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第3話 誘拐まがいの行き先

ガタゴトガタゴトとトラックと同様に体が上下する。俺とマラは未だにトラックの助手席とと言われる場所で身動きが取れないでいた。先程の人は運転席に乗りハンドルを握っている。そういえば、もうひとりた人物はどうしたのだろうか。助手席には自分が乗っているため、あと乗れる場所としたら荷代ぐらいである。



「どこに向かってるんですか」



 とりあえず行き先を聞いてみる。別にもうこの際、拘束をされていることには諦めよう。だが行き先は知って置かなければ不安が募る。上に座っているマラに当たらないよう顔を男へと向ける。マラは基本、というか神(迦微)や妖怪などは触れようともしてもそのまま空を切るが、人体の内臓から話をするのにはやや抵抗感が湧く。第三者視点から見たとしたらとてもグロテクスに映るだろう。


 男の人は口にホープを加えながら片手でハンドルを握っている。



「...某山奥の地域全体、とだけ伝えておきます」



 端的に言い終え、男は意識をまた道路へと向ける。


 山奥の地域、地域ということはそれなりの大きさになりそうだがどれほどのものなのだろうか。施設だから大きくても学校ほどの大きさだと思っていたが、どうやらそれはハズレのようだ。



「暇だ」



 そう言ってマラが足をばたつかせる。勿論実態は無いので車の内装に当たったとしてもすり抜けている。だが膝の上で足をばたつかせているのでこちら側としてはとても面倒だ。行動がうるさいとはまさにこの事を言うのだろう。



「少し落ち着け、こっちが迷惑だから」


「なら私を少しは楽しませろ。それが眷属の役目だろう」


「わぉ、率直なパワハラ」



 うるさく思ったのか、誘拐犯が視線をこちらに向けてくる。ただその目には脅迫をするような意思ではなく、羨むような憧れるような視線だった。男は口をもごもごとさせて、口を開くがされど言葉は出てこない。それは喉でつっかえているように喉にとどまっているのだ。粘り気があるようなそれは男の喉から出ることを拒んでいる。


 彼の立場故に出てこない、出してはいけないのか、彼の性格故か、もしくはその両方か。どちらにせよその言葉が出てくることは無いことだけはわかった。


 このときにその言葉を取り出すほどの会話の術があればよかったが、生憎と自分はそのような特技を持ち得ていなかった。理由を聞かれれば、今、自分の膝の上で暇を持て余して首が長くなりそうな迦微の仕業としか言いようがない。日中は学校のためかまってやることができないため、決まってそれ以外はこの面倒な迦微との会話をしなければならないのだ。そもそも自分が交友関係を築こうとしなかったというのも起因していそうではあるが。



「早く面白いことしろ」



 そう言ってマラは体制をこちらに向ける。ただ依然として紙に隠された素顔は拝むことができないようだった。この迦微と暮らしてまだ一度も素顔を見たことはない。そもそもあることすら怪しいが、流石に迦微にも顔はあるだろう。



「できれば車内ではお静かに、でなければ眠らさなければいけません」


「あ、すいません」


「とはいえ、あと十分後には眠りについてもらいますが」


「え、」


「着た道は知られないよう上から言われていますので」


「そうなんですか」


「...貴方と貴方の迦微様の関係には少し憧れます」



 喉につかえっていると思っていた発せられた。その衝撃に俺は少なく駆らず目を見開く。きっと言わないままだろうと思っていた。自分自身も聞き出そうとしたが、そこまで動きを見せたわけでもなかった。つまりは今のこの言葉は彼自身の決心で発せられた音の波動だった。



「なんだ急に」



 即座に反応を見せたのはマラだった。紙で顔を隠しているがその声はやや不機嫌であまり生のものの発音ではなかった。



「私はこいつに面白いことをしろと言ったんだ」



 マラはそう端的に言うと俺の方へと視線を戻す。このやり取りをするのがはじめてであるが故に狼狽える。ただ面白い事をする人間であれば良いのだと思っていた。自分への執着に対して少し面倒さが胸に立ち込めた。



「俺はやらんぞ。面白いこと」


「何故だ。これは義務だぞ。願いや命令などではない」


「そんな義務があるなら俺は眷属を辞める」



 目を腐らせながら拒絶を示すとマラは畏怖の表情を浮かべる。顔が見えて無いので憶測ではあるが。そうして引きつった声で弁明をする。



「っ流石に、冗談のつもりだった...。だからやめないでくれ」


「辞めるのには契約者の同意が必要だったんじゃないのか」


「...命を落とした場合は特例になる」


「それは早く言ってくれ。それに俺が自殺するとでも思うか」



 数秒の間の後、マラは行き良いよく首を縦に振った。それを見て俺は自身への謎の信頼感を抱いているマラに冷たい視線を向ける。それと同時に、子供の戯れを見る親のような目線を横から感じる。



「マラ、茶番はもういい」



 この人も仕事をしている労働者。心が荒むことがあるのだろう。だからこそ、この俺達の関係に憧れる。もう戻れはしないあの頃に。もっとも、元からありはしないこともありそうだが...。それはあまり考えないでおこう。ただの時間の無駄だ。



「茶番などではないぞ」



 そう言ったマラは至極当然のように告げる。一瞬殴りたくなったのはここだけの秘密だ。





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