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勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
三国武道大会編
32/43

第30話 見回りと迷惑

第30話 見回りと迷惑





・商店街


 予選から数週間がたった。


 今私は、仕事で商店街に来ている。


 何故なら


「クレープいかがですかー!」


「そこの坊主達! クジやってくか!!」


 あちこちで屋台が出ている。


 そう、今日は三国武道大会三日前。


各国から観光客や王家、聖王家、国家代表が都にやってくる。


 客人を出迎える為に、都の玄関口である商店街はお祭り騒ぎで、私達帝国兵は治安維持の為に警備にかり出されているからだ。


 本来なら二、三人で組むのだけど、私の場合一人で見回っている。


 理由は他の兵士と組むと、騒ぎがおきた時、彼らを置いていきかねないからだ。


 セレスとアホ剣士も見回り組だけど、二人で組んでいるし、他の隊長やコンラットを含む副隊長組は城の警護を頼んでいる。


 以上の理由から、私は一人にならざるを得ない。


 だが、それはかえって良かった。


 何せ私は今、お忍びモードのローブ姿。


 声を誤魔化す為、フードの下に顎部分を外したアーメットを被っている。


 一応この姿では無口で通っているが、いざというとき女の声では色々とめんどくさい。


 念の為だ。


 何故私がこの姿かと言うと、流石に鎧姿は悪目立ちするし、何より商店街の住人に囲まれる。


 はっきり言って仕事にならない。


 はぁ~、とため息をつきながら、周りを見回す。


 中央の道をあけて、屋台が出ていたり、道化師が大道芸で観客を楽しませている。


 何故中央の道があいているかというと、もうすぐ各国の王家と聖王家の馬車や、その護衛、そして大会代表者がパレードを行うためだ。


 でも確か、王国の第一王子と、聖国の聖太子せいたいしは、帝国に留学していたな。


 しかも殿下のクラスメイト。


 てことは、馬車に乗っているのは、各国の王と后だけだろうか。


 この間アリスから、王国と聖国には、側室がそれぞれ十人くらいいると聞いた。


 当然それだけ側室がいると言う事は、その子供も沢山居るわけで、まさか全員つれて来るわけ無いよね。


 そう言えば、朝忙しなく働いていた使用人さん達が、珍しくげんなりしていた気が……。


 今夜の巡回の兵士に、気をつけるように伝達しておくか。


 何だか、私までげんなりしてきた時だった。


 ギギギッ! と門が開く音が聞こえ、そちらを向く。


 良くは見えないが、なにやらゴージャスな装飾が見えた。


 周りを見ると中央の道の回りに集まっている。


 どうやら、各国からの来客が到着したようだ。


 周囲に気を配りながら、中央に目を向ける。


 馬に乗った騎士達を先頭に、歩兵が馬車を囲んで行進する。


 歩兵が持っている旗にはドラゴンのシルエット。


 この旗と言うことは、王国の来客のようだ。


 それは良いんだが……。


「何だ? 何台馬車が通るんだよ」


 近くにいた見物人の一人が呟いた。


 そうなんだ、馬車の数が可笑しい。


 二、三台だったら分かる。


 一台は国王とその后の馬車、二台目からは代表選手とかその国の宰相が乗っていると思えばいい。


 だが、その後に続く、約十台ほどある馬車は何だ!?


 他の貴族が、一緒に行進に参加する事は無いと聞いている。


 使用人達は、このパレードが始まる前、先に都に入り、城の門前に来ているはずだ。


 と、言うことは……。


 嫌な予感。


 そんな予感を抱えながら、続いてやって来た一行に目を向ける。


 此方も先頭を騎士、歩兵に囲まれた馬車の行進。


 旗は聖国の象徴グリフォンのシルエット。


 ……そして、此方も可笑しい馬車の数。


 ハハ、使用人さん達の苦労が分かったよ。


 ストレスで倒れなきゃいいけど。


 しかし、私にこの来客数を知らされていないってどういう事だ?


 もしかして、これ恒例なの!?


 陛下が后様以外に、妻がいないのが珍しいのは知ってたけど、だからって普通連れてくるのか!?


 そっちの国でも大会が行われた事があるはずなんだから、それがいかに迷惑な事か分から無いはず無いだろう!!


 それとも何か? 他二国で行う時はこんな大人数で来ないのか? 帝国でする時だけなのか!?


 もしそうだったら何それ虐め!?


 後で確認しないと。


 声に出さず、心の中でつっこみを連発させながら、私は顔を引きつらせ、パレードを見送った。


 見送った後、何気なく回りを見てみると、他の見回りをしていた兵士達がため息を吐いているのが見えた。


 分かるぞ、お前達の気持ち。


 でもな、私の方がもっとげんなりしているんだ。


 何せこの後、あの集団との顔を合わせが待ってんだから。


 あぁ~、主催国ってこんなに疲れるんだな。


 でも元の世界と比べると楽なのか?


