第188話「『彼らは動物だ』って言うたで!~言葉と戦争と、ファクトチェックという名の冒険~」
マリコ:どうもー!サチコ・マリコでーす!
サチコ:よろしくお願いしますー。
マリコ:サチコ、私な、昨日ニュース見てたら、もう頭がくらくらしてきてん。
サチコ:また始まったな。何を見てたんや。
マリコ:トランプさん関連の話や。4月6日に記者に「イランの発電所に攻撃するのは戦争犯罪やないですか」って聞かれた時に、「彼らは先月4万5000人を殺した。彼らは動物だ」って言い返したやんか。
サチコ:そうや。4月7日現在でホットな話や。今日はそれを丁寧にほぐしていこうと思う。
マリコ:丁寧にほぐす!?まるで冷凍で固まったご飯をレンジで解凍するみたいやな。急いでチンしたら端っこだけ熱くて真ん中が冷たいやつになる感じのやつや。
サチコ:今日はちゃんと均一に温っためるで。まず基本から確認しよか。この「彼らは動物だ」という発言、実際に言ったんか言ってないんかというところから始めようか。
マリコ:え、言ってへんの?私はてっきり「言うた」と思ってたけど。
サチコ:確かに言うた。これは事実や。複数の独立した主要メディアが動画と音声で確認しとる。ホワイトハウスのイースター・エッグ・ロール、復活祭のイベントで記者から直接問われた際に、英語で「Because they killed 45,000 people in the last month…They are animals」と答えとる。
マリコ:そうか、やあり言うたんか。ほなその「動物」というのは「イラン人は動物だ」ということ?
サチコ:ここが今日一番のポイントやねんけど、正確には「イラン人は動物だ」とは言ってへん。英語で「They are animals」、「彼らは動物だ」や。
マリコ:「イラン人は」と「彼らは」の違いか。なんか細かいな。「誰が彼ら(they)なんか」という問いやな。
サチコ:そう、そこが核心や。前後の文脈を見ると「They kill protesters」、「彼らは抗議者を殺す」という発言もセットで出てくる。イラン政府・革命防衛隊・弾圧を実行している体制側を指していると読むのが自然や。
マリコ:「イラン人全体」を指してるんやなくて「イランの体制側・弾圧してる側」を指してるということか。でもなんか「Iranians are animals」という見出しで報道してるところもあったやんか。
サチコ:それが問題なんや。「They are animals」を「Iranians are animals」、「イラン人は動物だ」と簡略化した見出しで報じるメディアがある。英語を一言で伝えるために「they」を「Iranians」に置き換えてしまうんやな。
マリコ:「翻訳のトリック」か。「ちょっと待って、原文と全然違うやんか」というやつやな。
サチコ:ただし、これにはもう一つの問題がある。「they」が誰を指すかは文脈次第で曖昧な部分もある。「政権を指した」と解釈するのが一番自然やけど、受け取る側が「イラン人全般」と読む余地も残してしまう表現でもある。
マリコ:「誰を指すか、ギリギリ曖昧にしながら最大限の敵意を動員する」という言葉の使い方やな。前の漫才でナルシシズムの話をした時に「4Dチェス」という話が出たけど、これも言葉の次元が高すぎて、みんな読み方が違ってくる。
サチコ:おっ、鋭いな。12次元チェスは外交だけやなくて言葉の使い方にも及んでいるということや。で、次に数字の話をしよか。「先月4万5000人を殺した」という主張についてや。
マリコ:そこも気になってた!「先月4万5000人」って、そんなに?
サチコ:これは確認できた証拠がない過大な数字や。独立した人権団体の確認数とは全然違う。代表的な人権団体のHRANAが確認した死亡者数は約7000人。他の機関の推計でも最大3万6000人台が上限で、4万5000人はいかなる独立機関の数字とも一致しない。
マリコ:トランプさんの「4万5000人」は誰の数字なんや?
サチコ:亡命イラン人の活動家や反体制派から出た高い推計値を元にしとると見られとる。未検証の数字やな。
マリコ:そもそも「先月」というのも怪しいんやろ?
