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第34話 シアとの接触

 当初の目的通りにシアと接触したカインとエレナ。

 二人を拒絶する理由がない現在のシアは二人と共に喫茶店にある個室へと入って行った。


「なるほど。個室を選ぶということはあたしのスキルを知っているんだ」


 出入りは一つだけあるドアからのみ行う。壁に窓はあるが、人が出入りできるような大きさではない。


 シアのスキルは【隠密】。

 姿を消すことができるが、消せるだけでそこにいることは変わらない。

 もし、個室でスキルを使用したとしても脱出する時には必ずドアを開けなければならない。

 見えていなくてもそこにいる事実は消しようがない。


「ギルドでも見つかっちゃうし、けっこう自信があったんだけどな」

「自信は持ってもいいわ。おそらくギルドにいた私以外の人間は貴女がいたことに気付くこともできなかったはずだから」


 カインもいた確信はあったが、最後まで捉えることはできなかった。


「これでも賢者候補よ。魔力の扱いに関しては誰よりも上手だし、感知能力は賢者様からも褒められたぐらいよ」


 【隠密】スキルは、魔力を消耗して姿を消している。


「スキルを使う為に消耗した魔力の痕跡を追う。私がしたのはそれだけよ」

「そんな、そんなことができるなら【隠密】の意味がないじゃない」

「大丈夫よ。こんなことができるのは賢者クラスの魔法使いだけよ」


 普通はできないことがエレナにはできた。

 以前の世界でエレナは呪具の使用された痕跡も見抜いていた。


「俺から提案させてもらった」


 回帰したカインの目的はシアと接触することだった。

 シアと繋がることができる窓口としてミランダがいた。しかし、ミランダから接触してしまうと何らかの理由によってシアにまで警戒心を与えて接触してもらうことが難しくなる。

 そこでシアの視線がカインへと向き、ようやく交渉役が代わる。

 エレナに全ての情報は聞かせているが、それでも実際に体験したカインの方が細部まで説明することができる。


「君が【隠密】で姿を消せて、それで誰かの跡をつけることができるのも知っている」


 カインとエレナの跡をつけていたことも前回の世界で判明した。


「どれだけ姿を消せてもそこにいる事実は変わらない」


 前回の世界ではいられる場所を限定することでシアの位置を特定した。

 しかし、遺跡のように限定された空間でなければ同じ方法を採ることはできず、遺跡へ向かう前にシアとは接触しておく必要があった。

 案内人なしで初めて遺跡へ侵入するのは自殺行為に等しく、どれだけ強くてもシアを失望させることになる。


「だから注目を集めて近くで見ているだろう状況を作り出して、エレナさんに探してもらったんだ」


 カインが騒ぎの中心となり、輪の外にいるシアをエレナが見つけ出す。

 簡単な指示しか出すことができなかったが、どうなるのか分からなかったカインに代わってエレナはしっかりと見つけることができた。


「あたしは【隠密】だけじゃない。勘にはそれなりの自信があるから相手がどれだけ強いのか分かるんだ。それで今日はたまたま門で新しく来た人を眺めていたら、凄く強そうな人が現れるんだもん」

「そんな前から見ていたのか……」


 カインたちが気付かなかっただけで街に着いた時からシアに監視されていた。

 そのまま姿を消すと二人の跡をずっとつけており、冒険者ギルドの騒動に立ち会うことができたため騒ぎを利用してエレナの実力を確かめようと考えた。だが、逆にシアの位置を特定することに利用されてしまった。


「それより、あたしの疑問に答えてくれない? どうしてあたしのことを知っているの? 名前とかだけなら納得できるけど、スキルやあそこにいたっていう確信がないと見つけられないよね」

「もちろん説明する。これまでに何があったのか知ってから判断してくれ」


 これまでの世界で起こった出来事も含めて説明した。

 最初は何も知らずに遺跡へ侵入したばかりにゴーレムに倒され、案内人を雇って侵入したものの最奥まで進んでもこれまでに判明している情報だけでは意味がない。シアと接触しようとしたものの最初から警戒されていた。


