後悔と恐怖
俺は姫に、桜井海里の行動、予定を調べて欲しいと頼んだ。
こっちが調べている事がばれないようにと、くれぐれも念をおして。
相手は総理大臣の孫、しかも、調べたらいくつかの会社の取締役を兼任している。
金も権力もおそらくは申し分ない。
そしてレベル3の力。
河崎の、いや、三輪の力でも、相手にならないくらい強大な力。
真っ向勝負では勝てない。
でも、相手は色々な予定のある身、立場のある身だから、どうしてもやらなくてはならない事がある。
しかし、こちらの華ちゃんは、学校を休んでいる以上、ずっと隠れる事も可能。
更には3人いるんだ。
互角以上の勝負ができるはずだ。
電話が鳴った。
姫「情報だけど、私が調べるまでもないわよ。テレビ見れば。」
俺は、姫の言葉にテレビを付けた。
今度は、桜井邸に、テレビカメラと記者が押し寄せている。
河崎邸も時々中継が入る。
未来日記の桜井海里と、新未来日記の河崎華、いよいよ対決か?みたいなノリだ。
姫「私ももう外にでれないわよ。」
宗司「もうすぐ終わるから、それまでは自重してほしい。」
姫「宗司さんが何してるのか、華が何してるのか知らないけれど、くれぐれも危険な事はしないでね。」
そう言われても、危険は向こうからやってくるんだけどね。
姫は、俺たちが未来日記になんらかの関係がある事に、気が付いているのだろう、漠然とそう思った。
宗司「ああ。」
俺は危険でもやる覚悟を決めていた。
とにかく、桜井海里は、ずっと自宅にこもっているらしい。
しかし本当にそうだろうか?
華ちゃんだって、実際はココにいるんだ。
一応未来日記を試してみる価値はある。
宗司「未来ちゃん、自宅に桜井海里がいるらしい。俺とココに遠隔操作できる爆弾があると思って、未来を見て欲しい。俺は桜井海里をやれるか?」
正直、人を殺す算段を未来ちゃんにやらせるのは辛い。
でも、俺よりレベルが高いから、頼るしか無かった。
未来「ダメだ。絶対に無理そう。」
宗司「俺の命を考えなくても?」
未来「えっ?!それはダメだよ。」
宗司「いや、参考にするだけだから、とりあえず見てみて。」
いや、本当は、俺の命でなんとかなるなら、それでもかまわないと思ってる。
だって、このまま放っておいたら、華ちゃんは絶対殺される。
姫だって、危ないかもしれない。
未来ちゃんだって、いずれそうなるだろう。
みかん「だ、ダメなのだ・・・」
みかんが小さな声で泣いていた。
未来「ダメだ。どうしても、見えないよ。」
宗司「そっか。」
これは、やはり桜井邸にいないのではないだろうか。
夜とかに潜入できれば、爆弾セット出来そうだけど。
爆弾が爆発しない?
いや、爆発するはずだ。
俺が脳内日記で、爆弾が爆発したと創造したら、簡単な手順でそこまでできていた。
あっ!そうか。
俺は再び脳内で日記を創造する。
「桜井邸で、桜井海里がいる事を確認できた。」と。
ダメだ。
全く、話しにならない。
いない者を、いるなんて事は不可能だからか。
もしかしたら、絶対に確認できないように潜んでいるのかもしれないけど、可能性が高いのは、いない。
だったら何処に?
結局この日は、何もする事無く終えた。
次の日のニュース、信じられないくらい静かだ。
桜井邸を映す事も、河崎邸を映す事も無かった。
未来日記に関するニュースはどのチャンネルも放送していない。
どういう事だ?
圧力をかけたのか?
すると未来日記に関するニュースが流れてきた。
たまたま時間があわなかっただけのようだ。
ただ、盛り上がりは無かったが。
アナ「未来日記ですが、新未来日記を含めて、全て尾北宗司、二十歳が書いた事が判明しました。」
宗司「えっ!」
な、何故?
アナ「ブログサイトには、本人自らのコメントが書かれています。」
未来日記は、「皆さん、そろそろ私も疲れました。私の名前は尾北宗司、二十歳です。新未来日記も私が書いたものです。近々、私は死ぬ事になるでしょう。」
俺は、震えていた。
呼吸も、安定しない。
心臓もちゃんと動いているように感じなかった。
アナ「これを証明する映像があります。」
ネットカフェで、俺が新未来日記に書き込みしている映像だった。
宗司「あのネットカフェ、桜井の息のかかった場所だったんだ・・・」
やはり、この世の中、金と力が全てなんだ。
俺は、何をしようとしてたんだろう。
俺達の方が有利。
馬鹿な事を。
宗司「大人しく、最初から何もしなければ良かったんだ。」
華「駄目だよぉ~。まだ諦めちゃダメだよぉ~」
未来「は、はい。諦めてはダメです。まだ、ココがばれたわけではありませんよ。」
みんな・・・
そうだな。
ココまでやってしまったんだ。
最後まで戦う。
そう思った時、電話がかかってきた。
携帯のディスプレイを確認すると、姫からだった。
宗司「もしもし。」
?「あー。君が、尾北君かな?未来日記だけど。」
宗司「えっ?」
姫の携帯から、桜井?
海里「おたくらのおかげで、俺の計画が少し狂っちゃったよ。責任とってもらうからね。」
宗司「な、何を?」
ダメだ、俺はチキンだ。
怖くてちゃんと話す事もできない。
海里「まあ、大した誤差ではないけどね。あやめを殺さなくちゃいけなくなったのと、河崎姫さんを、誘拐しなくちゃいけなくなったくらいだ。」
宗司「えっ?姫を誘拐?」
華「えっ!?」
未来「そ、そんな・・・」
海里「決着をつけよう。来なければ、河崎姫さんは死んでもらう。ああ、華さんの方も一緒に来るように。」
宗司「ちょっとまてよ。」
海里「場所と時間は・・・」
場所を告げた後、電話はすぐに切れていた。
こちらからかけ直しても、もうつながらなかった。
どうして、俺と姫が繋がっている事が、どうして華と繋がっている事がばれたのか。
桜井海里の目的はなんだったのか。
全ては今更だけど、なんとなく魔女ッ子だけで調べさせたのかな?
そして桜井も、俺と同じで、今の世の中が嫌だったのかな?
なんとなくそう思った。




