第4話 新天地
コンビニで車のエンジンが音をたてなくなり、降りると目の前には予想していた通りの田舎の風景が広がっていた。
ポケットからスマホを取り出して所在地を確認しようとすると、何故か位置情報が狂っていた。矢印がぐるぐると周り場所が北シベリアとおかしなことになっている。
「これ、どうなってるんですか」
俺達をここまで連れきた運転手に問うと、SFなどでしか聞かないような返答が返ってきた。
「場所がわからないように妨害電波を流しています」
「何故そんなことを?」
「下っ端の私には上の事はわかりかねます」
そう言いっていると、荷代からまた彼が出てくる。つまり今目の前には二人の同一人物がいるということである。大同小異なだけかと思っていたが、肩幅や身長、それに唇の上に黒子があり、全たくと言っても相違点が無いのだ。まるで本当の分身かのような印象を受ける。分身したと言われればそのまま信じてしまいそうなほどに似ているのだ。
「驚いていますね。これが私の契約主、ドッペルゲンガーです」
「そうですね。いかにも私が彼の主、ドッペルゲンガーと申します」
「喋り方や声質も似るんんですね」
「それはドッペルゲンガーですから」
そうよくわからない理由で納得をしたが、疑問は残った。
とりあえず自分の家なのか寮なのかは知らないがそこに向かうとする。私的には家のほうが何かと自由があってありがたいのだが。そうして再び車へと入りコンビニから出る。その後は高速を降りて、田んぼや民家がまばらに存在している場所を抜け通った。
学校のような場所で再び車が止まりナビが目的地ですと告げる。コンビニでは昼寝をしていたマラがむくりと起き上がった。起き上がったと思うとこちらに体を向けて急に抱きついてくる。
「ついたのか。私を暇にさせた罰だ、この状態で今日の残りは過ごせ」
「別にいいが、それはお前自身も困ると思うぞ」
「大丈夫だ、問題ない」
胸を張りながらそんな事を言うマラを横目に、俺は運転手に目を向ける。
すると車の荷代から何故か筆箱と数冊のノートだけを渡された。
「今から教室に行っていただきます。入学式は明日のですので最低限の荷物は置いてきてください」
何もわからず突っ立ていると運転手は車に乗り込みエンジンを付けた。
「では駐車場で待っていますので」
そうして車は排気ガスをチラしながら駐車場へと向かっていく。
駐車場ってどこだよ。そう思いながらおんぶをしているマラをどうにか振りほどこうとしたが無理だった。面倒だな。
自分の体重ともう1人分の体重を受け止めながら右足、左足と前に進める。腰に負担がかかているのがとてもよくわかる。明日は腰痛になりそうだ。迦微でも体重はあるらしい。
無礼な事を思いながら校舎へと入り、靴を脱いでスリッパに履き替える。本当は内ズックだろうが、如何せん今はないので来賓用のスリッパを使わせてもらおう。
スリッパを履き自分の教室へと向かう。場所は校内にある地図を使い最上階、四階にあることがわかった。因みにマラは基本宙に浮かんでいるためスリッパを履き替えることなどせずに生活できるようだ。最低でも地面から2センチ浮いているらしい。
「何階だ」
「四階」
透き通るような髪をなびかせながら階段を登る、どちらかといえば昇ると表記したほうが良いのかもしれない。マラが先に階段を登ってその後ろを追いかける形で階段を一段また一段と足の上げ下げをしながら上と向かっていた。
階段や外装、壁、廊下などは比較的新しく、木々でできていた木造の古風のある学校ではないことがわかった。国が管理をしているから当たり前と言ったら当たり前なのかもしれないが。
そんなことを考えながら階段を登り終えて四階にたどり着くとそこには職員室とかかれた標識の文字が目に入ってきた。そうして後ろを振り向けば巨大な窓ガラスが山の向こうに沈みゆく太陽のオレンジレッドの光を自分の身体、学校の校内へと透き通らせている。
「なに夕日に見とれているんだ。早く教室に行くぞ」
マラに物理的に後ろ髪をひかれ毛根を傷ませないようにと振り返る。ハゲには極力なりたくないのだ。
教室へと足を運ぶと、そこには教卓が一つと生徒用の机と座席が5つ並べあった。
「...ここが教室で間違いないよな」
「そうだと思うが、生徒が五人とは。随分と少ないな」
廊下の標識を見れば1年と書かれているのは他に4つほどある。
扉のガラスから覗き見てみるとそこにはびっしりと並べられた机と椅子があった。ざっと25席ほどだろうか。えらく格差があるように思える。
「なんだこの差は」
マラが頬を膨らませながら抗議をするが、これを設定したのは俺ではないため何も返答ができない。
自分とのクラスの差に絶望を感じていると、ポンと頭を何かで叩かれた感触があった。
「どうしたんだマラ。何かあったのか」
そう言いなが横を見るとそこにはマラがおり、後ろから何かで叩くのは不可能ということが示される。そもそもマラは最初から手に何も持っていない。
では誰が叩いたのかと不思議に思い振り返ると、そこには黒髪ロングの出席名簿を持った女性がいた。しかもこのご時世に何処かタバコ臭い。
「君は私の教室の生徒だろう」
「えっと、誰です」
「誰って聞いてないのか。私が君の担任なんだが」
「そもそもこの学校の関係者に会っていないですけど」
数秒の沈黙が場を支配したあと、目の前の女性は手を頭に当てて悩んだように顔をしかめた。
「たっく、あいつ。説明省きやがったな」
誰かわからない人に不満を漏らし始めたので話について行けずにいるとマラが代弁をしてくれた。
「ところであいつって誰なんだ」
「ああ、そうか。言ってなかったな。君たちをここまで連れてきた運転手だよ。ほらドッペルゲンガーの」
「あいつか」
「さっき駐車場に車停めてるって言った人ですよね」
「そーうなのか、私もついて行っていいか」
「ご自由に」
そう言うと名前も知らない女性、担任と名乗る人は会話を切った。
他にやることもないので自分のクラス内に入り自分の机を探す。
マラが背中から抱きついているので机
にあたらないように配慮しなが探す。いらないことに神経を使っているので疲れが溜まる。
先生は教室の扉から僕達を見守っているようだった。