「なに、それ……?」


 以前に接触していた。

 そう言われても、この世界では接触していないのだから本人としては困惑するばかりだし、全く身に覚えの出来事だ。

 それでも納得はできる。


「あたしらしいかな」

「そうなのか?」

「ミランダさんは父親までいなくなったあたしを育ててくれた人だからね。あの人を心配させるわけにはいかないの。それに協会の連中と一緒にいるような奴なら強くても信用はしなかったと思う」

「そこまでか」

「うん。父さんがいなくなった時に協会の連中は笑うばかりで、地下の話を全く信じてくれなかった」


 こっそり姿を消して捜索している様子を観察していたが、真面目に地下を探す者はいなかった。

 それまで全く手掛かりもなかった地下の存在。信じている者の方が圧倒的に少なかった。

 幼いシアにとっては、その光景が許せなかった。


「ミランダさんは別として、協会の連中やそいつらを頼りにしている連中を信用するつもりはないの」


 だからガデウスと行動を共にした二人を信用することはできなかった。

 それでも跡をつけたのは……


「強い奴を求めているんだろ」

「!?」

「街の門で見張っていたら強そうな奴を見つけたから跡をつけた。何か強い奴が必要な理由があるんじゃないか」

「それは……」

「そこには勇者がなるはずだったんだ」

「勇者?」


 もっと前の世界――この日から考えれば未来で何が起こるのか説明した。

 大呪術師ボーディスが解き放たれ、暴れるボーディスを勇者が聖剣を携えて討伐した。

 その聖剣がラポルカで得られたことまでは情報が公開されたものの、誰が勇者を聖剣の元まで案内したのか知られることはなかった。


「勇者を味方につけ、圧倒的な力と共に遺跡を進んだお前は聖剣を見つけ、それを勇者に託したんだ」


 それが本来のあるべき歴史。

 だが、それでは多くのものが犠牲になり、エレナが悲しむことになる。


「回帰については説明したな。俺たちに協力しなくても数日後には勇者が到着して聖剣は見つけられるはずだ」

「そっか。見つけられるんだ」


 安堵して力が抜けてしまうシア。

 カインの説明には怪しい部分ばかりだが、それでも『聖剣を見つけられる』という事実は何よりも嬉しかった。


 ようやく理解した。

 カインが聖剣まで案内した者の情報を集めた時、異様なまでに案内人の情報は伏せられていた。

 事情はあったが、そんな状況なら聖剣を見つけた恩恵も受けられていないはず。


 だが、シアにとっては『聖剣を見つけた』という事実そのものが何よりの報酬になっていた。

 その時には地下の存在が公表され、誰もがマイルズの言葉は正しかったんだ、と認めることになった。


「聖剣を見つけることだけが目的なら俺たちに協力する必要はない。数日後に来る勇者を待てばいいんだ」


 困難はあるだろうが、最終的には勝利が約束されている。


「それだと間に合わないから勇者よりも俺たちに協力してほしい」


 もしかしたら勇者との遭遇をふいにする可能性もあった。勇者がラポルカを訪れた正確な日付が判明していないため、もしかしたらカインたちと遺跡を探索している間に訪れたのかもしれない。

 そうなれば遭遇の機会を見逃してしまうかもしれない。


「どうして、そんな選択肢を……?」

「うん?」

「そんなことを言われなければ気付かなかったのに」


 そもそも勇者の存在を言わなければ賢者であるエレナに協力していた。

 勇者に比べれば劣るものの、賢者と使徒ならシアが手繰り寄せられる伝手の中で最もいいと言っていい。

 何もなければカインの手を取って案内していた。


「俺はエレナさんから頼られて困っていたから助けたい、と思った。だからと言って他の人を無意味に犠牲にするつもりはない」


 本来ならカインが何もしなければシアは願いを叶えられた。

 シアに選択肢を与えないのは不公平だと思えてしまった。


「それよりも困っている……助けてほしいんじゃないか」

「え……」

「お前も助けてほしいんだろ」


 行方不明になった父。

 誰かに見つけてほしい、とずっと願っていた。


「俺たちの力が必要なら一緒に行ってやる。だから地下まで案内してくれ

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