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サチコとマリコの時事ネタ漫才  作者: 藍埜佑


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第207話「史上最低の失業率なのに景気が悪い国 ~消耗型の安定っちゅうロシア経済の奇妙な歪みと、GDPが実は棺桶製造だった話~」

マリコ:(紙を手に意気揚々と登場)サチコ!経済ニュースを読んでたら、めちゃくちゃ景気の良い国があったで!


サチコ:どこや。


マリコ:聞いてびっくり。失業率が2.2パーセントで、歴史的最低水準なんや。


サチコ:ほう。


マリコ:しかも賃金が上がっとる。GDPも成長してた時期がある。


サチコ:どこの話や。


マリコ:ロシアや。


サチコ:ちょうどええ、今日はその話をするで。


マリコ:ほんま、すごくないか。戦争中なのに失業率が最低水準で、賃金が上がってるて。


サチコ:「すごい」かどうか、その言葉の意味によるな。


マリコ:? どういうことや。


サチコ:失業率2.2パーセントっちゅうのは、「景気が良すぎてみんなが働いてる」からやなくて、「働く人間がいなくなった」からや。


マリコ:働く人間がいなくなった!?どういうことや。


サチコ:戦争で動員されて前線に行った人、戦死した人、「こんな国にいられない」と国外に逃げた人、この三つが重なって、国内に残った働ける人間が激減した。


マリコ:「失業率が低い」のは「仕事がある」からではなくて「働き手が消えた」からっちゅうことか。


サチコ:これをロシアの中央銀行の総裁は「近代史上最悪の労働力不足」と表現した。


マリコ:「史上最悪の労働力不足」と「史上最低の失業率」が同時に成立してるわけか。矛盾してるように聞こえるけど、実は同じ現象を別の角度から見てるっちゅうことやな。皮肉やな。


サチコ:そうや。企業からすると「人が欲しいのに来ない」、数字からすると「就職できてない人がほぼいない」っちゅう両立が起きてる。


マリコ:「求人は出してるけど、応募してくる人間がいない」っちゅうことか。しかも賃金が上がってるのも、その理由やんな。


サチコ:「人手不足だから、引き止めるために給料を上げなあかん」っちゅう状況や。景気が良いから賃金が上がってるんやなくて、「払わないと人が来ない」から上げとんねん。


マリコ:「人手不足インフレ」っちゅうことか。これは日本でも最近似たような話を聞くけど、ロシアの場合は戦争が直接の原因やから規模が全然違うな。


サチコ:そして「GDPが成長した」っちゅう話も、実態を見ると複雑や。


マリコ:2023年から24年にかけては4から5パーセントの成長があったやんな。


サチコ:そうや。でもその成長の中身を聞いたら、笑えへん話になる。


マリコ:何が成長の原因やったんや。


サチコ:戦車を作った。砲弾を作った。ミサイルを作った。装甲車を作った。


マリコ:それが「成長」のカウントになってるっちゅうことか。


サチコ:GDPの計算上は、国内で生産された全てのものの価値が足し算される。戦車も砲弾も「作ったもの」やから、数字に入んねん。


マリコ:でもそのあと「作ったものが全部ウクライナで爆発して消える」わけやんな。でもGDPの計算上は「作った」時点でカウントされる。


サチコ:そうや。「作ったけど誰かの生活も豊かにならず、インフラも増えず、技術も蓄積されない生産」が、数字上は「成長」として計上されとんねん。


マリコ:これはある意味で「棺桶を作り続けたら棺桶業界のGDPが成長した」っちゅう話に似てるな。棺桶の需要が増えたのは良いことではないのに、数字だけ見たら産業が盛んに見える。


