表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グルゥとリル、もりのはずれで  作者: うつチャリンカー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/30

石の上の葉

全30話 五月五日まで毎日朝七時投稿

昼をすこし過ぎたころ、小屋の前の草むらに、きいろい葉がひとつ落ちていました。

まだ風はつめたくなくて、ひかりだけがやわらかくうすく、木々のあいだにひろがっていたのです。


リルは戸口のそばにしゃがんで、その葉を見ていました。

小さな手をひざにのせたまま、しばらく動かずにいます。葉はくるりと丸まっていて、はしのほうだけ少し茶色でした。草の上にのっているようでいて、ほんとうは風におかれたみたいにも見えます。


小屋の中では、グルゥが袋の口をたしかめていました。町で買ってきた黒パンが、布にくるまれて机のすみにあります。

それを棚へ置くまえに、戸口のほうを見て、グルゥは外へ出てきました。


リルのとなりまで来ると、グルゥも同じように足を止めます。

何があるのかとたずねるかわりに、ただ草むらへ目を向けました。


リルは、落ちている葉を指でそっとさしました。

「ひとつだけ」


声はちいさく、ねむたげで、でもよく晴れた水みたいにすんでいました。


グルゥはうなずいて、木の上を見あげます。

枝にはまだたくさんの葉がついていて、森はいつもとあまり変わらない顔をしていました。けれど、見ているあいだに、もうひとつ、うすい色の葉が枝先からはなれてきます。ひらひらというより、ゆっくり布がほどけるように落ちてきて、さっきの葉のすぐ近くへ着きました。


リルは小さく目を見開いて、それから立ちあがりました。

落ちたばかりの葉を拾いあげ、手のひらにのせてみます。まだすこしだけ、ひなたのぬくもりが残っているようでした。


グルゥはそのあいだに、軒下へまわって、積んであった枝の中から細いものを一本えらびました。

戸口の横の石の上にそれで葉をならべていきます。重ねず、くっつけすぎず、風が見えるくらいの間をあけて。大きな手なのに、置きかたはずいぶん静かでした。


リルはそのようすを見て、拾った葉を最後にそこへ足しました。

石の灰色の上に、きいろやうす茶のかたちがぽつぽつならぶと、なんでもない昼なのに、少しだけよそいきの顔になります。


風がまたひとつ通りました。

洗濯ひもにかけた布が、白い鳥の羽みたいにふくらんで、すぐに元へもどります。石の上の葉は飛ばされるほどではなく、かすかにふるえただけでした。


リルはそのふるえを見て、石のそばにすわりました。

グルゥも少し離れて腰をおろします。ふたりのあいだには、声より先に、午後のひかりがたまっていました。


しばらくして、グルゥは布にくるまれた黒パンを持ってきて、半分をリルの手にのせました。

あたたかくはないけれど、布のにおいがすこし移っていて、やさしい昼のにおいがしました。リルは葉を見て、パンを見て、それからちいさくうなずきます。


ふたりでかじる音は、葉の落ちる気配よりもすこしだけ大きくて、でも森の中では、ちゃんとしずかな音でした。

ひとくち、またひとくちと食べるあいだにも、ときどき上から葉が落ちてきます。けれど、たくさんではありません。数えるほどもなく、忘れたころにひとつだけ。


リルは石の上の葉を見ながら、

「もうすこししたら、ふえるね」

と言いました。


グルゥは返事のかわりに、足もとの草をならして、リルの座る場所を少し広くしました。

それでじゅうぶん、というように。


森のはずれの小さな家の前で、葉はすこしだけ落ちていました。

まだ季節は急がず、木々も何も言わず、ただ枝先を軽くしていきます。

ふたりはその下で、石の上に並んだ葉を見ていました。風が来るたび、色のうすいものから先にかすかに揺れて、午後のひかりの中で、ちいさな合図のように見えていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