表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧な幼馴染と凡人な僕  作者: Kouga
一学期
10/20

十限目

 結局、家に到着したのは夜中の3時だった。後輩はいかにも高級車という感じの車で家まで送ってくれた。


「先輩、今日はお疲れ様でした」


「こちらこそ、楽しかったよ」


 楽しかったのは事実なので、そのまま伝えた。


 そういえば、まだ聞いてないことがある。願い事もそうなのだが、それはこいつ自身が忘れていそうなので、黙っておこう。それよりも大事なことだ。


「それで、今日の成果はあったのか?」


 軽く訊いてみた。今の段階でこの話が出ていないので、結果はなんとなく察しがついていたが、確認は大事だ。未来を変えられたかどうか。


「それは……ごめんなさい」


 聞こえるか聞こえない位の声だった。とても申し訳なさそうな顔をしている。


「謝る必要はないだろ。むしろこっちがお礼を言わなきゃいけないくらいだ」


「そう言ってもらえると助かります」


 結果はどうあれ、僕に協力してくれているのは、彼女の方なのだ。それに、何でここまでしてくれるのか、僕には分からない位だし。


「無料で海外に行けたんだ。文句なんてないよ」


「また他の方法を見つけてみます。おやすみなさい」


「ありがとう、おやすみ」


 そういって、彼女は帰っていった。いっその事、僕の未来攻略は彼女に任せてもいいかもしれない。それにしても、打ち解けすぎだろと思うくらい仲良くなった。僕ってこんなにコミュニケーション能力高かったっけ?


 とりあえず、学校まで時間があるので、僕はもう一寝入りすることにした。機内で寝たとはいえ、疲れはまだ残っている。親を起こさないように、なるべく音を立てずに部屋まで移動する。


「寝坊しないように、寝覚ましかけないとな」


 そんなことを呟き部屋に入る。部屋の電気をつけたとたん、それは杞憂に代わってしまう。


「なんでいんの……」


 それは、ベッドの上で寝息を立てていた。とても気持ちよさそうに眠っている。確かに帰るとの連絡はなかったが、まだ家にいるとも思わなかった。


「んー、おかえり」


 眠そうな目をこすりながら僕の幼馴染は言った。


「ただいま、なんでいんの?」


「えー、いっ君が帰りが遅くなるってメールくれたんじゃん」


「いや、待ってろって意味じゃねーよ!」


 メールになるとテレパシーは意味をなさないようだ。こんなにも伝わらないとは。


「ところでいっ君ハワイどうだった?」


「平然と頭の中読むなよ、てか僕今ハワイのこと考えてなかったんだけど……」


「いや、顔に出てるよ」


「いや、どんな顔だよ」


 一瞬、日焼けをしてしまっていたかと思ったが、僕たちがハワイについたのは日が落ちてからなので、そんなことは無い。それに場所の特定までは無理だろ普通。


「じゃ、富士山はどうだった?」


「……」


 もはや、テレパシーとは別の力だと思う。顔見ただけでどこに行ったのか分かるって怖すぎるんですけど……。


「まぁ、答えなくてもわかるけどね!」


「怖すぎるだろ!」


 なんだそのメンヘラな能力、僕にデメリットしかないんだけど。プライバシーの侵害だろ!


 そんなこんなで、最終的にいつも通り朝までこいつの話に付き合うことになった。



<<三日後(正確には二日後)、金曜日の朝>>



 あれから水木と学校にあの後輩の姿はなかった。水曜日は純粋に疲れて、ずる休みをしたのではないかと思っていたが、さすがに二日連続はおかしい。


 僕に顔を見せないだけで学校には来ているかもしれないと思い、彼女の教室に足を運んだ。クラスにいた、同級生と思われる子に話を聞いたところ、やはり学校には登校していないとのことだった。


「今日はいるかな……」


 僕が原因で学校を休んでいるのかもしれないと思うと心配になる。


「大丈夫だと思うよ。彼女もともと、さぼり癖あるし」


「でも今日も来なかったら三日連続だぞ。何かあったって考えるのが普通じゃないか?」


「何かあっても、いっ君にできることなんてないでしょ」


 確かに。何もないことを祈るぐらいしかできない。


 そう考えると自分の無力を痛感して嫌気がさすな。三日前の放課後も、結局僕は何もやっていなかった。


「今日いるかもしれないでしょ?確認してから考えても遅くはないんじゃない」


「そうだな」


 こいつも面識があるって言ってたから、僕の知らない事で心当たりがあるのかもしれない。昨日話を聞いた同級生の子も心配をしている雰囲気はなかったし、よくあることなのかも。