サチコ:非常に的確な例えやな。しかも2026年の第1四半期には、ついにGDPがマイナスに転じた。前年同期比でマイナス0.2パーセントの縮小。


マリコ:マイナスに転じた!「3年ぶりのマイナス成長」っちゅうことやんな。


サチコ:しかも政府はもともと2026年の成長率を1.3パーセントと見込んでたのに、0.4パーセントに大幅に下方修正した。


マリコ:1.3パーセントの予測が0.4パーセントになった!それもかなりの外れ方やな。


サチコ:そして現時点では、軍事関連産業は成長を続けとるけど、民間の製造業は12月の水準から5パーセント近く落ちてるっちゅう分析がある。


マリコ:「軍需産業は伸びてるけど、民間は落ちてる」っちゅうのが今の実態やな。


サチコ:これを「二重構造経済」っちゅうねん。軍事関係の企業は国家から資金が来て潤ってるけど、一般の製造業や小売は高金利と人手不足で死にかけてんで。


マリコ:「同じ国の中に、別々の景気が存在してる」っちゅうことか。ロシアの中に「戦争で儲かってる経済」と「戦争のせいでしんどい経済」の二つが同時に存在してるわけやな。


サチコ:その通りや。軍事工場は「いくら作っても足りない」状態で、一般の飲食店や建設業者は「高すぎる金利で融資が受けられない」と困ってはる。


マリコ:金利の話が出てきたな。ロシアの中央銀行の金利は最高で21パーセントまで上がったんやったっけ。


サチコ:そうや。今は14.5パーセントまで引き下げてきてるけど、それでも非常に高い水準や。


マリコ:14.5パーセントの金利でお金を借りたら、年間15パーセント近く返さなあかんっちゅうことか。ちょっとした個人事業主が設備投資をしようとしたら、金利だけで事業が成立しなくなるな。


サチコ:鉄道会社や不動産業者が「我々の業界を支援してくれ」と政府に陳情に来てる、っちゅう話がある。それくらい高金利が企業を追い詰めてる。


マリコ:「戦争をしながら、高金利で自国の企業も追い詰めてる」っちゅう状況やな。


サチコ:あとインフレの話もしよか。公式の統計ではインフレが5パーセントちょっとっちゅう数字が出てる。でも体感はもっと高い。


マリコ:食品が上がってると聞いたで。


サチコ:2026年の年明けに増税(付加価値税の引き上げ)があった。それが価格に転嫁されて、食品やサービスがいっせいに値上がりしたんや。


マリコ:「増税と戦争のインフレが重なってる」っちゅうことか。


サチコ:そして資金の話をすると、ロシアには「国民福祉基金」っちゅう貯金箱がある。石油や天然ガスの収入が多い時代に積み立てたお金で、緊急時に使うための国の貯金や。


マリコ:ノルウェーも似たような「石油基金」を持ってるやんな。でもノルウェーはGDPの400パーセント相当を持ってるけど、ロシアは小さかったんやないか?


サチコ:戦争前でも10パーセントくらいやった。それが今は1.8パーセントまで減った。


マリコ:10パーセントが1.8パーセント!5分の1以下になってしまっとるやん。


サチコ:しかも「すぐ使える流動資産」の部分に限って言うと、もっと少ない。貯金箱の中のすぐ取り出せるお金が、ほとんど底をついた状態や。


マリコ:「貯金を切り崩しながら戦争を続けてる」っちゅうことか。


サチコ:そして石油とガスの収入の話が出てくる。2026年4月までの12カ月でエネルギー収入が前年比40パーセント減った。


マリコ:40パーセント減!それは大きいな。なぜ減ったんや。


サチコ:石油価格が下がったこと、制裁で買ってくれる国が限られてること、ウクライナのドローン攻撃で精製施設が傷んでること、っちゅう複合的な理由や。


マリコ:「精製施設がドローンに攻撃されてる」っちゅう話は聞いたけど、どれくらい影響があるんや。


サチコ:2025年9月時点で、ロシアの石油精製能力の40パーセントが一時的に障害を受けた、っちゅう推計がある。


マリコ:40パーセントも!精製能力の4割が影響を受けたっちゅうことか。それはでかいな。


サチコ:ロシアは一部の地域でガソリン不足が起きて、アジアの国から燃料を輸入するっちゅう、産油国なのに燃料を輸入するっちゅう逆説的な状況に陥ったところもあるで。


マリコ:「石油をたくさん持ってる国が、ガソリンを輸入する」っちゅうか。「米農家が米を買いに行く」みたいな話やな。


サチコ:「原油は掘れるけど精製できない」っちゅう状況に追い込まれとんねん。


マリコ:ところでドローン攻撃の話に関連して聞きたいんやけど、最近イランとアメリカが停戦合意したやんな。あれはロシアの経済にどう影響するんや。


サチコ:面白い話があって、イランとアメリカの停戦合意はロシアの経済にとって実はマイナスの可能性があんねん。


マリコ:マイナス!?なぜや。


サチコ:イランとアメリカが戦争してる間、中東の石油供給が不安定やったから、石油の価格が上がってた。ロシアはその恩恵を受けて、2026年4月だけで追加的に45億ドルの収入が入ったっちゅう試算がある。


