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幽縁ノ季楼守  作者: 儚方ノ堂
第一章 御伽の土地 
12/30

一難去ってまた一難(前編)


 第一茶室を後にした俺達は今、トキノコの先導で森の中を歩いていた。

 

 近道だからと勧められた順路に、道という道はない。

 曰く、ここは彼女達が使用する秘密の抜け道で、街がある通りに出るらしい。

 その言葉を信じ、足場に注意を払い場がら、必死に小さな背中を追う。


 ――出発の間際、シュンセイから受けた二つの忠告。

 

「いいか、ヨミトを信用し過ぎるなよ。基本的に善人面で接しやすい男だが、中身は破綻してるからな」 

「あいつが何を考えてるか……まあ十中八九、碌でもないことだろうが。ユメビシ、お前は自分の意思で()()()()()()()()

 

 これらの言葉を最後に、シュンセイは奥の部屋へ引き篭もってしまい、それきり姿を現さなかった。

 そうして現在、指定された『傘ザクラ』という場所に向かっている訳だが……。

 

 ――進展、しているのだろうか?

 

 当初は第一茶室がある場所からの転落と予想したが、シュンセイの証言によって候補から外れてしまった。

 あの一帯は神域で、簡単に入れないはずなのに、何故か俺という部外者が現れた。

 それに心当たりがあるらしいヨミトという危険人物から、直接話を聞くのが良い、と。

 果たして、信用していいのだろうか、その人物は。

  

 ……などと考え(ふけ)っていたせいで、トキノコが立ち止まったと気づかず、追い抜かしていた。

 振り返ると彼女は進路から外れて、大きな岩の物陰から、じっと何かを見つめている。

 俺も屈みながら、なるべく音を立てない様、彼女の横に並んだ。

 

「どうかしたのか?」

「ほら、あそこ。見た事ない女の子がいるの。どうしてあんな所に……」


 小さな手が指し示す先に目を凝らす。

 ここより更に深緑が生い茂げ、薄暗くなる竹林の更に奥。

 辺りをキョロキョロと見渡し、落ち着きない動作を繰り返している人影が一つ。

 

 やや距離も離れ、あまつさえ背景に溶け込んでいるのだ。

 普通なら見落としてしまうであろう、発見しずらい異変。

 

「あー……よく気づいたな」

「これも仕事だからね」

 

 ――仕事、か。

 あまり深く考えない様にしていたが、トキノコとシュンセイ……普通の人間じゃないよな。

 姿形は人と遜色ないどころか、生身の人間にしては異常に綺麗すぎる。

 纏っている空気(もの)が明らかに違う。澄んでいるのだ。

 第六感――所謂勘だが。

 

 ……待てよ。そもそも目覚めてから、普通の人間と呼べる存在に会ったか?

 シュンセイに喰い姫、そしてトキノコ……恐らく、否である。

 

 ――どうしよう、あの子さえも突然襲ってくる側の存在だとしたら。

 愈以(いよいよもっ)て、危ない地に足を踏み入れた証明となってしまう。



 ***

 


 しばらく挙動不審な人影の動向を見守ると、これがやはり妙だった。

 物陰に隠れたと思えば、おもむろに立ち上がったりを繰り返しているのだ。

 そして必ず後ろを振り返る。

 何度も、何度も、確かめるように。

 一貫して読み取れるのは、怯えと警戒。

 

「俺達に気づいて、ではないよな」

「うーん、その線も捨てられないけど」

「……他の何かから、逃げている?」 

「それが一番しっくりくるね……って、ん?」

 

 突然人影は、俺達が隠れてる方とは反対方向へ走り出した。

 

「あの子、マズイかも」

 その呟きが隣で聞こえたと同時に、トキノコは隠れていた岩の上へ飛び乗り、大きく息を吸い込んだ。

 

「おぉーーーーい、そこの君止まってー!! その先、崖で危ないのーーーーっ!!」


 トキノコの必死な訴えが相手にどう聞こえたのか。

 びくりと体をすくませた直後、更に速度を上げてしまった。

 

「わっ、なんで?!  だからそっち、崖ーー!!」

「突然声掛けたから驚いたんだろ。追いかけよう」

「え、一緒に行ってくれるの?」

「でも先導は頼んだぞ、土地勘ないからな」

「うん、うん! ありがとう、付いてきて!」 

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