表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽縁ノ季楼守  作者: 儚方ノ堂
第二章 廻る帰還
33/40

昔話を始めよう


 ――季楼庵当主。

 表向きの顔はあくまで、組織としての季楼庵を束ねる、最高権力者。

 別に間違っちゃいない。しかし、実際はもっと込み入った裏事情が存在する。

 

 それが瞑之島(みんのとう)に憑いてる妖『季楼庵』と契約を交わした報酬……いや、代償に、時の理から外された人間を指す。

 寿命という枷を外されるんだ。まあ分かり安く言えば、疑似的な不老不死。

 庵の意志を聞いて代弁し、要望を形にするのが務めであり、あらゆる権限を委任されている存在だ。


 それを務めていた一人、前代当主のキクゴロウという男は人格者で、非常に優秀な翁だった。

 茶室主人や島民から絶大な支持があったし、ボクも彼のことはとても気に入っていたよ。

 永いこと当主を務めあげたのが、その証拠さ。


 でも、キクの後任で着いた当主は、少し曲者でね。

 ……名をスメラギ。

 それが一応現在の季楼庵当主で、消息を絶っている男の名だ。

 

 彼はある日、忽然と姿を消してしまった。

 それからだよ。島のあちこちで異変が起き始めたのは。

 その最たる被害が、境界の揺らぎによるものでね。

 

 全国各地にある幽世(かくりよ)へ通づる境と、島の神域が意図せず繋がってしまい、招かれざるものが迷い込んできた。

 ――庵に敵意を持った、異形による襲撃さ。

 あの当時、門番はいなかったからね。

 そりゃもう、荒らされたものさ。

  

 季楼庵始まって以来の暗黒期を迎えた島は、神域の力が弱まり荒廃していった。

 そんな中、ついには人間の子供が迷い込んできた。

 ……ユメビシ、キミのことだ。 


『おや、迷い子がいるね』  

 

 最初に発見したのは、このボクだった。

 しかし子供とは、動きが予測出来なくてね。

 少し目を離した隙に、はぐれてしまったんだ。

 無論、ボクなりに必死で探したさ。

 

 ……でも一足遅かった。最悪の事態は、すでに起きていたんだ。

 

 ようやく見つけ出した時、ユメビシの手は何らかの穢れを受け、腐り落ちていた。

 正直あの時、何があったのか……残念ながらボクらには想像もつかない。

 ユメビシが覚えていないのなら、真相は迷宮入りだろう。

 まあ、もし何か思い出したら、教えて欲しい。

 

 あの現場には痛みに悶えるキミと、地面には何かが焦げた跡……そして埋葬されていたはずの、キクの両手が転がっていた。

 

 ――何故キクの手だと、分かったかって?

 指の刻印が、キク本人のものであると雄弁に語っていたし、後に棺桶を調べたら遺体が消えていたから間違いないよ。


 そのまま放っておけば、穢れは全身を汚染し、取り返しのつかない事態になるのは明白だった。

 ……さて。運良くそこには、手を失った少年と、手だけになってしまったキク。

  

 実を言うと、キミが()()()()かは、最初から分かっていた。

 季楼庵は老舗だからね、様々な情報網を持っている。

 ボクらはあくまで中立組織。無駄な戦争は好まない。

 故に今後を思えば、みすみす見殺しにも出来なかったという訳さ。

 

 とは言え……唯一助かる方法が、あまりに過酷な将来を告げていたからね。

 念の為、キミに尋ねたさ。


 『生きたい?』とね。

 

 キミは目に涙を溜めながら、『死にたくない』と応えたよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