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俺は女神の中の人  作者: 千佳のふりかけ
第三章『異端審問官になるぞ編』
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47話『手が出る五歩手前』

 マザー・リエルの励ましを受けてなんとかメンタルを持ち直した俺は、これまで戦闘訓練以外では手にする事のなかった物品を数点渡されて聖ルドリカ堂を出発した。



 数ヶ月ぶりに外の街を自由に闊歩する。教会からの監視は無し。完全単独行動だ。


 逃げようと思えば逃げられる状況かのように思えるが、それは流石に難しいか。

 今いるヒベリウスという都市、それを内包するラフィールという国は大陸の中でも最大規模の宗教国家? 聖都市? らしく、修道服を着て歩いているだけで注目されまくっているから着替える隙がまるでない。変な行動を取れば噂になってしまう気しかしない。


 というかアレよな。何度も何度も逃げてやるって思ってきたけどさ、俺の持ち金じゃ馬車を手配するのは流石に難しいよな……。


 服も着替えられないし、修道服のまま長距離を徒歩で移動するのは流石に目立ちすぎる。どのみち詰んでたんだな。



 逃げるという択は現実的じゃないので、仕方なく今日も真面目に業務を行っていこう。


 というわけで、貰った地図に付けられた赤丸を目指してってこてってこ歩いているわけですが。

 明らかに目的地が一般的な集合住宅っぽいんだよな。大通りから見える赤レンガの建築物が目的地っぽい。

 ミーティングとか無しにいきなり現地集合? 段取りとか何も知らないんだけど大丈夫か、これ。



「おんやぁ。可愛らしい修道女様だ、まだ若いのに立派な御姿だねぇ」


「あ、あはは。どうも……」



 うーん。歩いているだけなのに通り過ぎる人々がわざわざ声を掛けてくる。


 ラトナで浴びた視線とはまた違った感じではあるのだけど、結局珍獣を見るような好奇の目に晒されてる事に違いはないんだよな。

 目立ちたがり屋じゃないから正直あまり嬉しくない。めちゃくちゃ子供扱いされるし、悪感情がないのは分かるから余計に複雑な気分だ。



「しっかし暑いな……。こんなカンカン照りなのに、なんで分厚い布地のロングワンピースを着なきゃならないんだ? 季節感無視しすぎだろ」



 身に付けている修道服の胸元をパタパタと動かそうとしたが、首元がぴっちりしたインナーを着用させられてるから思うように動かせずため息を吐く。


 修道服なあ。最初は意外と可愛らしい服装なんだなって鏡に映る自分を見て思いはしたが、周りの人達が薄着なのに一人だけ長袖っていうのはやはり如何なものかと思う。夏服を用意せぇよ。


 今まで問題なく生活出来てたの、聖ルドリカ堂の敷地内には日陰が多くてそこまで暑くなかったからなんだな。全然気付かなかったや。


 一年中この格好が基本らしいから、冬でも問題なく活動できるようにって厚い布を使っているのが完全に裏目に出てる。汗が止まらない、インナーが肌に張り付いて気持ちわりぃ〜……。



「はぁ……」



 頭巾くらいは外しても問題ないかな。ないよな? 蒸れるし外すか……。


 地図を折りたたんで服の内側についてるポケットに仕舞い、頭巾を外そうと前を向き手を頭に伸ばした瞬間に何やら穏やかじゃない光景が目に映った。



「飛び出しキッズ……」



 視線の先にはテンテンと転がるボールを一心不乱に追いかけ、馬車が通過する車道に飛び出しちゃってる男児の姿があった。

 少年の向こう側からは真っ直ぐ走ってくる馬車も見える。少年はそれに気付かず、呑気に両手を伸ばして短い足をばたつかせている。



(轢かれるなぁ、あれ)



 両者の距離はそこそこに近い。

 今すぐに轢き潰される程近いわけではないが、あの位置関係じゃ近くの歩道から助け出そうとしたとしても少年は助からないだろう。御者のキルスコアが1ポイント加算するだけだ。


