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完璧な幼馴染と凡人な僕  作者: Kouga
一学期
9/20

九限目

 ハワイへ向かう間こんな会話があった。


「先輩、詰まんないです」


「僕が詰まらないみたいに言うな!お前のチョイスが悪い!」


 僕らがプライベートジェットに乗って二時間半は経過した。その間ずっとトランプで遊んでいたわけだが、こいつの選ぶゲームは、大人数向けのものばかりなので、とても二人で遊んで面白いものではなかった。


「そうだ!先輩、何か賭けましょう!」


「何、当然のように危ないこと言ってんの?」


「賭けるものは、定番なもので行きましょう!」


「話聞けよ!!定番ってなんだよ?お金なら持ってないからな!」


「お金なんて賭けるわけないじゃないですか!あれですよ、アレ!」


「いや、どれだよ?」


「あれです!負けた方が勝った方の願いを聞くってやつです。」


 こいつ、こんなこと普段やってんのかよ。怖いよ!何か裏がありそうだし。


「せんぱい!やりましょう!」


「良いけど、そのかわり、願いは僕にできる範疇でだ!」


「それでいいですよ」


「じゃー、ゲームは何にする?」


「神経衰弱!」


「……」


 早ッ!即答かよ。さらに怪しいんだが……。


「良いよ、それで、でもシャッフルは僕がやる!」


「あー良いですよ、ついでに先攻も先輩にあげます!かわいそうですし」


 かわいそう?どういう意味で可哀そうなのかまったくわからない。とりあえずカードを並べよう。自分が暗記しやすいようにきれいに並べた。



<<数分後>>



 結果から言うと、僕は負けた。しかもボロ負けである。僕の取ったペアはゼロで、この忌々しい後輩のとったペアは、ジョーカーを含めた二十七である。しかも一ターン目で終了。


 どういうことだ?カードに細工がしてあるわけではなかった。それはシャッフルの時に確認済みである。しかし何かが変だ。


「お前何かしただろ!」


「失礼な!私はただ見えただけです!」


「お前、もしかして透視能力を?!」


「まぁ、私が見たのは未来ですけど……」


「……」


 まじかこいつ、勝ちたいからってそこまでするか?


 つまり、こいつは僕の未来を見て僕が引くはずだったカードをすべて覚えて、全部引くという作業をしたわけだ。可哀そうってそういう意味かよ。


「そんなのズルじゃん!反則だ!」


「でも先輩、気が付かなかったですよね?」


「納得いかねー!」


「勝負は勝負です!」


「……」


 悔しいが、反論するのも面倒くさい。こいつが、ここまでして僕に叶えて欲しい願いってなんだ?


「じゃ、お前の願いを一つだけ叶えてやろう!」


「なんか緑の龍みたいですね」


「うるせぇ!で願いは何だ?」


 そこで会話を遮るように、機内アナウンスが流れた。


「間もなく目的地に到着します。降りる準備をしてください。」


「それでは、願いは後にしましょう」



~ハワイ到着~



 ジェット機は無事に着陸することができた。パイロットの方にお礼をして機体から降りると、そこには一面に海が広がっており、星の光が反射するほどとても綺麗だった。


「どうですか?せんぱい」


「最高だな!泳ぎたい気分だ」


「じゃー泳いじゃいましょう!」


「え?おれ水着は持ってないけど……」


「大丈夫です。ここをどこだと思ってるんですか?」


「ん?ハワイだろ?」


「そうですが!さらにここはうちの私有地でありプライベートリゾートです!ある程度のものはそろいます!」


 そういって彼女は建物の方に目線を変える。つられて僕もそちらの方を見てみる。


「え?これ全部お前の家の建物?」


「はいそうです。」


 そこには、三階建ての家が建っており、彼女曰く別荘だそうだ。


「泳ぐ前に、まずはディナーにしましょう」


 そういえば、時刻は二十時を超えていた。夕飯のタイミング。早い家庭ならもうすでに終わっていてもおかしくない時間だ。


「そうだな、何か食べたい」


「建物の一階に食事ができる場所があります!そこに行きましょう」


「おぅ」


 言われるがままについていく、屋内に入ると僕が想像していた通りのまさに別荘というような世界が広がっていた。


 席に着いたと同タイミングで、お肉の香りがした。その正体が目の前に置かれる。


「お待たせいたしました、黒毛和牛のステーキでございます」


 どうしてハワイで黒毛和牛なのかは置いといて、とても美味しそうだ!


