第10話 真実
ご飯を食べた後結局スープはもう2鍋ほど作り、ソーセージを全部使ってしまった。半分はクリス一人で食べたのではないだろうか、具沢山でスープを作ったというのに野菜はかなり残ってしまった。
(ここで作った人間としてはしっかりと感想を聞かないといけないな、決して美味しいと言われたいわけではない)
「美味しかったか?」
そう聞かれた4人は感想を述べていく。
「私はもうここから離れられないわ、毎日こんなおいしい物をお腹いっぱい食べれるのはこんなにも幸せなのね。アルス君との出会いは運命だったんだね。」
クリスはテンション上がりすぎてもはや詩になってる、この人は食べ物になると人が変わるな。
「昨日高級店で食べた物にも負けないぐらい美味しかったよ、私と同じ素材使ってるのに」
イラーリはどうやら自分の作ったものと比べてるようだ。だがしかし、野菜を一緒に煮込むのと素材を分けて入れるのはかなり味が変わる。
「旨かった、明日からずっとこれが食べられるんだろ? すげーよ」
シークは明日も旨いものを期待してるようだ、だがしかぁし、明日はもっと旨い物を食わせてやろう。
「美味しかったよ、この料理を使って商売するんだね? 仕入れもこの野菜ならかなり利益が出ますね」
ウィズはどうやら商売の話を覚えていたようだ。だがしかしぃー、このスープに足り物がある、それに野菜も新鮮なも物を使う。
「料理を使って商売するのは正解だ。しかし作ろうとしたもっとおいしいスープだ、今日のような野菜は使わずに漬物にする」
(やはり美味しいと褒められるのは嬉しいものだ)
もっと美味しいスープと聞き、クリスは味の想像がつかないのかフリーズしてしまった。
イラーリとシークはどんな味なのか迫ってくる、ウィズは気にしてないとクールな振りをしているがしっかりと聞き耳を立てる。
「秘密だ」
シークは「えー」と不満を零すが、イラーリとウィズの耳はペタンと落ち込んでしまった。かなり期待してるのは嬉しいが、異世界の人たちの口に合うのかわからない。
「そうだ。クリスの魔法を見せてもらおう、みんなも見た事無いだろ?」
仕方ないのでここは一番うるさいシークの追及を躱すためにクリスを話題にしょう。シークも魔法が見たいからとすぐに食い付く、クリスも俺に揺らされフリーズから立ち直る。
「え? 魔法が見たいのですか? いいですよ。」
クリスは何てことないように手の上に雷を作り出す、雷はクリスの意思によって三角や丸と形をどんどん変えていく。4人は意識を吸い込まれるように雷を見続ける。
「綺麗だ」
思わず口から言葉が零れる、3人も同意を表明するように頷く。
「これって雷の魔法?」
クリスはきょとんとしたあとに首を振る。
「雷の魔法は聞いたことないですね、これは光魔法ですよ。」
「え?でも今操ってるのは雷でしょ?」
4人とも頭を傾ける。
「雷ってなに?光魔法は第一段階の攻撃魔法と第二段階の治癒魔法しかありませんよ?」
どうやら認識の違いがあるらしい、この世界の人にとっては雷は光なのだ。確かに光っているから光と認識してもおかしくない。
「初めて見たから、咄嗟に雷って名前を付けちゃったみたいだ」
かなり苦しい言い訳だが4人は特に気にしなった、クリスは3人にちやほやされて嬉しいのか魔法について詳しく話し始める。
「魔法使える人はこの国には100人ぐらいしかいないんだよ、そのうちの一人が私。すごいでしょ?」
クリスのすごい自慢に3人はぱちぱちと拍手する。
「何でそんなに少ないんだ? しかも魔結晶は100万Rと割と安いんだろ?」
疑問をぶつけるとクリスは自慢するように話し始める。