 外でボール遊びしてて車に轢かれちゃう子供って概念、異世界にも存在するんだな。なんで飛び出し注意の看板が無いのだろうか。あまり頻発する事故じゃないのか? 横断歩道とかないし、絶対そういう注意書きは必要だと思うのだけど。



「あっ……!」



 ボールを掴んだところでようやく少年が自分に迫る馬車の存在に気付き声を上げる。

 少年はそのまま喚くわけでもなく、ただ呆然と荷車を牽引する馬を見上げていた。


 子供ながらにもう手遅れだと悟ったのだろうか? 腰を抜かしちゃったっぽいし、どう足掻いても凄惨な事故が起きるのは避けられなさそう。


 猶予はあまりない。二回も瞬きをすれば少年は馬に蹴散らされてしまうだろう。


 もしもの時の為に予め魔力を全身に均一に循環させておいてよかったと思った。能力を使う時って、発動手順を踏むより魔力を循環させる方が地味に時間かかるしな。



重奏凌積(リフレクション)



 これまで蓄積させたエネルギーを一気に身体能力に変換し、怪力幼女状態に移行して地面を蹴る。

 歩行者と正面衝突したら要らん事故を誘発しかねないので、俺も少年と同じように車道に飛び出し少年の方へと一目散に走る。



「お母さん……っ!」



 少年が頭を手で庇いながらお母さんと呟く。

 魔獣の存在もそうだけど、こういうインフラが整ってない所も死亡件数の多さに直結すると思うんだよな。車があるんなら車道と歩道の境界線を分かりやすく設置しようよ。標識ぐらいは設置しろ、マジで。


 走りながら新たに魔力を心臓から引き出し両手に循環させながら急ブレーキをかける。無理な止まり方をしたせいで靴の裏がベロっと剥がれてしまった。くぅ、帰ったら頑張って直さないとだ……。


 少年の前に立ち、眼前に迫る馬の前脚を魔力を循環させた手のひらで受け止める。



淀れ(とまれ)ッ」



 多少フライング気味に単語を詠唱し、発動プロセスを一気に省略して物質の位置移動を完全停止させる能力を使う。


 馬だけを対象にとったら追従する荷車によって馬の肉体が爆散してしまうので、馬と荷車、御者と荷車に搭乗している全物質を一挙に対象に取って馬車全体を停止させる。



「ふぅ」



 間一髪。誰も怪我する事なく事故を未然に防ぐことが出来た。

 後続の馬車がいなかったおかげで停止させた馬車が崩壊する事も無かった。万事解決、やっぱ便利だな〜この能力!



