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39.愛玩獣人愛好家10

 

「ねえ、にゃん太、」

「聞きたくない」


 その日の食卓に母なお乃が作った料理が並んでいたことから予想を付けていたにゃん太は、珍しく言いにくそうにするたま絵にぴしゃりとはねつける。鼻白むたま絵をよそに、にゃん太は知らん顔で食後の片付けに取り掛かる。


「にゃん太あ、」

 ケン太が情けなさそうな顔をする。尾もしょんぼりと垂れている。

「なんだよ」

 母まで引っ張り出してくるなんて、そうまでして父はにゃん太に翻意させたいのか。だが、にゃん太は自分の考えを改めるつもりはなかった。


 カン七は「あらあ」という風に眺めていたが、みい子もハム助もなにも言わなかった。

 それでも、なんとかしなければならないという気持ちは共通していた。

「でも、わたしたちがなにかを言っても、」

「今、あれこれ言っても頑なにするだけのような気がします」

「そうなのよねえ」


「あ、じゃあさ」

 困り果てた面々は打つ手がなかったところ、ケン太が思いついた。そして、<魔力ランプ>を持って畑へ向かう。

 畑を隅々まで知り尽くしたケン太は日が落ちた中でも迷うことなく、アルルーンの下へと向かう。


「アルルーン、こんな時間に悪いな」

 わさわさわさっ。

 何度か呼びかけてみて、反応がなければ明日にしようと思っていたが、すぐに葉が揺れ動く。

「実はさ、にゃん太が、」

 ケン太はにゃん太が父と仲たがいをした一件を話した。説明するうち、どんどん愚痴交じりになる。


「いやな、にゃん太の気持ちも分かるんだよ。でも、にい也さんが言わんとしていることも分かる。だって、にい也さんは孤高の存在だけれど、家族のことはとても大事にしているんだ。そのふたりが決裂しているのがさあ、」

 わさわさ、とときおり相槌のように葉が揺れる。


「獣人族も人族もそんなに寿命は長くないんだ。樹木のようにはいかない。なのにさ、」

 アルルーンとて、じいちゃんとの別れに直面した。ケン太が言いたいことは分かる。

 アルルーンたちはわっさと一斉に頷いたあと、ひと株がずぼりと土から這い出てきた。

「なにか策があるのか?」

 わっさとアルルーンが頷く。

「手伝おうか?」

 これには、アルルーンは葉を横に振る。

 そこで、ケン太はアルルーンひと株を抱えて住居部へと戻った。


「なんだよ、アルルーンを連れて来て、」

 にゃん太の文句を他所に、アルルーンはそのままケン太に根っこで指示し、作業場へと向かった。にゃん太もなんとなく、後をついていく。

 他の面々は互いに顔を合わせ、片付けを放り出してこっそりついていった。作業場には入らず、戸口で中の様子を伺うに留める。


 アルルーンは作業場に隣接する貯蔵庫を根っこで指し示す。

「こっちか?」

 言いながら、ケン太は貯蔵庫に入り、ボタンを押す。室内に固定された<魔力ランプ>が灯りをともす。


 アルルーンの根っこに導かれ、貯蔵庫の隅に置かれた物を取り出した。

「なんだ、これ?」

「雑誌だな。こんなにたくさん」

 紐で縛って束ねられた雑誌を、にゃん太も覗き込む。

「みんなおなじやつだ。ええと、「月刊 ザ★猫」?」

「あ、それ、じいちゃんがいつからか、読み始めていたやつだよ」

「定期購読していたみたいだな。途中からバックナンバーが揃っている」

 ケン太はアルルーンを床に下ろすと、括っていた紐を解く。


 アルルーンは根っこでページをめくる。

「何度も読んでいた形跡がある」

 アルルーンが雑誌を開いてにゃん太とケン太に見せてくる。それは読み物だった。

「なんだ? ええと、猫族の冒険者の小説だな」


 ふたりは頬を寄せ合って雑誌を読み進める。勇敢な猫族冒険者が様々な冒険に出る話だ。飛んだり跳ねたり、存分に種族特性を活かして活躍している様子を描いている。中には手ごわい魔獣を相手にし、あわやという手に汗握る展開もある。


