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第2話 変わった日常

「はぁ~」


「どうしたんだ。ため息とは珍しい」



 中学最後の下校時間、俺は深いため息をつきながら帰りの道を歩いていた。まだ冬の残り香があり、肌寒さを感じさせる。厚着をしているというのにどこの隙間からか、外の空気が服の中に入り込んできているようだ。



「何でか自分だけ違う高校に飛ばされるのが嫌なんだよ」


「そうなのか?他の奴らも散り散りになるだろうに」


「マラ、確かにそれはそうだが何故か俺だけ県外の山奥の高校なんだよ」


「それはお前が私の眷属だからな」



 どうやら何かしらの眷属の者とやらは、日本ある一点に集まり集団生活を送らなければならいらしい。これは日本に在住する対象者全員が強制的に行わなければ行けない。どうやら自分の他にも神や迦微、あとこれはマラ聞いた話だが悪魔や妖怪、神獣とも眷属の関係を持てるそうだ。その意味では危険な存在を監視、隔離するための機能とも言えるだろう。


 因みにどうやって契約を交わしたのかは分からない。ある日突然、家のポスト入れに国から戦争時の赤札のように入っていたのだ。勿論断ることは不可能で、一応入学試験をしたがほぼ意味は無いだろう。



「なら眷属をやめてもいいか」


「それはだめだ。今の私はお前の信仰心によってギリギリ存在できている。今、眷属を失ったら私は消えてしまうからな」



 そうマラは素早く話に食いついてくる。



「俺はお前を信仰したことなんて一度もないがな。...無神論者だし」


「眷属がいればそれは信仰をしているという判定になるからな。あと眷属を止めることは契約をした者の承諾がないと無理だぞ」



 早々に考えていた事を潰されてしまった。あわよくばネットやらで契約の解除方法などを調べて試すつもりだったが。いや、そもそもそんな事は記載されていないだろうし、されていたとしてもペテン師の詐欺記述だろう。


 足を機械のように一定のリズムで動かす。マラは自分の周りを海で浮き輪をしているかのようにぷかぷかと浮遊している。なお、マラのことは他の人には見えない。まだ他の眷属者に会ったことが無いから知らないが、彼ら彼女らの主人は視認可能なのだろうか?もし可能ならばこの苦痛とも呼べる生活も少しはましになるだろう。



「何が苦痛なのだ?」


「人の脳内を一々覗き見るな」



 何故か考えていることをマラに把握させれながら苦言を呈す。このやり取りも認めたくはないが日常の一部と化してきていた。



「一般人にはお前のことが見えないだろ。だからいつも人がいるときに話しかけられると面倒なんだよ」


「面倒?どこが?」


「知ってるか、俺、他人から見たら虚空に喋っている変な奴扱いを受けてるの」


「お前は元から変な奴だから変わりないだろ」


「何だと、平手打ちが良いか拳骨が良いか選ばせてやる」



 そう言って俺は手のひらをマラの顔に近づける。するとマラは俺の手を取って頬ずりをしてきた。最初にあった頃はもっとこう威厳があったのだが、今はもうその影を拝むことすら無い。



「普通に恥ずかしいことを平然とやることに驚いているよ」


「昔はみんなやってたぞ」


「昔っていつだよ」


「...記憶混濁中」


「逃げるな」



 そんな事をマラと話をしながら歩いている、とようやく我が家が見えてきた。しかし、自分から見える視界にいつもとは違う違和感を覚える。無視しようともできないほどの違和感だった。マラもそれに気づいてか目を大きく開いて先程まで開いていた口を閉ざしている。


 端的に言うと家の前に引越し業者のような大きなトラックが止めてあった。軍用と言っても通じるような重厚感のあるものでところどこが夕焼けの光にてられされて光沢を放っている。玄関の扉が開き、遠目でよくわからないが恐らく俺の部屋にあったであろう家具を持ち出し荷台へと運んでいる。



「...は!」



 目に映されていた映像に気を取られたが、ふと我に帰り勢いよく駆け出す。その背中をマラも少し焦った様子でついてきた。


家の前につき、俺の自室から物を運んでいるトラックの運転手らしき人に声を荒げる。



「か、勝手に何をやってるんですか」


「...貴方がこの家の息子さんですか」



 一瞬、人を見定める目を向けれ、返ってきたのは真冬の鉄のような冷めきった冷徹な言葉だった。まるで感情を持たぬ機械、人間という生物に対して一切の感情を向けない、向くことがないと言わんばかりの目つき。その男は手に持っている家具を地面へと置き胸ポケットから四回ほど折りたたまれた紙を取り出す。それを数秒眺めた後、また先程のような目線でこちらを伺う。その目線に内心冷や汗をかきながら彼の目を見つめ返す。そうして次に本来ならば誰も気にしないはずの虚空を見つめる。一般人なら気にすること無い空間。そう、マラのことを見つめているのだ。見つめるというよりかは検閲、確認のほうが正しい表現かもしれない。ともかく2回ほどその行動を繰り返した男は最後にまた俺の方を向く。



「貴方には国の強制収容機関に入ってもらう」



 そう言った男は素早く抵抗を許さぬ動きで体を拘束しトラックの助手席へと無理やり詰め込んだ。マラは何か動けないのかそのまま俺の膝上に載せられる。それと同時に鼻と口にハンカチを押し当てられ、そ


こからの意識が無いのだった。



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