「……?」


「コラ」


「いてっ!?」



 事故は防げたので、馬の脚から手を離してそのまま瞼をぎゅっと閉じている少年にデコピンを食らわせる。

 少年は額を押えて驚きの声を上げたあと、俺と彫像のようにその場で固まっている馬車とを交互に見て唖然とした顔をした。



「なに、これ」



 不思議だよな。勢いづいていた物体をその場にピタッと固定するとか意味分からんもんね。

 慣性をガン無視してる、物理法則に真っ向から喧嘩売るようなバグ現象。


 目の前で起きた出来事を認めるとこれまでの常識が覆るもんな。気持ちは分かる、俺も初めこの世界に来た時は同じような気持ちだったし。


 そんな事はどうでもいいか。

 俺は少年の脇の下に手を置き、何も言わずに少年を抱っこしてボールも回収し立ち上がる。



「あ、の……おねえさっ、修道女さま……?」


「とりあえず移動しようか」


「わっ!」



 少年を抱っこしたまま歩道まで移動する。数秒の沈黙の後に馬車は再び動き出し、その場を去っていった。



「よいしょと」



 少年を歩道にあったベンチに座らせる。くー、剥がれた靴裏がペッタンペッタン音を鳴らしてたわ。サンダルみたいで恥ずかしかったな〜。


 周りから何故か歓声が上がっている。ちょっとした人助けでここまで大袈裟に賞賛されるのか。

 修道服を着てるから余計に有難がられてるのかもしれない。気まずいからさっさと解散してほしいな……。



「怪我はない?」


「あ、な、ないです。ありがとうございます。修道女さま」


「よかった」



 怪我は無かったか、腰を抜かした時に手のひらとか怪我しちゃってないか心配だったがそこら辺も大丈夫らしい。ひとまず安心。


 それはそれとして。



「こらっ」


「いたいっ!?」



 もう一度デコピンをすると少年は額を指でスリスリしながら唸り声を上げた。彼の膝の上にボールを置き、彼がこっちを向くまで待ってみる。



「なにするんですか修道女さま!」


「なにするんですかじゃないでしょうが。危ないだろ〜車道に飛び出したら。私が居なかったら君、死んでたんだぞ?」


「でも、だって、ボールが!」


「ボールなんか壊れてもまた買ってもらえばいいでしょ? 君が死んじゃったらどれだけお金をかけても生き返らないんだよ? お父さんとお母さんと、それから友達も沢山悲しい思いをするんだぞ。もっと周りをよく見なさい」


「うぅ……ごめんなさい……」


「うむ。素直な事はとても良い事だ。反省出来て偉いぞ、ちびっ子」



 ちゃんと素直に謝れたので少年の頭を撫でる。馬車に轢かれた経験なんて無いのが当たり前だし、危機管理の意識が薄れる事なんてこのくらいの歳の子ならそう珍しくもない。


 生半可な叱り方じゃ全然足りないんだろうけど、俺はあんまり他人を叱るのが得意じゃないからな。苦手分野で挑戦するより、飴を与えて教育を施そう。



「お外でボール遊びするのは楽しいよな、友達と遊ぶのもめっちゃ楽しい。分かるよ。でも死んじゃったら、もう二度とお友達と遊べなくなるんだぞ? 嫌っしょ、それは」


「……やだ」


「ならこれからは危ないと思った所に無闇に飛び出さないこと。手足が折れるだけでもボール遊びは出来なくなるんだからな。安全第一ですよ。分かった?」


「わ、わかった」


「本当に? お姉ちゃんに約束できる? もう二度と危ないことしないよって」


「で、出来るもん! あっ、出来ます!」



 別にですます口調で話さなくてもいいんだけどな。修道女"さま"って呼ばれたし、親の教育方針的に聖職者は特別敬えみたいに言われてるのだろうか。何かを成し遂げてこの服を着てるわけじゃないからなんか複雑だわ。


 とりあえず少年の前に小指を立てる。それがなんの仕草なのか分からなかったようで、少年は不思議そうに俺の小指を見つめていた。



「約束できるなら私の真似してみて」


「こうですか?」


「うん。指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます」


「針千本!?」


「指切った」


「えっ!? 指!? き、切れてないです!」



 俺のよく知る約束の契り方をしたら単語の節々で過剰反応された。純粋か。



「針千本って!? 指、切られるんですか!?」


「約束を破って危ない事をしたら針千本を飲まします。指切ったっていうのは……なんだろ? 今の小指のやり取りで約束しましたよって宣言するようなものかな? まあ、針千本については本当にそうするけど気にしなくていいよ」