「そういえばおまえ、昨日はうち来なかったけど。なんか用事あったの?」


「……ちょっとね~」


「まぁ、何でもいいけど来ないなら来ないで連絡よこせよ。僕の親が心配してた」


「はーい」



~学校~



 結局、今日も学校には来ていなかった。昨日同様、昼休みに確認に行った。もし来ていたら、何かお礼をしようと思っていたのだが、それは来週に持ち越しだ。お礼は早い方がいい。


 午後の授業を流しながら受け、あっという間に放課後。いつも通りに元気な声で未来が僕の教室まで迎えに来た。


「帰るよー!!明日は休みだから昨日離せなかった分まで話すぞー!」


「勘弁してくれよ。僕の予定は無視かよ!」


「どうせ予定なんて無いでしょ」


 すごい笑顔でひどいことを言ってくる。今日はやけにテンションが高い。昨日離せなかった内容がそんなにあるのかと、思わせるほどに。


「予定はあるよ」


「えっ!!」


 これまたひどい反応だった。口をポカーンと開けて思考が停止している。こいつの驚く顔なんて十年ぶりくらいに見たぞ。


「おーい!聞いてるかー?」


 顔の前で手を振って確認を入れた。何をそんなに驚くことがあるのだろうか?


「だってさっきまで、いっ君の頭の中に予定なんて無かったのに!」


「そりゃそうだ。今立てた予定だしな」


「ほんとだ。段々と明日のプランができてきてる」


 容易に人の頭の中を読むのをやめてもらいたい。読まれ過ぎて普段から考えない癖がついたらどうするんだ。


「そしたら私が責任取るよ♪」


「そういうの好きな人に言えよな」


「いっ君はまだ私の考えを読むのは無理みたいだね」


「は?読めてたまるか!」


 人の考えが頭に入ってくるなんて面倒くさい。自分の考えだけでも面倒くさいのに。


「まぁ、いいや。それにしても、いっ君て優しいよね。ありがとう」


「いきなりなんだよ。気持ち悪い」


 どうして突然褒められて、さらにお礼を言われたのか全く分からない。人から優しいなんて言われたのは、生まれて初めてではないだろうか。


「だって、予定があるって言ってちゃんと私のこともプランに入れてくれてるじゃん」


 どうやら明日の予定をすべて見られてしまったらしい。確かに朝まで、こいつの話を聞く予定ではいたが、ほとんど強制みたいなものなので、優しさというより諦めの方が正しい。


「で、明日は一人で買い物に行くんだ。一人で」


「その悪意ある言い方やめてくんない?まるで僕に友達がいないみたいじゃん」


「え?いないじゃん」


「……」


 どうやら僕に友達は一人もいないらしい。畑本とか井上は友達にカウントされないのか……。悲しいな。


「どうでもいいから、帰ろー」


「どうでもよくない!」


 とりあえず明日の予定も大体立てたので帰って明日に備えるとしよう。いくら備えても寝不足は確定なのだが……、割り切るしかない。



<<翌日>>



 予定通り朝まで寝ずにこいつの話に付き合った。まだ話し足りなそうにこちらを見ているが、後日にしてもらおう。僕はこれから出かけなければならない。


「それ私もついていこうか?」


「いや、一人で行くよ。僕が選ばないと意味がないと思うから」


「そっかー、じゃー私も私のことしよっと」


 そういって、すぐ隣の家に帰っていった。やることあるならそっちを優先しろよ。


「僕も準備しよ」


 シャワーと朝ご飯を済ませ、家を出るころには十時になっていた。


 学校の道とは反対の道を十分歩くと駅に到着する。駅を中心とし、いろんな店が軒を連ねている。いわゆるショッピングモールというやつだ。


「さて、何を買おうかな」


 着いたはいいものの、買うものが決まっていない。まずは案内マップを見ることにした。


「案外広いな、案内なのに……」


 一日で足りるか心配になってきた。


 目的は一つ。月曜日にハワイへ連れて行ってくれたあの後輩へのお礼の品を買いに来たのだ。


「あいつ金持ちだからな、何をあげればいいかわからねー」


 本当は今朝、「私もついていこうか?」って言われたときお願いしたかった。未来もお金持ちだし、何より今時の女子高生が欲しいものを熟知している。


 それでも頼まなかったのは、僕が選ぶことに意味があるのが一つ、もう一つは未来と一緒に買い物となると、アニメ漫画専門の店に長時間滞在する未来が容易に見えたからだ。


「とりあえず、見て決めるか」



<<2時間後>>



 眠気と戦いながらなんとか目的を達成できた。あとは家に帰って寝よう。


「月曜日に渡せればいいんだけどな……」


 先週の後半、学校に来ていないあの後輩が月曜日に来ている保障はどこにもないので、今は来ることを祈るしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