「これ、にい也さんがモデルじゃないか?」

「え、違うだろう? 父ちゃん、もっと高く跳べるし、もっと強いぞ。この程度の魔獣にてこずることはないよ」

 顔を上げたケン太に、にゃん太が小首を傾げる。

「じゃあ、事実は小説より奇なりって言うけれど、モデルとなったにい也さんは小説のはるか上をいくのか?」

 そうは言いつつも、にい也さんだからなあ、とケン太は妙に納得した。


 にゃん太と言えば、雑誌をそっと片前足で撫でる。

「じいちゃん、この話が好きだったみたいだな」

 繰り返し読んだ跡がある。


 じいちゃんは父が元になった冒険譚を好んだ。父はこんな風に、全く関係のない人を楽しませることができる存在だ。

 こんなことがあるのだ。にゃん太は不思議な感覚を味わう。

 じいちゃんが物語を通じて、父と触れ合っていたかのような気がした。世界は不思議につながっている。この世の事象は、なにがどこへどうつながって行くか分からない。みごとな綾を織りなす。

 良いことも悪いことも雑駁ざっぱくとしている。でも、だからこそ、面白いのだ。




 アルルーンもまた、雑誌を見ながら、在りし日の老錬金術師を思い出していた。


 じいちゃんは猫族の獣人を弟子に取った。それまでも彼の弟子になりたいという者は大勢いた。けれど、帯に短したすきに長し。知性が高くても、あるいは素晴らしい特性を持っていても、なにか不足する点があった。


 特にじいちゃんは自分が亡き後、アルルーンを任せられる者はいないかとずっと懸念を抱いていた。アルルーンをただ金儲けや錬金術の色んな可能性を持つ素材としてだけでなく育てることができる者だ。みなは口を揃えて自分がそうだと言う。でも、信頼するに値する者はいなかった。


 ほとんど諦めかけていたとき、アルルーンが盗難に遭いそうになり、ある猫族の若者が助けてくれたのだという。アルルーンが気にすることこの上なく、じいちゃんは自分も会ってみたいと思った。そして、じいちゃんはにゃん太を工房へ招じ入れ、人となりをじっくり吟味して弟子にならないかと提案した。幸いにも、にゃん太はすんなり受け入れた。なにより、錬金術で一番最初に学びたいことはアルルーンの栄養剤だという。


 じいちゃんは天の配剤に感謝した。間に合ったのだ。なんとか、自身の知ることを教え、そして、アルルーンの育成を引き継ぐことができた。


 しかし、にゃん太は猫族だ。人族とはやはり違う事柄が散見する。その習性をあまり知らないことから、「月刊 ザ★猫」を定期購読するようになった。

 期せずして、その中の読み物である「冒険者の星猫ほしねこ」の物語を読むのが楽しみとなった。

 悪しきをくじき弱きを助ける、正義の味方の猫族の冒険物語だ。

 この猫族が「本当に猫族か」というくらい、強い。とんでもない動きをする。壁を駆け上がって二階どころか三階にまでやすやすと登っていくし、猛獣人族ですら怯む魔獣を、怪我を負っても倒している。


