表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽縁ノ季楼守  作者: 儚方ノ堂
第二章 廻る帰還
34/36

会合の終わり


 そしてトウノサイが施術し、チグハグながらも移植は完了した。

 結果として、生命的には死なずに済んだけど、キミは死ぬよりも辛い苦痛を味わう羽目になったのは……言うまでもないね。


 ユメビシを家に送り届けた後、これ以上の被害を防ぐために、ワタシ達は対策を講じたよ。

 しかし一番の難問が、当主不在の穴をどう埋めるかだった。

 

 さっきユメビシは、何故もっと早くに代理を立てなかったのか、そう聞いたね? 

 本来ならば、当主が替わる際、『解任ノ儀』にて引き継ぎを行う必要があるんだ。

 つまり現当主と次期当主の両名が揃って、初めて成り立つ儀式でね。

 現当主が消息不明では、完全に詰んでいた訳さ。 

 

 無論ほかにも、いくつか手を打ったんだけど……良い成果を得られなくてね。

 結局、地道に開いてしまった抜け穴を塞いだり、リンシュウ尽力の元、庵の防衛戦を強化するので精一杯だった。

 

 こうして、あっという間に時は流れ……十年くらい経った頃。

 

 ユメビシは成長した姿で、ボクの前に現れた。

 実を言えば、キクの手が随分馴染んでいるのを見て、嫉妬してしまったんだ。

 

 ユメビシはあの時点で、季楼庵と微弱ながらも繋がりを持っていた。

 そうしたらね、無性に賭けをしたくなったのさ。

 戻ってこれないなら『その程度だった』、そう判断しようと。


 あの賭けはね、当主足り得る器があるか、という試練でもあったんだ。


 キミがどう過ごしたのかは、想像しかねるけど。

 ただクリア条件は単純明快さ。

 

 ――多くの妨害や誘惑に屈せず、『自分が誰なのか、思い出す』こと。

 そうすれば外に出られる。

 ユメビシはすんでのところで、戻って来られたようだけどね。

 ……誰かが、手助けでもしたかのな?

 

 それをクリアしたからには、僕はもう認めているんだ。

 ユメビシ。キミは今、最も当主に近い存在となった。

 

 蟠華(ばんか)の摘出をしただろ? 

 ならば当然、下位互換である寄生華(きせいばな)だって出来るはずさ。

 その力は季楼庵当主……ひいては、キクの才能によるところが大きいけど、それを扱えてるいるのは、一種の素質なのさ。

 

 

 ヨミトによる長い語りは、誰も口を挟む事なく、幕を下ろした。

 

 彼らにとては周知の事実であっても、俺からすれば驚きと困惑の連続だ。

 それにしても、何故俺の手が穢れを受けたのか――これは結局分からずじまいだった。

 もう当時のことは詳しく覚えてないから、ヨミト達が知らないんじゃ、お手上げだ。

 

「分かってもらえたかな? 当主は誰にでも務まるものじゃない。現当主スメラギが戻らない今、ユメビシ以上の適任者はいないんだ。やってくれるね?」

「それは……」 

 

 正直まだ、答えが出せなかった。

 当主が特別な存在……というのは今の話で分かったが、あくまで自分は仮初。

 期待された務めを果たせるとは、到底思えない。

  

「なら言い方を変えよう。ユメビシにも、目的があるだろう? 例えば『忘れてしまったことを思い出したい』とかね。いいね、ゆっくり思い出せばいいさ」

「急になんだ」

「その手伝いは出来ないけど、()()()()なら安全で不自由ない居場所を提供できる……当主代理として、振舞ってくれるならね」    


 悪戯っぽい表情で、ヨミトは笑う。

 当主代理をやりたくて、今ここにいる訳ではないが……記憶を取り戻す為には、ヨミトの提案は理に叶っている。

 そもそも70年近く経った外の世界に、自分の居場所はないだろうから。

 

「……分かったよ。具体的に、何をしたらいい?」 

「うんうん、いい返事だ。でも実際問題、ユメビシが何をどこまで出来るのかは、未知数なんだ。前例がないからね。一先ず、瞑之島での暮らしに慣れてほしい。まあ当主代理として必要な場面では遠慮なく、こき使わせて貰うけどね」   

「ここの暮らしに慣れる?」

「特にユメビシは久方振りの、娑婆の空気ってやつでしょ? 人里の感覚を取り戻した方がいいんじゃないかな」   

「なるほど……」 

 

 ――いや、閉じ込めた原因作ったの、お前だけどな!

 

 主人達はユメビシの代わりに、心の中で総ツッコミを入れた。

 

「とにかくよ。今後ユメビシに、当主の真似事をさせるってことだな」

「そゆこと。でもユメビシの一番大きな役割は、祭りの中心に立って貰うことにあるからね。あとは追々(おいおい)」 

「その度々聞く、祭りって?」

「あー、瞑之島はな、『主神祭』って催しをしなきゃいけない制約が存在するんだ。周期はバラバラなんだが、平均的には半世紀に一度くれぇか? 本当はとっくにやらなきゃいけないところを、誤魔化してここまで来ちまった。これ以上先延ばしにすると、きっと()()()()()()」 

 

 カナンのここで言う『季楼庵』は、妖のことを指しているのだろう。

 もし怒らせたら、どうなってしまうのか……。

 

「良い落とし所ではないですか? 我々にとっても、ユメビシ君にとっても」 

「私も異議ないわよ。面白そうだし」 

「ユメビシは乗り気じゃないだろうが、祭りが出来るのは有り難え! よろしくな!!」 


 (おおむ)ね、当主代理として賛成の色を示す中、シュンセイだけが険しい顔をしていた。

 

「シュンセイも、それでいいわね?」 

「……あ? あぁ。ヨミトの思い通りになってるのは、少々気になるが」

  

 リンシュウに促され、渋々といった形で了承するシュンセイ。

 これで主人全員から、ユメビシは当主代理として認められたことになる。

 中立者はこの思惑通りの結末を前に、満足げに頷き、するりと立ち上がった。


「ではでは、これにて。今回の会合はお開きとしよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