マリコ:「イランとアメリカの戦争がロシアの収入を増やしてた」っちゅうことか!それはロシアにとって都合の良い戦争やったんやな。


サチコ:ロシアとしては「関係ない戦争のおかげで油が高くなって儲かった」っちゅう状況やった。それが停戦して油が下がると、その恩恵がなくなる。


マリコ:「他所の戦争が自分の国の家計を助けてた」っちゅうのは、複雑な気持ちになる話やな。


サチコ:さらにここで中国依存の話をせなあかん。ロシアの輸入は今や40から50パーセントが中国からや。戦争前は23パーセントやったんやで。


マリコ:戦争前から2倍以上になってるんか。


サチコ:しかも半導体や工作機械などの高度な部品は、90パーセント以上を中国経由で調達してる状況になってる。


マリコ:「中国がノーと言ったら終わり」っちゅう状態やんな。


サチコ:しかも問題は売る側と買う側の力関係や。ロシアが石油を中国に売る時、いくらで売ってるか知ってるか。


マリコ:どれくらいや。


サチコ:基準となる価格より14ドルから20ドル安く売らされてる。戦争前は1ドルから2ドルの割引で済んどった。


マリコ:「同じ量を売っても、以前より2割近く安くしか売れへん」っちゅうことか。これは中国にとってはお買い得やんな。ロシア、めっちゃ足許見られてるやん!


サチコ:「困ってる相手から割安で買う」っちゅう典型的な力関係や。中国側は「制裁があるから高く払えない、制裁リスクがある分だけ安くしてくれ」と言えるし、ロシア側は「他に売る相手がいない」から値下げせざるを得ない状況や。


マリコ:「中国の属国みたいになってきてる」っちゅうことか。


サチコ:ある研究者は「ロシアは経済的な主権を失いつつある」と表現しとる。「中国がどれだけ買うか、いくらで買うかによって、ロシアの財政が左右される」っちゅう状態や。


