよ。だって友達でしょ。」

魔女ッ子はニッコリと笑った。

 みかん「うん。ありがとう。」

んー、俺としては、この子でも全く問題ないんだけどな。

 みかん「うわーん。今、宗司が私を捨てようと考えたよー!」

 宗司「いや、そんな事しないって、大丈夫だから、大丈夫。」

 みかん「ほ、ほんと?」

 宗司「ああ、この目を見てみろ?な?」

・・・

今一信じられないか?

でも俺はみかんを捨てる気はないけどな。

みかんの顔が笑顔になった。

 みかん「わーい!」

みかんが俺の顔に抱きついてきた。

 宗司「顔に張り付くな。全く・・・」

通りすがりのおばさんの顔が、不信感いっぱいだ。

やばい。

俺は顔のみかんを引き剥がすと、元の肩にのせて、黙って歩いた。

 魔女ッ子「私は、ゆずっていいます。ヨロシクです。」

さっきの質問の答えだ。

 みかん「あれ?名前教えても大丈夫だったっけ?」

 ゆず「そう言えば、前例がないね。」

 みかん「やっぱり私、追い出されちゃうのかな?うう・・・」

 宗司「ああ!大丈夫だって。捨てたりしないし。」

俺はなんだかとても楽しかった。

数日前からは考えられないくらい、充実した時間をすごしている気がした。

だが、この後とんでもない事に巻き込まれる事になる。

この時の俺には、気づくよしもなかった。

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