 そう、それは実在する某猫族冒険者を基にした物語であった。

 なお、事実は小説より奇なりというか、にい也はやろうと思えば三階どころか四階にまで到達する。強い魔獣の前で平然とし、易々と倒す。怪我を負うこともほとんどない。


 主人公の猫族の若者は、白地に黒いぶちがある毛並みをしていると描かれている。そして、特徴的なものとして、右目の下のぶちが星の形をしているという設定だ。

 それを見せつけるように、くいっと顎を上げ、ばちーんとウィンクをする。

 悪者と対峙するシーンでの決まり文句はこうだ。


「そこへ現れたのは! 猫族のスタア星猫ほしねこさんだ!(ばちーん(ウィンク))」


 星猫の好物は煮干しである。これは、「星」と「干し」をかけたのだというのがファンの中での定説である。


「今回の星猫さんの活躍も素晴らしかったのう。来月号が楽しみじゃ」

 じいちゃんは雑誌から顔を上げて、にこにこしながらアルルーンに言ったものだ。

 わさわさわさっ。

 アルルーンたちも葉を震わせて、「面白かった!」と伝えて来る。


「そうか、そうか。にゃん太のおかげで、楽しみを持つことができた。新しいことを知ることができる。素晴らしいことじゃなあ」

 アルルーンもまた、他者と交わることで新たな発見を得ることを実感していた。だからこそ、にゃん太が連れてきた多くの獣人たちを受け入れた。そうして良かったと思っている。みなで新たな事象を見出し、世界の神秘をひも解いていく。老錬金術師が生涯をかけて行っていたことであり、それを引き継いでいる。そうやって、連綿と続いていくのだ。


 にゃん太はアルルーンが懐古する事象を知らない。けれど、じいちゃんが父を知っていたこと、その物語を、活躍を好んでいたことを知った。そういった世界のつながり、綾を知った。


「父ちゃんなんか大嫌いだ」

 にゃん太はそう口走った。けれど、正確には違う。父にはどうやったって敵わない。自分の思いは、言葉を尽くしても、にい也に届かなかった。「可愛い」にゃん太は、そのせいで狙われていて、その父にずっと守られてきた。

 父が耳を傾けるように話をすこともできなく、それで悔しいと思っても、結局そのにい也の力を借りることになる。不甲斐ない。そんな自分が大嫌いだった。

 父が嫌いなのではないのに、八つ当たりをしてしまったのだ。


 じいちゃんはずっと追いかける存在だ。そんなじいちゃんがにい也(がモデルになった猫族)の物語を好んでいた。そのにい也は身近な者であるからこそ、ずっと比較対象でもあった。父に比べて自分の無力さを感じていた。

 そう思い至れば、不思議なおかしみを感じた。


 なぜなら、じいちゃんは同じ錬金術師で、冒険者のにい也はまったく畑違いのことをしている。もちろん、じいちゃんと比べて自分はまったく及ばない錬金術師だ。でも、ずっとその背中を追い続け、いつかじいちゃんが見ていた世界領域を目にしたいという目標がある。言い換えれば、死してなお指針であった。それがあるから、にゃん太は錬金術師の道筋を過たないでいられるとも言える。


 父と比べても仕方がないではないか。

 そして、父が困窮した誘拐実行犯を許せないというのならば、それで良いではないか。にゃん太がその考えを変えようなど、おこがましい。にゃん太はにゃん太でできることをすれば良い。


「俺、父ちゃんに甘えていたんだな」

 そして、たぶんとても父が好きなのだ。だから、考え方が大きく違っているのが嫌だった。いっしょの陣営にいてほしかったのだ。


 唐突に、にゃん太は知る。そんな風に好きな父と袂を分かったままでいて、別離があれば。無いとは言えない。冒険者は明日をも知れないのだから。だから、フェレ人はまっさきに駆け付けて来たのだ。そして、なんとか和解できないかと考えた。それを、にゃん太が頑なに拒絶したのだ。