サチコ:ここが見落とされていた重大な点やねんけど、4月6日時点で「先月」というのは3月を指す。でも実際の抗議デモの大規模な弾圧が起きたのは主に1月やった。1月8日・9日頃に集中した弾圧で、イラン政府が人々を大量に殺したと報告されている時期や。
マリコ:「先月」と言ったら3月なのに、起きた出来事は1月の話か。これは時制のズレやんか。
サチコ:「先月4万5000人」は「事実」というより「強い感情と最大値の数字を組み合わせた政治的な言葉」として機能しとるわけや。
マリコ:嘘やとは言い切れへんけど、正確でもない。「誇張された数字を使って相手を道徳的に極悪に描く」という手法か。前の漫才でプロパガンダの話をしたけど、それに似てるな。
サチコ:まさにそれや。誇張された死者数を根拠に「相手を動物と呼ぶ」という構造は、歴史的に見るとかなり危険なパターンに似てくる。
マリコ:「相手を動物と呼ぶ」というのが、なぜそんなに問題なんや?「あいつは動物みたいや」って日常会話でも言わへんか?
サチコ:日常会話と国家指導者の公的発言では重みが全然違う。特に「戦争中に」「敵を攻撃することの正当性を問われた瞬間に」「相手を動物と呼ぶ」というのが最大の問題や。
マリコ:「戦争犯罪やないか」と問われた瞬間に「彼らは動物だから」という答えが出てきたっちゅうことか。
サチコ:そうや。記者の質問の流れを整理すると、「発電所や橋への攻撃は戦争犯罪ではないのか」という問いに対して、「彼らは4万5000人殺した、彼らは動物だ」という答えが来る。これは「相手が動物なら攻撃しても構わない」という論理構造になってまうんや。
マリコ:怖い論理やな。「人間に対してやったら戦争犯罪やけど、動物に対してやったら違う」というロジックか。
サチコ:国際人道法の専門家が最も警戒するパターンや。「非人間化(dehumanization)」という言葉があんねん。敵を人間以下とみなす言葉は、暴力のハードルを下げる効果があることが歴史的に確認されとる。
マリコ:ぐらい適菜歴史的な例ってあるんか?
サチコ:あるで。ルワンダの虐殺で使われた「ゴキブリ」という言葉がある。フツ系過激派がラジオでツチを「ゴキブリ(インイェンジ)」と呼び続け、「ゴキブリを駆除せよ」というメタファーがそのまま「ツチを殺せ」という扇動として機能した。約100日で80万人規模の虐殺につながったんや。
マリコ:ラジオで「ゴキブリ」と呼び続けることが、虐殺の心理的な準備をしたんか……。
サチコ:ナチスのプロパガンダもユダヤ人を「ネズミ」「シラミ」という動物・害獣として描き続けた。それが長期にわたって繰り返された結果、殺害への罪悪感を感じにくくする心理的な土台が作られたっちゅうことや。
マリコ:それはもう何十年も前の話やろ……って言いたいところやけど、逆に言うたら「動物」と呼ぶことの危険性が歴史で繰り返し証明されてる、ということか。
サチコ:ジェノサイド研究者のグレゴリー・スタントンが「ジェノサイドの10段階」という理論を提唱しとるんやけど、その中に「非人間化」がある。分類、象徴化、差別…という段階を経て、非人間化が来ると、次に向かう方向が怖くなってくる。
マリコ:「今回のトランプさんの発言が100%そのパターンだ」とは言い切れへんとしても、「そのパターンに似た要素がある」というのは確かやな。
サチコ:ここが大事なポイントや。まだ「レトリックの段階」と「実際の行為」を分けて考えないといかん。大規模なインフラ攻撃はこの4月7日時点ではまだ「予告・脅し」の段階で、実際には実行されていない部分がある。
マリコ:「脅しとして機能している段階」か。それでも危険やな。
サチコ:一つの歴史的な法則があるんや。「非人間化のレトリック」と「実際の暴力」の間には段階があるが、レトリックが先行することで暴力の合法性に対する感覚が麻痺していく、という研究がある。
マリコ:「まだ実行してへんから大丈夫」とは言えない、ということか。言葉の時点で「下地」が作られる。
サチコ:で、国際法の話をしよか。「発電所を攻撃するのは戦争犯罪か」という記者の質問そのものはどうなんやろ。
マリコ:トランプさんは「そんなことは関係ない、彼らは動物だ」と一蹴したけど、実際のところはどうなんや?