「針を飲まされるんですか!?」


「うむ。ミルティア教では嘘は大罪なのです。私は修道女なので、もし嘘をつかれたらそれなりの対応をしなくちゃならないのだ。痛いぞ〜針を飲むの。喉から血が出るぞ〜!」


「ひえぇ!」


「あははっ。ま、それが嫌ならちゃんと私の言うことに従う事。いいね?」


「分かりました! 分かりました!」


「よろしい」



 少年の頭を軽く撫でて、友達連中がこちらに向かってくるのを確認しベンチから離れる。


 さてさて、無駄に時間を浪費してしまった。時計塔を見上げると約束の集合時間まであとわずかしかない。走れば間に合うか、特に問題は無いな。



「修道女さま!」


「?」



 走ろうとしたら助けた少年に呼び止められた。何か用事だろうか? 少年の方を振り向くと、彼はぺこりと頭を下げているのが見えた。



「助けてくれて、ありがとうございます!」



 ちゃんと改めてお礼を言おうとしたのか。良い子だな、普通に弟になってほしい。よく見たら可愛い顔してるし。


 ……なんか、ショタコンみたいな事考えちゃった。少年がシュンとしてる姿とか見てると、何か不思議な感覚が胸の中に宿って変な気分にさせられるんだよな。

 優しくしてあげないとって思ってしまう。そこに関しては人として割と当たり前の感情か。



「いいよ〜。針千本飲ませるのを楽しみに待ってるからね〜」


「や、約束は破らないです!」


「言ったからね〜? もし破ったら千本じゃなく一万本飲ます事になったから、そこんとこよろしく〜」


「ええっ!?」



 動揺する少年に今度こそ背を向け、早足で目的地まで向かう。


 異端審問官じゃないリエルですら子供を痛め付けるプロのサディストだからな。戦闘分野の異端審問官相手に遅刻なんてカマしたら冗談じゃなく本当に針を飲まされる可能性がある。急がなくては!





「果たしてどんな大物新人がやってくるのかと思っていたが、リエルめ気でも狂ったか? まだ子供じゃないか」



 異端審問官さんと合流していの一番に侮り100%の冷たい歓迎を受けた。

 初対面なのにジロジロと品定めするかのように全身を観察される、体に穴が空きそうなくらい鋭い眼光だ。それを向ける相手、俺じゃないと思うんですけど。



「時間ギリギリの到着というのもどうなのだ? 聖ルドリカ堂からここに向かうまでの道中に危険な道などなかったはずだが、なぜ靴が捲れている。手入れを怠っているのか?」


「い、いやぁ……かくかくしかじかあって……」


「何を言っているのか分からん、説明する時は伝わる言葉で喋れ」



 こ、こわぁ。

 厳しい試練を受けた人達だから失礼のないようにって口酸っぱく言われた意味を実感した。堅物すぎる、めちゃくちゃ苦手だわこういう人。



「まあまあ。そんな喧々したら怖がってしまうでしょ? 私達の後輩なのですから、もっと優しく接してあげないと。嫌われてしまいますよ? シスター・ジュエル」


「そうは言うがなぁシスター・テストロッサ。アレほどの啖呵を切られて送り付けられたのが年端のいかぬ子供なのだぞ? 正気の沙汰とは思えんだろうよ」


「マザー・リエルが推薦状を出すのですから四つの試練は既に乗り越えられているのでしょう? 立派ではありませんか、幼子でありながら子を孕む痛みを知り、恐怖を踏み込める強さを持っている。私はむしろ賞賛するべきだと思います」


「何かの間違いに決まっているだろう。あのな? 考えても見ろ、こんな肉体で子を産めるとでも思っているのか?」


「確認してみれば良いではありませんか」



 ん? 突然意見交換していた異端審問官の一人、テストロッサと呼ばれた女性がいきなり俺に目線を向けた。



「シスター・セーレ、でしたよね?」


「は、はい」


「今すぐそこで服を脱いでくださる?」


「!? え、え、脱ぐって、ここでですか!?」


「はい。あ、何も全裸になる必要はありません。お腹を見せてくれさえすれば十分ですので」


「えぇ……」



 嫌だが。嫌すぎるが。でもこの状況で逆らったらどんな事を言われるのかわかったものじゃないので仕方なくワンピースのチャックを下ろしインナーを捲りあげて腹を見せる。


 シスター・ジュエルとシスター・テストロッサが俺のすぐ目の前でしゃがみこみ、へそより下の皮膚を指で触り始めた。くすぐったい、というか恥ずかしい。なんでこんな路地裏で露出プレイをさせられているのだろうか。



「ほらこれ、妊娠線の名残りですよ」


「本当だな。……産めるのか? そんな体で」


「この線があるということは産めたのでしょう。よく頑張りましたね、シスター・セーレ」


「え。あ、恐縮です……」



 お褒めの言葉を頂いたが、突然身に覚えのない事を言われて一瞬頭が混乱する。


 妊娠線? 妊婦に出来るやつか? 赤ちゃんがポップして腹が膨れるせいで皮膚が張ってバリバリバリ〜ってなるやつだよね? そんなのあるの? 俺の体に? 初耳なんですけど。


 てかてか、という事はやっぱ俺ってこの世界に来て以降のどこかのタイミングで妊娠を経験してるってことになるよね? やっぱりこの世界のどこかに俺のベイビーが存在するわけ?? エグすぎるんだけど???