 フェレ人はその話題に軽く触れただけで、にゃん太を説得しようとはしなかった。にゃん太自身に気づいてほしかったのだろう。


 他の猛獣人族もまた、荒事が得意だからこそ、周囲で決定的な別離があるのを何度も見てきたのだろう。それで、にゃん太とにい也の仲立ちをしようとした。

 とても恵まれている。至らない自分に教えようとしてくれる者たちはこんなにたくさんいるのだ。


 にゃん太はぽつぽつと話し出した。ごちゃまぜになっていた心情が整理されて、ようやく言葉になった。

 ケン太もアルルーンも遮らずに静かに聞いた。ケン太は大いに安堵した。ようやく、なんとかめどが立ちそうだ。


「俺、父ちゃんに謝って来る」

 そう言うにゃん太はどこか頑なだった雰囲気が弛緩し、柔らかいものに変わっていた。肩に入っていた力が取れた様子だ。

「うん、それが良いよ」

 ケン太はアルルーンを畑に戻しに行くと言うので、にゃん太が雑誌を元の通りしまうことにした。


 ケン太は作業場を出たところでたま絵たちに捕まり、そそくさと食堂に移動して、一連の出来事を話す。

「ああ、良かったわあ!」

「もう、本当に、世話が焼けるんだからっ」

 カン七は大仰に喜んでみせたが、振り回されたたま絵は憤懣ふんまんやるかたない様子だ。


「良いじゃないですか。お父さんとお子さんがぶつかり合うことなんてままあることです」

「そうですよ。それに、にゃん太さんにも譲れない点がある。それを主張するのは当然のことです」

 みい子がたま絵をなだめ、ハム助がにゃん太を擁護する。


 ケン太はアルルーンを抱えて畑に戻る。

「ありがとうな。助かったよ」

 窪みに入れ、そっと土をかける。

 じきにアルルーンも動かなくなった。眠りについたのだ。もしかすると、じいちゃんの夢を見ているのかもしれない。





 冒険者ギルド内はしんと静まり返っていた。

 そこへ、冒険から帰還した冒険者が入って来る。最近ではギルド内で静かにしておくようにしていたのに、そのときは少々手ごわい魔獣を討伐したことから、高揚していた。一部のパーティメンバーが傷を負い、周囲のことなど構っていられなかったこともある。


「こいつ、怪我しやがってよお! ぴいぴいうるせえったら!」

「お前がうるさい! おい、だれか、医者を呼んでくれ!」

「痛いよぉ、痛いよぉ!」

 極限状態にあるのか、痛みを訴えかける者に、げらげら笑い声を上げる。異様な雰囲気だった。


 と、のけぞって笑う者が他の者にぶつかりそうになった。さっと避けられ、衝突にはいたらなかったにもかかわらず、「気を付けろ!」と声を張り上げる。

「ば、ばか!」

 彼のパーティメンバーが真っ青になる。瞬間的に声を出すことはできたが、それ以上、なにも言うことが出来ず、その場に固まる。痛みにわめいていた者ですら、石になったようになる。


 一瞬にして、その場は静寂に支配された。しかし、ぶつかりそうになって声を荒げた当の本人はその異常事態に気づかない。

「あぁん? なんだあ?」

 振り返った途端、卒倒しそうになる。

「に、にい也!」


 にい也は一瞥もせず、さっさと通り過ぎていた。振り返った冒険者が見たのはその後ろ姿だ。もちろん、虎の尾を踏みに行くことはしない。せっかく生還したのに、自殺行為をするほど愚かではなかった。


 にい也はふだんから誰も寄せ付けない雰囲気を纏っていた。それが最近、非常な威圧感を振りまいている。

 にい也とて分かっている。いかな息子とはいえ、価値観の違いがある。考え方の相違は仕方がないことだ。

 しかし、愛息子から放たれた言葉はにい也の心を抉った。

 常ならず、それが隙となった。


 にゃん太から少し目が離れたほんの一瞬だった。これが顔見知りの獣人の子供がかかわっていなかったら、違っただろう。しかし、にい也は獣人に容赦ないうんぬんでにゃん太にとんでもないことを言われたがために、怯んでしまったのだ。そう、あのにい也を怯ませるに至ったのだ。しかし、その間隙を突かれた。にい也は自分の馬鹿さ加減にも腹が立った。