サチコ:ジュネーブ条約の追加議定書では、発電所やダムなどの民間インフラへの攻撃は、それが一般市民に深刻な被害を与える場合に原則として禁止されとる。特に発電所は病院・上下水道・暖房を支えるから、「攻撃したら何万人という市民が苦しむ」という比例性の問題が出てくる。
マリコ:「軍の施設を攻撃するのは戦争行為として理解できるけど、病院の電気を止めるような攻撃は別問題」ということか。
サチコ:ただし例外もある。その発電所が軍事目的に主として使われている場合は、「軍事目標」として攻撃対象になりうる。だから「発電所の攻撃=即戦争犯罪」と断定するのは国際法的には複雑や。ただ、アメリカ国内の法律専門家も「これは戦争犯罪になりうる」と多数が指摘しとる。
マリコ:「複雑だが、黒に近い疑問符がついている」という状況か。ウクライナでロシアが発電所を攻撃した時も国際社会は強く非難したんやろ。
サチコ:G7の声明でも「エネルギー施設攻撃は国際法違反」と明記されとる。「ロシアに言ったことがアメリカには適用されないのか」という問いは当然出てくる。
マリコ:自分が言ったルールを自分が破ることになる可能性があるってことか。「国際ルールは我々が決める、でも我々は縛られない」みたいな話になってまう。
サチコ:で、アメリカ国内の反応はどうなったか。これが「二つのアメリカ」というやつやな。
マリコ:第183話でMAGAが割れるって話したやんか。あれと同じ構図か?
サチコ:ほぼ同じや。民主党側はシューマー上院少数党院内総務が「狂人のように喚いている(ranting like an unhinged madman)」と激しく批判。サンダース議員は「危険で精神的に不安定」として大統領職務不能条項(憲法修正25条)に言及する声も出た。
マリコ:憲法修正25条!「大統領が職務を遂行できない状態にある」という条項やろ。それを出してくるのはかなり強い批判やな。
サチコ:一方でマジョリー・テイラー・グリーン、第183話に出てきた「MAGAの超過激な推進者」だった人も、今回のインフラ攻撃の脅しを「狂気(madness)」と批判している。
マリコ:MTGまで批判してるのか!?あの人が「これはアカン」と言うのは、かなりの事態やんか。
サチコ:MAGA内部の分裂がここでも出てるわけや。今回の「彼らは動物だ」発言については、共和党側は公式の擁護声明は少なくて、「体制を指しただけ」という解釈で黙認するか、全体の強硬政策を支持する形になっとる。
マリコ:「擁護しにくいから黙ってる」という状況もあるんやろな。
サチコ:世論調査でも、NBCの調査でトランプのイラン対応への不支持が54%、「軍事行動を取るべきやなかった」が52%という結果が出とる。
マリコ:54%不支持か。開戦当初から不支持が多数派って、第183話で言ってた「イラク戦争とは全然違うパターン」が続いてるな。イラク戦争の時は最初は80%以上が支持してたんやろ。
サチコ:よう覚えてるな。だから今回は「最初から反対多数で始まって、さらに悪化していくリスクがある」という構図が続いとる。しかも最近、米軍の戦闘機がイランに撃墜されたという事件も起きた。
マリコ:撃墜!トランプさんは「イランには防空能力がない、反撃してこない」と言い切ってたんやろ。
サチコ:「無敵のイメージ」が崩れてきたと指摘されとる。トランプさんの政治的信頼性に打撃が出てきてる、という報道が増えてきた。
マリコ:4月7日現在、まさに今がそのタイミングやな。「ホルムズ海峡を開けなければ発電所を攻撃する」という期限が今日の夜に設定されてるんやろ。
サチコ:米東部時間4月7日午後8時、つまり日本時間では明日の朝に期限が来る設定や。ただし、停戦交渉も進んでいて、45日間の停戦提案が出ているという情報もある。
マリコ:「期限を設けて、ちゃんとその期限通りに行動するか、また延期するか」が今まさに世界が注目してるところか。
サチコ:これをどう見るかというと、第185話で話した「エピソード的人間」という分析と繋がる。トランプさんは「今この瞬間のエピソード」を生きていて、昨日の発言と今日の発言が矛盾しても、その瞬間の「勝者に見えること」が優先される。だから期限をまた延期しても、それが「交渉の天才の証拠」に見えてくる。
