第2話 港町
東の港町へ行くとちょうど鐘が鳴り、昼を報せてくれた。
港町には沢山の人々と色んな人種がごった返しになって凄まじい熱気を感じてしまう。ドワーフにエルフそれと色んな耳と尻尾の生えた獣人達がいる。街の様子は現代日本と違った、西洋風の建物がズラリと並んでいる。そして人の髪や眼の色が違うことに気づいた。ここには俺の知らない未知なものが溢れている。
「ここが異世界か!」
熱気に当てられて、思わず口に出した。
それから俺は何軒も雑貨店を尋ねて見たが、俺が孤児だとわかるとすぐに追い出されてしまった。雇ってくれる所は無かった。どうやら普段から孤児達が店から物を盗っているらしい。酷い所だと石を投げてくる店主も居た。
諦めたら試合どころか命すら終了するので、めげずに仕事を探していると、カンカンと何かを叩く音が聞こえた。
どうやら新店舗みたい、これはビックチャンスかもしれない、新店舗なら人手は足りないはずだ。倉庫は完成して、店舗の方も7割方完成しており、規模もそこそこ大きい、もうすぐ開店する様だ。
逸る気持ちを抑えて服装を整えて、顔をパンと叩き、気合いを入れて店の前に立った。
「店主さんはいらっしゃいませんか?」
「店主なら倉庫の方に居る」
俺は声張り上げて聞くと、建設中のドワーフから怒鳴り声が聞こえた。
(ドワーフ声が大きい、まあカンカンとうるさいからな)
倉庫の方に行くと何人も男が居たが、服装が一番高価そうな男に話をかけた。
「店主さんでいらっしゃいますか?」
「そうだが、何か用か? 店は開いていないからまだ何も売れないぞ」
店主は俺の格好見ると客ではないと察したのだろう、威圧的な眼を向けてくる。早く話を聞いて追い返したいと思ってるようだ、。周りの従業員達も俺が店の物を盗られない様に見張っている。
「雇って欲しくてここに来ました。名前はアルス、字は読めませんが計算はできます。荷物も運びますのできっと役に立てます」
「計算できるのに字は読めないのか。ふむ、では20箱の荷物、一箱17金貨なら幾らだ? 但し一箱だけ5ゴールドだ。答えられたら雇ってやろう」
にやにやした顔で問題を出して来た、周りの従業員達もにやにやと笑ってる。
「328ゴールドです」
店主の眼を見て答えると、店主は明らかに驚いていた。周りも疑いの眼を向けてくる。
「ちょっと待ってろ、計算盤で計算してくる」
(どうやらこの世界の数学はあんまり進んでいないらしい。この程度で機械を使うとは、この世界の人間は計算能力高くないのかな? これなら雇ってもらえそうだ)
少ししてから戻った店主は驚いた表情で聞いてきた。
「正解だ、どうやって計算した? 計算盤を使っていないのに」
すると周りの従業員達が「おお、すげー、」とざわざわしてる。何人かは頑張って暗算してるみたいだ。
「340から12引いただけですよ、簡単でしょ?」
(やはり俺の計算能力はこの世界では凄いらしい、少しでも自分を高く売るために如何にも簡単そうに答えた)
その瞬間店主の眼はまるで獲物を狙う眼に変わった、それを見て背中が少し寒気が走る。だが、すぐに優しい目にかわった。
「面白い子供だ。よし、商人は信用が大事だ、雇ってやる。丁度人手は足りて無い、こいつらも殆どがこの街にいる友人達の店から借りた人手だ。開店したら人手は友人の所に戻る、信用できる人は少ないからな。そうだな、お前はまだ子供だから金額は半分が普通だけと計算できるから上乗せして7000R、少しずつ給料上げてやる。今日も終わりが近いから給料やらないけどな、質問はあるか?」
「仕事の内容とか聞きたいです、後仕事は毎日ありますか?」
(ここは大事だ、あんまりキツイ仕事だとこの体もたないかもしれない。仕事が少ないと稼ぎも少ない、しっかり確認しないと)
「仕事の内容は港に運ぶ色んな荷物の整理、指定された場所に置けば問題無い。中身の数とか、不良品の有無か、それとお前だけは入って来た商品の値段教えるから金額を後で報告しろ。商品によっては給料が違うからな、しっかり覚えろよ。その為の上乗せだ。仕事は6日ある、船は週一来るから一日だけは休みがある」
(どうやら輸出の商会だ。まあ、納得の話だ。多分計算できないと雇ってもらえなかっただろうな。6日か、5日で終わると給料は減るのかな?)
「仕事を1日早く終わっても給料は変わらないですかね」
すると店主はニヤリと笑いながら答えた。
「この仕事は基本少人数でやるんだ。仕事を早く終わらせても6日の給料払う、むしろ給料を多く払うぞ。倉庫の空きが早く分かれば商談の量も調節しやすいからな。アルス期待してるぞ」
それを聞いて周りの従業員達もおおと声を上げる。
(どうやら他の店には無い制度だ、そしてさっきニヤリと笑う理由が分かった。ここに来てる従業員は計算があんまり出来ない、おそらく友人の店からの偵察だ、商品の金額が分かれば商談の時には有利になる。友人はライバルでもあるんだ。この商人は相手側から来てる従業員を引き抜くつもりらしい。信用は大事と言ったのも引き抜きを見越しての発言、孤児の俺にすら約束守る。そのこと見せることで信用を得た。ならここは少し気の利いた事を言っておこう)
「ありがとうございます、私のような孤児にこんな好待遇を約束してくれるなんて。しかも仕事を早く片付けたら他の仕事もやれば、単純に考えて給料は倍になるかもしれない。本当にありがとうございます」
そう言いながら何度か頭を下げた。すると周りの従業員達が給料が倍になると聞いて目の色を変えた。
「ふははは、アルスお前は面白いな。でも仕事は真面目にやれよ、雑な仕事すれば給料減らすからな。今日は少し働いていけ。もうすぐに夕方になるから1000Rを出そう」
それから少し働いてお金もらって、またスラムで寝所探す為にウロウロしないといけないと考えると憂鬱になる。