「お前、こんな料理いつ手配してたんだよ」


「あーそれは、学校から出た時です、ヘリと一緒に今日の必要なものすべて用意してもらいました」


「すごいな!あの時には既にハワイ行きは確定してたんだなぁ」


「まーそういうことですね」


 まさかハワイでこんな食事を取れるとは思っていなかった。富士山のように十分ほどですぐ帰るのかと思っていたが、そんなことも無く。もう少しだけ海外を楽しむことが出来そうである。食事を終えて食休みを取り終えた。


「では先輩、次は海ですよ!水着も用意してもらっているので着替えてきてください」


「おぅ」


「あと、花火も用意しているので期待していてください。」


「へー、そんなのも用意したんだ」


 結構楽しくなってきた。富士山に登った時はそれほど面白くなかったが、ハワイに到着してからテンションが結構上がっている。まぁ、恥ずかしいので、後輩には悟られないように少し抑えているが、もういっその事、楽しんでやろうかなぁ。



<<数分後>>



「先輩、やっときましたね♪」


「本当にプライベートビーチなんだな、誰もいないや」


「やりたい放題ですよ」


「お、おぅ///」


 ヤバイ、少し意識してしまった。当然こいつも水着なことを忘れていた。それにしても、制服だとそんなにわからなかったが、こいつも出るところは出ているんだな。着やせするタイプなのか?


「何顔赤くしてるんですか?もしかして、私の水着に惚れました?」


「いや、そんなことない……」


「ところでどうです?この水着かわいいでしょ?今年、初水着です」


「マー、インジャナイカナ」


 ヤバイ、意識を無にするんだ。未来以外の女子の水着で二人きりなんて初めてだから、ドキドキする。一応言っておくが、別にこの後輩にドキドキしてるわけではなく水着女子にドキドキしているのだ、多分。


「なんで棒読みで、目をそらすんですか!」


「いや、別に」


「どうでもいいですけど。先輩は普通ですね」


「あ?!」


「別に太ってもいないし、かといって腹筋も割れてないし、少し鍛えたらどうです?」


「余計なお世話だ!!!」


 本当に余計だ。僕だって筋トレをしたいが、いつも未来が家にいるから恥ずかしくて出来ない。なので筋トレは中学生の時に諦めたのだ。


「それより、海に入ろうぜ!」


「そうですね、せっかくですし入りましょう!」


 ハワイの海はとてもきれいで水の透明度が良い。今が夜なのであまりわからない。明るい時に入ってみたかった。海で泳いだり、砂場で城を作ったりした。一通り遊び終えて、ふと思い出した。


「そういえばお前花火があるって言ってたよな?」


「はい、言いましたよ」


「どこにあるんだ?そろそろやろ……」


 ヒュ――――――――――ッ。


 喋り終える前に、後ろの方から聞いたことのあるような音がした。まさかと思って振り返る。


 ドォンッ!!!


 音とほぼ同時に、とてつもない光がこのビーチ全体を照らした。こいつ正気かと思い、後輩の方を見ると、後輩はとても笑顔で叫んでいた。


「たーーまやーーーー!」


「いや待てッ!!!お前ッ!!!」


「ん?なんですか?」


「もういい……」


 突っ込むのをやめた。今はこの現状を最大限、楽しむとしよう。


 それから打ち上げ花火は、五分ほど続いた。僕らはビーチでやることを全部終え着替えるために別荘に戻る。


「お前、やるならやるって言えよ!」


「え?言ったじゃないですか?花火も用意してるって」


「いや、普通打ち上げ花火だとは思わないだろ!!」


「え?打ち上げ花火以外って何ですか?」


「……」


 本気で言っているのか、冗談で言っているのか、わからない。もう怖いよセレブと思い、そのセレブを黙って見ているしかできなかった。


 制服に着替え終えて、帰る準備を始める。実際泊まって明日も遊びたいが、学校があるのでそうは言ってられない。


「先輩、出発は二十二時半です」


「わかった」


「それまでは、ゆっくりしててください」


 今が二十二時なので、あと三十分は暇である。まぁ今日はハードスケジュールだったので、こんな感じのリラックスできる時間は大切だ。帰りは行きより少し時間がかかるので、ここでしっかり休憩しておこう。



<<三十分後>>



「せ・・ーい!・・・・ださーい!」


 どうやら眠ってしまったらしい。無理もないか。


「おー・、出・・・間ですよー!」


 寝ぼけているみたいで、あんまり何を言っているのか分からない。頭の下に枕のようなものがある。あの後輩が気を利かせて用意してくれたのかな?


「せんぱーい!時間ですよー!」


 !?一気に目が覚めた。どうやら出発の時間らしい。後輩が僕の顔を覗き込んでいる。


「あっ!やっと起きた!」


「お前何やってんの?」


「何って、膝枕ですけど」


「ありがとな!///早く行こう」


 速攻で飛び起きてしまった。照れ隠しで若干早口になってしまった。


「せんぱい!荷物荷物!」



~帰りの機内~



 さすがにこいつも疲れたらしく帰りは眠ってしまった。なぜか隣に座っているので、頭が寄りかかってきた。先ほどは寝顔を見られてしまったので、今度は見てやろうと思い顔を覗き込む。すると、こいつの頭からシャンプーのいい匂いがした。制服に着替える前にシャワーを浴びた時のだろう。少しドキドキした。


 ふと我に返り、顔が近いことに気づいた。自分は何をやってるんだと思い、僕も到着まで眠ることにした。そういえば、行きの機内で言っていた願い事が何かまだきいていないなぁ。

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