「経産婦……? 俺、経産……」


「もう服を直しても大丈夫ですよ、シスター・セーレ」


「出産……子供……結婚した事ないのに……子供……」


「シスター・セーレ?」


「何を呆けている。直せと言っているのが聞こえないのか」


「いてっ」



 シスター・ジュエルにゲンコツを落とされた。話を聞いていなかったのは俺が悪いけど、いきなりゲンコツを落とすかね。パワハラで訴えられたいのか?



「お前が我々に同行するに足る資格を得ているのは理解した。だが、子供がついていけるほど悪魔払いは生易しい任務ではないぞ。お前の実力には期待していない、精々私の指示に従い生き延びてみろ」



 めちゃくちゃ言うなこの人、始まる前から戦力外通告かよ。運動部だったら立ち直れないくらい萎え散らかすぞ。県大会を前にしてゼッケンを貰えない部員の気持ちになってますよ今。試合に出もしないのに仮病で県大会ブッチするマインドまで来てるからね???



「さて、それではそろそろ向かいますがその前に。シスター・セーレ、あなたが今持っている装備とあなたに何ができるかの説明をお願い致します」


「えっ。そ、装備は、武器の類は特に持たされていなくて、回復魔術と結界魔術の聖霊紙片(せいれいしへん)と繊維硬化の留め針、あと戦鎚タイプの可変聖器(かへんせいき)だけです」


「戦鎚だと? その細腕で戦鎚を扱うのか?」


「戦鎚っていうか、本来は戦斧の方を……」


「強化系の能力に秀でているのか。前衛は私達二人で事足りているし、本来であれば支援系の術者が欲しかった所なのだがな。お前程度が前に出ても一戦力にはならん、今日は見学をさせに寄越したということか」


「……まあ。そんな感じの事を言われましたね」



 一々癪に障るなぁ〜〜〜!!! 

 そりゃ実力が足りない事なんて100も承知だけどさ! 言ってる事は何も間違っちゃいないんだけどオブラートに包めないかなぁ!? なんでさっきからストレートにノンデリ発言してくるんだろうこの人! いい加減頭の血管ブチ切れそうなんですけど!?



「……筋力を強化する他に、物体を」


「もういい、お前の役割はわかった。後方で、何もせず、ただ私達を眺めていろ。最低限戦いの心得を持っているのなら自衛くらいは出来るだろう? 無能な戦士がやるべき事は死なない事だけだ、それさえ覚えていればあとは何も必要ない」


「……すぞブス」


「なんだ?」


「なんでもないです。分かりました、私は後方で先輩方のご活躍を見学させてもらいます。よろしくお願いしまーす!」



 危ない危ない。つい本音がまろびでてしまいました。明瞭に耳に入れられてたらこの場で処刑されてましたね俺。


 口は災いの元、ここから先はお口チャックを意識しましょう死ねブス。ゴリラブス。悪魔に襲われて無様にのたうち回ってろブス。



「……ほら、シスター・ジュエル。貴女があんまりな対応をするから睨まれていますよ」


「ほう。文句でもあるのか?」


「いえ、ないです。頑張ってくださいね先輩」


「ふん。お前に言われずとも危なげなく任務を遂行してやるとも」


(黙れブー子死に晒せ)


「? なんだ、口だけ動いて声が出ていなかったぞ。なんと言ったのだ、シスター・セーレ」


「かっこいいなぁ、尊敬するなあって言いました」


「そうか」



 なわけねえだろバーカ。コイツ言動に違わずバカなんだな、口の動きと言葉の文字数を照らし合わせることも出来ないんだ。絶対脳筋だろコイツ。

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