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幽縁ノ季楼守  作者: 儚方ノ堂
第一章 御伽の土地 
13/29

一難去ってまた一難(後編)


 ――どうして、こんな目に遭っているの。

 

 いつも通り、一人で母さんの墓参りに行った。

 だというのに、すぐ背後に誰かが立っていて。

 

 管理人さんかと思い振り返ってみれば……()()は、なに?

 

 …………目が合ったのだ。多くの目玉と。

 

 ソレは私に手を伸ばしていた。

 パニックになって、訳のわからないまま走った。

 音の鳴るもの物全てに怯えながら……走って、走って、走って。

 

 一体、何処まで逃げて来たのだろうか?

 いつの間にか、全く見知らない風景の只中にいる。

 

 あ……でも、まだ後ろから、音がする。

 怖い、振り向きたくない……もっと、もっと! 距離を稼がなくては。

 動け動け動け動け、もし立ち止まったら……どうなる?

 

 ――どうなってしまうんだ、私、死ぬ?

 

 分からない……。

 でも、あんな気色の悪い化け物に襲われて、最悪殺されるくらいなら。

 

 ――それなら、いっそのこと。

 

 

『ぐらっ』

 

 それまでと異なる、足元の感触。

 踏み込んだと同時に地面は崩れ、身体は宙へ投げ出される。

 その時、初めて知ったのだ。自分がこの断崖絶壁向かって走っていたことに。

 

 眼下へと広がる景色に、二重の意味で眩暈がした。

 嫌だな……こんな訳わからない場所の、高所から地面に叩きつけられて死ぬなんて。

 絶対痛いに決まってるじゃん。

 

 でも万が一、あの木々達が変に緩和剤の役割を果たし、打ち所が微妙になれば?

 ……即死ではないかもしれない。

 もがき苦し見ながら、誰にも看取られず、一人ぼっちで死ぬ……そんな大いにあり得る可能性。

 

「それは吐き気がする……!」

 

 コンマ世界での脳内会議が終わり、咄嗟に手を伸ばした。

 何かに掴まろうとしたが、この崖に掴まれるような場所はなく。

 いや冷静に考えれば、掴まったところで自分の体重を支えられるだけの腕力がない。

 

 ――ならば、どうしてまだ生きているのか?


 


 「……っ出来れば、そっちからも握り返してくれ」

 

 見上げると、男の子が私の手首を掴んでいた。

 彼が手放さないおかげで、今も命が続いているのだと気づく。

 

「二人とも無事!?」


 ここからでは見えないが、近くで女の子の声も聞こえる。

 崖から身を乗り出す男の子の額には、僅かに汗が滲んでいた。

 

「今は……なんとか、」 

「おっけー、大丈夫、放さないよ。でもね!」 

「え、でもなんだっ」 

「ユメビシ! 無茶言う様だけど、慎重に素早く引き上げて……崩れやすいのココ!」 

「善処はするが……」

「あ、あのっ!」

 

 私はいたたまれなくなり、思わず発言する。

 今もジリジリと崩落は進んでいる。顔に絶え間なく降ってくる、土や小石が良い証拠だ。

 このままでは上で奮闘している二人までも、危険に晒してしまう。

 見ず知らずの私に命を張ってくれる、心優しい人たちが痛い思いをするのなんて……罪悪感でどうにかなってしまいそうだ。

 

「だから、もう……充分なので!」

「は?」

「えっ、なんで!?」

「最期に助けて貰えたという思い出だけで、幸せです……ありがとうございます……」

「その謎の謙虚さはなに?!」       

「……っ、とにかく! 一気に引っ張り上げるぞ!」 


 ユメビシと呼ばれた彼は、掴む力を一層強めた。

 

「トキノコ! 三つ数えたら、手を離れててくれっ」 

「え、何言って、」

「大丈夫だから。いくぞ、3、2、1……!」

「へっ…………」

 

 掛け声と共に、身体がものすごい力で、引き上げられる。

 というより無造作に天向けて放り投げられ、少女にキャッチされた。


「ちょっとやだ、ユメビシーーーー!!」

 

 それは勢いある反動と引き換えに、()()()()()()()()()()()()()()()という、あまりに捨て身な救出方法だった。

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