第3話 孤児
空が赤みが差し込む夕方になり。街の熱気は消えるところかさらに盛り上がってるように見える。おそらく仕事帰り買い物してる人の往来が増えたのだろう。この景色を見ていると世界が違っても同じように人の営みをしていくのかと、少しだけ寂しい気持ちが和らぎ、安心する。
店主から1000Rをもらい貧民街へ向かう途中に腹の音が鳴りはじめ、早く飯食わせろとうるさい。そうして歩いていると記憶の中から覚えのある匂いが漂ってくる。匂いの元を辿ってみると串肉の屋台を見つけた。
(あんまりお金使いたくはないけど、流石に荷物運びは疲れたからな。計算はいいけど荷物重すぎて割とつらい、異世界の食べ物も興味あるな、一本買ってみるか)
店に近づくと店主が警戒してこっちを見てる、完全に泥棒を見る目だ。
「すみません、串一本ください」
「うちはボルン牧場の肉使ってるから高いぞ。一本300Rだ」
(暗に金持ってるのかって聞いてるな。ポルン牧場って知らんけど有名なのか?)
「はい、どうぞ」
お金を渡すと店主はやっと警戒のを解き、焼いた串とお釣りを渡してくれた。
店を後にしてすぐに肉汁が滴る串を齧り付く。
(旨すぎる、こんな肉日本でも高級店しか食ったことないわ。肉が柔らかく肉汁が口の中で溶けて体に染み込んでいく)
旨そうに食いながら歩いていると、犬耳のついた10歳前後の獣人が後ろからついてくる、格好からして孤児に見える、目は完全に肉に釘付け。手を左右に動かすと目も釣られて動く、昔飼った犬を思い出す仕草で可愛い。
「肉串がほしいのか? 君名前は?」
そう聞くと犬耳は自分の目が肉に釘付けになってることに気付き少し顔が赤くなる。
「名前はイラーリ、肉くれるのか?」
名前を答えると目をキラキラとさせながら肉を見つめている。
(流石に渡さずに立ち去るのは人間としてはよくない。金はまだ残ってるしまた戻って買えばいいか)
「ほら、一口しか食べてないから残り全部やるよ」
そう言って渡すとイラーリの喉からゴクっと音がするが、よっぽど腹が減ってるようだが食べようとしないで見つめるだけだった。
「なんだ、たべないのか?]
そう聞くとイリーナが頭を振ってこっちを見て答える。
「……家に仲間2人残ってるんだ、あいつらに食わせてやりたい。」
それを聞くと目の奥からジンと涙が少し溢れてくる。こっちに来て一日いろんな人からぞんざいに扱われると心に沁みる。自分が辛い時に仲間のことを忘れない、正直自分ができるのかと言われると自信がない。目頭を抑えながらぽつぽつと言葉を零す。
「ちょっと待ってろ。新しい串も買ってくる」
返事も聞かずに走って店に向かい串を2本とパン1つを買ってイラーリもの元にもどる。
「ほら、仲間の分串だ」
イラーリは驚きながら串を受け取って、何故という表情浮かばせながらこっちを見つめてくる。
「いいのか? ありがとう、兄ちゃん?」
「いや、名前はアルスだ。それより冷めると味落ちそうだから早く食べて」
そういうとイラーリは少し迷いながら一口少ない串に齧り付き幸せそうな表情を浮かべながら、こっちの目線に気づくとハっと驚き、顔を赤くしながらごもごもとしながら聞いてくる。
「アルスのにいちゃんは孤児なのか?」
金を持ってるから孤児じゃないかもと勘違いされたか。
「今日泊まるところもない孤児だよ」
「じゃ、うちに来て。お礼に泊めてあげるよ、ほらついてきて。」
そう言って俺の手を引っ張りながら歩き出す。しばらく貧民街を歩いてあばら家みたいな所着くと。
「ここ家だよ、家主いないからただで住んでるんだ」
あばら家を見ると、大きさはそれなりにあるが屋根も壁もボロボロでとても人が住めるとは思えない。
(孤児って逞しいな、まあ、こんな家でお金を取ると誰も来ないだろうけど)
家の中に入るとイラーリより少し幼い孤児二人が寄ってきて、イラーリが手に持ってる肉串に釘付けとなり。騒ぎ始める。
「おおすげー、肉串を盗ってきたのか? あそこの店主警戒すごいから一回も成功したことないんだよな」
「肉のことよりそいつは誰だ?」
イラーリの仲間二人は人間とエルフの男の子みたいだ、エルフの子供は警戒してるようだった。イラーリは少し困ったように微笑二人に答える。
「肉はここにいるアルスの兄ちゃんが買ってくれたよ、私はもう食べたから二人とも食べて」
そう言って二人に肉を渡すと人間の子供がすぐに齧り付きに食べ始めるが、もう一人のエルフは少し肉の匂いを嗅いてからゆっくりと食べ始める。
「ほら、二人ともお礼と名前言わないと」
すると、すぐに人間の子供が人懐こそうに話し始める。
「俺シーク、もぐもぐ、うめー、肉ありがとう、にいちゃん? 兄貴?」
シークは肉を食いながら話す、バカ可愛い。目線をエルフの子供の方にに向けると、口の中の肉を飲み込み。
「ウィズです、肉串ありがとうございます」
お礼を言いながら目はかなり警戒しているのがわかる。
(この子はしっかりしてるな、イラーリは人よさそうだしシークはバカぽいから苦労してそうだ)
「今日はアルスの兄ちゃんが泊まっていくから」
イラーリがそう言うと、シークは特に気にしていない様子だが、ウィズは警戒の色をさらに強めるが口には出さない。
「アルスだ、今日一日頼むよ。危害加える気とかないからそう警戒しなくても大丈夫だよ」
パンを齧りながら今日一日のことを考えながら、イラーリとシークが楽しそうに話すのを見て家族のことを思い出した。