マリコ:「4Dチェスどころか12次元チェス」の話やな。でもサチコ、ここで一番私が気になるのは、「彼らは動物だ」という発言をどう報道するかという問題や。「イラン人は動物だ」と伝えたら全然違う話になるやんか。
サチコ:そこが今日の「ファクトチェックという冒険」の核心やな。ニュースというのはどうしても短くしなければならない。「They are animals」という英語を日本語で7文字で伝えようとしたら「イラン人は動物」になりやすい。でも元の英語では誰を指してるか曖昧だったものが、翻訳で「イラン人全体」に確定してしまう。
マリコ:「情報が国境を越えた瞬間に変質する」ということか。これはなんか、昔の「伝言ゲーム」みたいやな。最初は「山田さんは調子がいいよ」だったのに、10人経ったら「田中さんは死んだよ」になってる。
サチコ:現代のニュースの伝言ゲームやな。英語から日本語にするだけでも、すでに翻訳バイアスが入る。さらにSNSで短く引用されると、もっと過激化する。
マリコ:じゃあ私たち視聴者はどうすりゃええんや。全部英語で確認しに行くのは無理やし。
サチコ:「一次情報はどこから来てるか」「誰の解釈が入っているか」を常に意識することやな。「誰かが言ってた」ではなく「誰が元の発言をした」「どういう文脈で言ったか」「その文脈の解釈は誰がやってるか」という三層で考える習慣や。
マリコ:三層か。「事実」「文脈」「解釈」の三層を分けて考えるということやな。
サチコ:そうそれや。今回の場合、「事実」は「They are animals」と言った。「文脈」は戦争犯罪を問われた場面でイラン体制を指して言った。「解釈」は人によって「正当な強硬表現」か「危険な非人間化レトリック」か全然違う。この三層を混ぜないことが大事や。
マリコ:なるほど。「事実と解釈を混ぜてしまうと、ファクトチェックができなくなる」ということか。
サチコ:しかも国内の反応だけやなくて、国際社会とイラン国内でも、この発言への反応が全然違う。
マリコ:イラン国内ではどう受け取られてるん?
サチコ:イラン政府・体制側は「イラン国民への侮辱」として強く非難して、反米ナショナリズムを動員する材料に使ってる。「外国から侮辱されたから一致団結せよ」という方向や。
マリコ:「外敵がいると内部が団結する」というのも歴史の法則やな。
サチコ:しかし一方で、反体制派・改革派の人たちはもっと複雑な気持ちを持っている。「政権は確かに残虐だ、でもアメリカの強硬な姿勢が体制のプロパガンダに利用される」「攻撃は国民を苦しめるだけだ」という見方や。
マリコ:「政権を批判したい人たちが、アメリカの強硬発言のせいで逆に追い詰められる」という逆説か。
サチコ:亡命イラン人の声として「政権は動物かもしれないが、国民は違う」「アメリカの攻撃は国民を巻き込む」という訴えがある。
マリコ:「They are animals」という言葉が体制を指してたとしても、「体制の動物性」を訴えることで攻撃が正当化され、その攻撃で傷つくのは体制を憎んでる一般の人々かもしれへん、ちゅうことや。
サチコ:これが「戦争の言葉の難しさ」や。言葉の指示対象と、実際に行動した時に影響を受ける人が一致しないことが多い。
マリコ:欧州はこの話をどう見てるん?
サチコ:EU・英仏独は「非人間化レトリックは危険」「緊張を高める発言」と批判しながら、「地域安定・外交的解決」を強調する姿勢や。アメリカの強硬路線との溝が深まってる。
マリコ:NATOの話でも「欧州はついていってない」というのがずっと続いてるな。
サチコ:日本はというと、外務省は「地域の緊張を懸念」と表明しながらも、エネルギー安全保障の問題として見ている。日本の原油の9割が中東頼みやから、ホルムズ海峡が封鎖されたままというのは直接的に電気代とガソリン代に響く話や。
マリコ:第183話でその話もしたやんか。「日本は他人事として見てたらアカン」という話。あの時から実際にガソリン代が上がってるの?