 それがにゃん太を見失う契機となった。





 いつからだっただろうか。このポチ丸という名前をにやにや笑いながら名乗る者が使いとして現れるようになったのは。


 ポチ丸はこだわりの強い男だった。

「おっと、うっかり左から歩き始めちまうところだったぜ」

 そんな風に言って右足から出すのを確かめて、歩き始めたことがある。


 まだ年若いようにも、老いているようにも見える。

 ポチ丸はほかの使いと同じく、ときに声を荒げたり、ときに家具を蹴り付けたりしながら、主の要求を叶えるように迫った。


 しかし、亀之進は怯まない。守るべき一線をしっかり維持しなければ、どこまでも侵される。亀之進とて、この方法が最善とは思っていない。もっと良い手法がそちらを採りたい。しかし、ゆっくり待っていることはできないのだ。それだけ、下町の獣人たちの暮らしは追いつめられている。悠長にしていては死亡者が増える一方だ。即効性がある方策を取らなければならない。誰かがやらなければならないことだ。汚名を着ても、多少の犠牲を払っても、他の大多数を助けることができるのなら、そうすべきだ。


 亀之進はこのとき、切り捨てられる方のこと、犠牲を強いられる者のことについて考えが及んでいない。自分は正しいことをしていると信じ切っていた。


 突然訪ねてきたポチ丸はいつもの通り、いやな目つきで室内を見渡す。まるで、獣人のくせに良いところに住んでいやがる、とでも思っている風だ。亀之進はなるほど、と合点がいく。だから、彼ら使いの者たちは、家具を蹴って憂さを晴らすのだ。弁償を要求したらどんな顔をするだろうか。彼らが逆立ちしたって一生働いたって、弁済することはできない額だ。


 そんな亀之進のさげすむ気持ちを読み取ったのか、ポチ丸はにやつきながらも要求を述べた。

「主はもう待てないと言っている」

 しびれを切らしているのは少し前から感じていた。いや、人族はせっかちだ。少なくとも、裏で取引をする彼らはそうだ。自分たちが思いついたらそのときに手に入れなければ気が済まないのだ。


「切り捨てられるぞ?」

 にやにや笑いが消えた。目も鼻も口もある。なのに、そこには無しかないように思われた。


「早くパンダ族の子供を連れて来い」

 ポチ丸はそう言い置いて、出て行った。

 やむを得ない。


「誰か、いつもの獣人たちを呼んでおくれ」

「旦那様、お疲れのご様子です。お休みになられた方がよろしいかと存じます」

「そうだな。この一件が片付いたら、心行くまでゆっくりしようか」

 だからこそ、さっさと片を付けてしまいたい。

 あともう一度。そうしたら、そろそろ彼らとは縁を切る方向で動かなければならない。

 亀之進は重いため息をついた。


「気晴らしに<パンジャ>に乗って出かけられてはどうでしょうか?」

 小柄である獣人の亀之進は<パンジャ>を数台購入して愛用している。

 その種族の特徴から、歩みがゆっくりである亀之進は、この画期的な魔道具を手に入れた後、世界が一新された心持になった。年甲斐もなく、速度を上げて走行し、今ではそこそこ乗りこなせるようになった。

 その爽快感に、久方ぶりに腹の底から笑いがこみ上げた。


 けれど、すぐに暗い感情に取って代わられる。

 なぜ、この魔道具をもっと早くに発明してくれなかったのか。ならば、自分はこんなに年寄りになる前にもっといろんなことができた。遅すぎた。


 こんな魔道具を発明したのなら、もっと獣人にとって役に立つものを発明できるはずだ。なのに、なぜやらない?

<吸臭石>? そんなもの、一部の獣人が偏った使い方をしているだけではないか。


 亀之進は自身が思い描く理想から外れるにゃん太が評価されていることが、不思議でならなかった。そして、我慢ならなかった。自分はもっと貢献している。なのに、なぜ、あんな者がもてはやされるのか。

 そういう思いが募るにつれ、次第に<パンジャ>に対する愛着とともに憎しみがいや増すのだった。




「月刊 ザ★猫」は7.素材採取2で出てきました。

ふろくつきの号もあるらしいです。


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