「実は魔結晶を見つけるのは殆ど冒険者なんだよ、更に下位魔結晶が多いから魔法を第二段階まで昇華させる前になくなってしまう人が多いの。生き残った者はさらに強くなろうと魔石結晶を求めて戦うから、その中でさらに生き残った者は何種類も魔法を覚えるので本物強者になる。ここまで強い人はもうこの世界には5人もいないんじゃない? そこまで強くなってしまうと国に縛られて兵器扱いされるわ。
魔結晶が安いのは国同士の協定とギルドが意図的に安くしてるの、安いと売る人が減るでしょ? その分冒険者が自分に使うから魔法使える人間増えるの、どの国も戦争で魔法使いが欲しいから必死なの。それに100万Rはギルドの買取金額、ギルドが売る時はオークションで100倍以上で貴族達に売ってるわ。
協定は見せかけみたいなものね、裏では強くなった冒険者の引き抜きや誘拐なんて頻繁にある。魔石結晶を手土産にほかの国で金持ちになった冒険者も少なくないわ、魔石結晶を盗るなんて当たり前のようにやってるわ」
思った以上にややこしい話だった。
「それならクリスは貴重な魔法使いなんじゃないか?」
クリスは俺の頭を撫で、話を再開する。
「アルスは本当に賢いんだね。私の爺様は枢機卿だったの、でも権力闘争に敗れてしまって。一族で残ったのは魔法を遺伝出来た私だけだった、豚と結婚させられそうになって逃げたしてきたのが本当の話。現ラッカード会長が爺様と仲が良かったから匿ってもらったの。ここまで逃げてきたけど面白い子がいるってマーチャに聞いてから一芝居を打ってもらったの」
(なるほどね、結局俺はマーチャに騙されたわけか。これで俺はラッカード商会の秘密を知ってしまった、しかもクリスより強くない限り寝返った瞬間に消される)
「そうか、これからどうするんだ? やりたいことはないの?」
これからのことを聞かれたクリスは首を振る。
「これからの事なんて考えたくない、やりたい事も特にない。強いて言うならアルスの美味しいご飯を食べたい」
クリスはくすっと笑って曖昧に答えた。
「任せろ、死ぬほど食わせてやるよ。お前たちはもなんかないのか?」
そう言われた3人は少し悩んだが、一番最初に答えたのはシークだった。
「俺は魔法使いになって強くなる」
シークは胸を張ってどこか誇らしげだった。
「ならいつか魔石結晶をたくさん買って最強の男になれ」
次にウィズが恥ずかしそうに話し始めた。
「文字と算術を覚えてたくさんのことが知りたい」
ちいさい、どうせ言うだけならタダだ。
「そうか、ならこの世界にある本すべて集め図書館作ろう」
イラーリに目を向けるとイラーリは困ったように話し始める。
「私はこれからみんながただ幸せ過ごせれば一番うれしい」
(イラーリはいい子だな、でも最後はでかいことを言ってほしかった)
「そうか、お前たちをこの世界で一番幸せにしてやる、だから」
一息をつき、この一言いえば俺はこの世界で生きるという決心をつけないといけない、こいつらに責任を持たないといけない。
「俺についてこい、たとえ俺が死んでもお前たちを守ってやる。今日から俺のことを家族だと思えばいい、俺を頼ればいい」
そう言われた4人は頷くだけだった。
「俺たち家族がやりたいことのためにまずは料理を完成させて、金持ちになろう」
深夜になり、みんな寝ている頃。
急に眼が冴えて外に出て夜空を見上げた、どうやら今日は星が出ないらしい。月は不気味な緑色だった、ここが異世界なのだと改めて思い知らさる。
夕ご飯の後にことを思い出す。
(俺についてこいとなんて言って、まるであいつらだけの為に言ってるようで違う。結局は寂しかったのだ、一人でこんな世界に放り出されて不安だっだ。だからあんなことを言ってしまった。そして言ってしまったなら約束を果たそう。命を懸けて本当の家族のように守ろう)
そう決心して、寝所に戻り静かに眠った。
ーー???--
(暗い、何も見えない。何も思い出せない、ここはどこだ? 俺は誰……あ、そうだ。あいつだ、全部あいつのせいだ、憎い、許さない)