マリコ:「プーチンは強そうに見えるけど、実は中国の上客として扱われてる」っちゅうことやな。


サチコ:「上客」ではなくて「割引対象客」やな。


マリコ:それは良くないな。


サチコ:で、インフラの問題も出てきてる。国の予算が全部軍事に行くから、地方のパイプラインや電力網の修繕が後回しになってる。


マリコ:具体的にどういうことが起きてるんや。


サチコ:冬に暖房用の配管が凍って壊れる事故が各地で増えとる。暖房が止まる。お湯が出なくなる。電力が止まる。そういう事故が2024年から25年にかけて増えた。


マリコ:「戦争は継続してるけど、市民の暖房が止まってる」っちゅうことか。


サチコ:「大都市は政権批判を防ぐために比較的ちゃんと整備されてるけど、地方はボロボロになってきてる」っちゅうのが実態らしい。


マリコ:「モスクワと地方で全然違う生活が広がってる」っちゅうことやな。


サチコ:これも「二重構造」や。軍需産業と民間産業の二重構造と同じで、モスクワと地方の二重構造がある。


マリコ:では最終的に「ロシア経済はいつ崩壊するのか」っちゅう問いへの答えはどうなるんや。


サチコ:「崩壊」っちゅう言葉の定義次第やけど、「明日明後日に経済がパンクして戦争が止まる」っちゅう事態は起きにくい、っちゅう見方が多い。


マリコ:なんでやねん。


サチコ:石油とガスの収入がある。国の借金が低い。中国やインドとの貿易がある。これが「即死」を防いどる。


マリコ:でも「消耗はしてる」っちゅうことやんな。


サチコ:「消耗型の安定」っちゅう言葉を使う専門家もおるで。「崩壊してへんけど、じりじりと削られてる」っちゅう状態や。


マリコ:「大動脈は切れてへんけど、毛細血管から少しずつ出血してる」みたいな状態か。


サチコ:うまい例えやな。そしてその「消耗」の一番の問題は、「今の消耗は取り戻せない」っちゅうことや。


マリコ:どういうことや。


サチコ:死んでもうた若い人は帰ってけえへんやろ。今逃げていった優秀な技術者も簡単には戻ってこおへんやろ。今作ってる戦車や砲弾は将来の産業を何も育てへんやろ。老朽化して壊れたインフラは修繕費が積み重なるやろ。


マリコ:「現在のコストだけじゃなくて、将来の成長も先食いしてる」っちゅうことか。ぼろぼろやんけ。


サチコ:ある経済研究機関は「戦争が終わっても、ロシアが戦前の成長軌道に戻ることはおそらくできない」と言った。


マリコ:「戦争が終わったとしても、以前には戻れない」か。それはロシア国民にとっては非常に深刻な話やな。


サチコ:「今この瞬間の戦争を続けるために、将来を担保に入れてる」っちゅう見方もできるで。


マリコ:「明日のご飯を食べるために今日の種もみを食べてる」っちゅうことか。農業でいう最悪の選択やんな。


サチコ:「消耗型の安定」っちゅう言葉は、まさにそういう状態を表してるんやと思う。


マリコ:「崩壊してへん」っちゅう点は事実やけど、「大丈夫」っちゅう意味ではない、っちゅうことやな。


サチコ:そうや。数字だけ見ると「まだ動いてる」けど、中身を見ると「削られてる一方」っちゅうことや。


マリコ:「現在値はプラスだけど、微分したらマイナス」っちゅうことか。数学的な表現やけど。


サチコ:インテリか!まあ確かに、微分値がマイナスっちゅうのは「今は正の数だけど、トレンドは下向き」っちゅうことや。


マリコ:しかも今日の話で一番面白かったのは、「史上最低の失業率」と「史上最悪の労働力不足」が同時に起きてるっちゅう話やんな。


サチコ:同じ現象を「失業率」っちゅう指標で見ると良い数字に見えるけど、「労働力の絶対量」で見ると最悪の状態、っちゅう。


マリコ:「見る指標によって真実が全然違って見える」っちゅうことやな。これはロシアの統計だけの話じゃなくて、どんな数字も「文脈と中身を見ないと分からない」っちゅう教訓やな。


サチコ:「数字は嘘をつかないが、数字は全てを語らない」っちゅうことや。


マリコ:「失業率2.2パーセントで景気が良い国だ」と思ってた私が、今日だけでずいぶん賢くなった気がするな。


サチコ:「成長率プラス、失業率最低、賃金上昇」っちゅう数字だけ見たら良い経済に見えるけど、「それが全部戦争っちゅう特殊要因から来ており、持続可能性がなく、将来を食い潰してる」っちゅう文脈がないと全然違う理解になる。


マリコ:「文脈なしの数字は危険」っちゅうことやな。


サチコ:今後注目すべき指標を言うと、一番重要なのは「石油とガスの収入がどれくらい続くか」や。中東の情勢次第で大きく変わんで。


マリコ:イランの停戦合意でホルムズが開けば油が安くなるから、ロシアの収入も変わるっちゅうことか。


サチコ:そうや。「中東の戦争の行方がロシアの財政に影響する」っちゅう複雑な連鎖がある。


マリコ:世界は全部つながってるな。


サチコ:「消耗型の安定」がいつまで続くかは、中東の情勢、中国の姿勢、制裁の強度、油価の変動、複数の変数が絡んでて「この日に崩れる」とは予測できへん。


マリコ:「いつ崩れるか分からないけど、確実に削られてる」っちゅうのが今日のまとめっちゅうことやな。


サチコ:お、なんかまとめようとしてるな。


マリコ:してへんしてへん!ただ「棺桶を作り続けても経済は豊かにならない」っちゅうことは確認できたで。


サチコ:それが今日の本質的な教訓やな。


マリコ:ほな、このへんで!


マリコ・サチコ:どうもありがとうございましたー!


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