サチコ:「今年の3月の世論調査ではアメリカの回答者の85%がガソリン価格の上昇を実感している」という数字が出てる。日本でも原油高騰の影響は出始めている。
マリコ:「ホルムズ海峡の戦争が財布に来る」という話が現実になってきてるんやな。
サチコ:ここで一番根本的な問いに戻るで。「なぜこんな強い言葉が使われるのか」、つまり「強硬レトリックがなぜ政治的に機能するのか」やな。
マリコ:第185話で「強さのパフォーマンス」という話が出てきたけど、それと繋がる話か?
サチコ:そうや。「強い言葉を言える=強いリーダー」という象徴的な結びつきがアメリカの保守層には特に強い。だから「彼らは動物だ」という言葉は、政策の具体的な中身やなくて、「本気でやる覚悟があるリーダー」というシグナルとして機能する。
マリコ:「言葉そのものが政治的な商品」になってるんやな。「何を言うか」より「どれだけ強く言えるか」が評価される文化か。
サチコ:しかもこういう強い言葉はSNSでものすごく拡散されやすい。怒りを喚起する投稿は拡散される。対立を煽る言葉はクリックを稼げる。結果として、「強硬レトリックは政治的に得な戦略」になってしまっとる。
マリコ:悪循環やな。強い言葉が拡散される→政治的に得になる→もっと強い言葉を使う→さらに拡散される、という。
サチコ:そして強硬レトリックには「正当化装置」としての機能もある。「彼らは動物だ」という言葉は、「動物相手なら何をやっても正当化できる」という感情的な土台を作る。これが「民間インフラ攻撃は戦争犯罪やないか」という問いへの答えとして使われてしまうとき、一線を越えてしまう可能性があるんや。
マリコ:「戦争犯罪か」と聞かれて「彼らは動物だから」と答える構図が、なぜ危険かがやっと分かってきたで。「問いへの答え」として「非人間化」が使われてるっちゅうことやな。
サチコ:そこが専門家が最も警戒する点や。「何をやっても正当化できる言語的フレーム」が先に作られると、実際の行為の合法性に対する感覚が麻痺してくる。
マリコ:でもサチコ、うち一つ疑問があんねん。「イラン体制が本当に残虐なことをしているのは事実やないか」という点はどう考えたらええんや。
サチコ:それは事実として批判されるべきことや。イランの反政府デモへの弾圧は、人権団体が数千から数万人規模の死者を記録している。処刑、拷問、インターネット遮断、報道統制……これは明確に批判されるべき人権侵害や。
マリコ:「体制の残虐性は批判すべき」と「相手を動物と呼んで攻撃を正当化する」は別の話、っちゅうこと?
サチコ:「敵が悪い」ということと「攻撃の方法が合法か」は、国際人道法では全く別の問題として扱われる。「自衛権がある」ということと「戦闘中にどう戦うか」は別の法体系で判断される。
マリコ:「悪い奴を倒すためなら何でもしていい」というわけではない、っちゅうことか。これは難しい話やな。
サチコ:難しいけど、この区別が崩れると「正義のためなら何をしてもいい」という論理で戦争犯罪が正当化される歴史が繰り返されてきたのも事実や。
マリコ:ちょっとここでまとめてもええか。
サチコ:ええで。
マリコ:うち今日の話聞いてて思てんけど、の核心は三つあんねん。一つ目は「They are animals」という発言は事実やけど、「イラン人全体は動物」という報道は正確じゃない。文脈と翻訳の問題がある。
サチコ:うんうん。
マリコ:二つ目は「4万5000人殺した」という数字は確認できない過大な主張で、しかも「先月」という時制もズレてる。事実よりも「感情の動員」のために使われてる数字や。
サチコ:そうや。三つ目は?
マリコ:三つ目は「戦争犯罪を問われた瞬間に相手を動物と呼んで正当化する」という構造が歴史的に危険なパターンに似ていること。「今すぐジェノサイドが起きているわけではないけど、言葉の段階でその方向に向かう要素がある」という警戒感が専門家の間に広がっている。
サチコ:せやせや。
マリコ:でもなサチコ、こういう複雑な話を聞いた後に、私たちはどうしたらええんや。「ファクトチェック疲れ」というのが現代病やんか。毎日毎日確認しなあかんことが多すぎて、もう「何も信じへん」か「全部信じてまう」か、どっちかに振れてしまう。
サチコ:「何も信じへん」と「全部信じてまう」、この二つの極端さが一番の問題やな。どっちも思考停止や。
マリコ:そこで必要なんが「笑いながら考える」ということかな。
サチコ:第183話でも言ったんやけど、「ハルマゲドンの烽火って言われながら笑えてる間はまだ人間や」と。今回も「彼らは動物だと言われた世界で笑えてる間は、まだ立ち止まって考えてる証拠や」ということやな。
マリコ:「笑いは人間が合理的に考えるための抵抗」か。前の漫才の話が繋がってきたな。
サチコ:「笑えなくなった時が、もっとも考えることをやめた時」と言えるかもしれへん。
マリコ:ほな最後に言うたるわ。「発電所を4時間で全部破壊できる」「石器時代に戻す」という言葉は、強さの表現として機能してるんやと思うけど、「石器時代」にした後のことを誰も考えてへんよな。
サチコ:そう、その問いが一番重要や。「石器時代に戻したイランで核開発は止まるかもしれないが、石器時代の国で誰が苦しむのか」という問いへの答えは、「動物相手だから気にしない」では到底済めへん。
マリコ:「石器時代に戻された後の人々は人間やんか」という、当たり前のことが忘れられてしまう危険があるな。
サチコ:「彼らは動物だ」というレトリックが最も恐ろしいのは、その当たり前を忘れさせてしまうことや。
マリコ:怖い話やな……。私には解決策はわからへんけど、少なくとも「言葉を丁寧に聞いて、数字を確認して、誰に何の影響が出るかを考える」という習慣は持ち続けたい。
サチコ:それが市民としてできる一番の抵抗かもしれへん。大統領でも政治家でもなくても、情報の受け手として「ちゃんと読む」「ちゃんと問い直す」ことは誰でもできる。
マリコ:「ファクトチェックという名の冒険」は、探偵小説みたいに面白がりながらやるのがコツやな。「事実はどこ?文脈は?解釈は誰が入れてる?」って謎解きみたいに。
サチコ:謎解きのつもりでやってると「疲れ」が「好奇心」に変わる。情報を受け取ることが義務じゃなくて探検になる。
マリコ:よっしゃ!ほな私、今日から「探偵マリコ」として情報を読み解くわ!事件名は「"They are animals"発言の謎」!
サチコ:探偵事務所を開くほど大げさにせんでええ!でも日常の中で「これ本当か?」「誰が言ってる?」「文脈は?」と問い続ける習慣は、今の時代に一番必要なスキルの一つやな。
マリコ:「マリコ探偵事務所」の依頼料は無料にしときます!どんなニュースでもファクトチェックします!ただし報酬は情報でお願いします!
サチコ:探偵業は無免許でできへんのやけどな!でもまあ、情報の謎を解くのに免許はいらんから、ある意味正しいかもしれへん。
マリコ:「動物と呼ばれた人々が実は動物じゃなくて、動物と呼んだ人の言葉が本当かどうかを確かめること」が今日の結論やな。
サチコ:なんかものすごく哲学的なまとめになったけど、それが今日の核心や。
マリコ:では探偵マリコは次の事件に向かいます!次のターゲットは「石器時代に戻すって、石器時代って何時代か知ってんのか」という謎の解明や!
サチコ:それは歴史の授業で解決する謎やわ!しかもトランプさんは「石器時代」を比喩として使ってるんやから、厳密に旧石器か縄文かを問うても意味がない!
マリコ:でも縄文時代は3万年続いた平和な時代やったという説もあるから、「石器時代に戻す」のが全く悪いとは言い切れないのでは!?
サチコ:縄文平和論で核問題を解決しようとすな!飛躍しすぎや!縄文とホルムズ海峡を繋げるな!
マリコ:縄文人はホルムズ海峡に行ったことがないから!その点では完全に無関係や!
サチコ:当たり前やわ!もうええわ!
マリコ・サチコ:どうもありがとうございましたー!