 言語も一つで統一されているから、意志疎通が出来るだけましと思えば、乗り切れそう。


 オリンピックとか、ワールドカップと比べれば、大会その物は一日で終わる。


 よし、そう思って乗り切ろう。


 只でさえ忙しいんだ、そうでも思っておかないと、やってられん。


 無理矢理自分を納得させ、見回りを再開した。








・二時間後


 パレードの後も巡回を続けたが、何事もなく平和だった。


 流石に一日目から、問題なんておきて欲しくない。


 そろそろ交代の時間だ、と思って気がゆるむ。


 そんな時だった。


「貴様! 何をしたか分かっているのか!?」


「申し訳ございません!!」


 突然男の怒鳴り声と、おびえた声で謝罪をしている女性の声が聞こえた。


 やば、フラグだった。


 放っておく訳にはいかない為、声のした方へ向かう。


 幸い直ぐに見つったが、人だかりになっていて、人の間を縫って前に出る。


「おいおい! その人、謝ってんだろう。そこまで怒る事ないんじゃないか?」


 人混みの前に出ると、激怒している大男と、五歳位の男の子を抱きしめて怯えている母親、その間に割って入り、親子をかばうように二人の兵士がいた。


 どういう状況なんだ?


「子供がぶつかっただけじゃないか」


「貴様のような雑魚に用ない! そこの子供をよこして貰おうか!!」


 兵士が何とか大男をなだめようとするが、いっこうに怒りが収まらないようだ。


 子供がぶつかっただけって、アホかあの男。


 そう思い、大男をよく見る。


 身長は筋肉兄さんと同じぐらい、何処ぞの戦士のようで、立派なプレートアーマーを着て、身の丈ほどの大剣を背負っていた。


 焦げ茶色の髪はモヒカンで、ツンツンに立てている。


 青い瞳がのぞく目つきは悪く、まるでヤクザだ。


「よこせって、物じゃないんだ。それに、一体何をするつもりだよ? 子供に何をさせようって言うんだ」


 全くだ。


 周りの人達と一緒に頷く。


 ここにいる人達も、同じ事を思ったようだ。


 大男を呆れた目で見ている。


「知れたこと! 王国に連れ帰り、一生奴隷として使ってやる!!」


 はぁ!?


 この大男何つった!?


 この帝国で犯罪発言も良いところだ。


 兵士と周囲の人は愕然とし、母親は真っ青、よく見たら男の子は泣きながら怯えている。


「そ、そんなのが許されるわけ無いだろう! ここは帝国だ!!」


 あまりにも常識外れな発言に、兵士の一人が大男に言う。


 彼の言う通り、いくら他国の人間でもここは帝国。


 そんなメチャクチャな考えが通るわけがない。


 いや、帝国じゃ無くても通ってたまるか。


 暫く彼らのやり取りを見ていると、


「ええい! 退け!!」


「グッ!」


 ついに苛立った大男は、兵士の一人を殴りとばした。


 兵士は、野次馬達に受け止められたが、相当の力で殴られた為か、起き上がる事が出来ない。


「おい!」


 そう言って、もう一人の兵士が自分の得物である槍を構える。


 流石に暴力をふるった相手を、なだめて帰す訳にはいかない。


 暴行罪で逮捕して、事情聴取し、書類に残す必要がある。


 その為の行為であれば、相手が武器を所持している時や、一般人を守る時などで、武器の使用を許可している。


 だが。


「フン! 雑魚が!!」


「うわっ!」


 大男は兵士の槍を掴み、後ろに兵士ごと放る。


 彼も野次馬達に受け止められ、大事には至らなかった。


 この大男、大口をたたくだけあって、腕っ節は相当だ。


 邪魔者がいなくなったことで、大男は親子に近づく。


 怯えている親子に手を伸ばそうとした時。




――――ガシッ!




「ん? 誰だ貴様ぁ?」


「……」


 私が大男の腕を掴む。


 大男は顔をしかめて言う言葉に、無言でいる。


「チッ、離せ!」


 そう言って私の腕を振り払う。


 二、三歩下がって、私を睨み付けた大男。


「貴様、この俺を誰だと思っている!!」


 叫ぶしか能がないのかと思う程、良く声を荒げるなぁ。


 そう思いながら、私は今まで閉じていた口を開く。


「さぁな、お前のような低能の事など、覚えはない」


 そう言えば、大男は顔を引きつらせ顔を真っ赤に染める。


 周りは私の声を聞いたとたん、首をかしげている。


 やっぱり、兵士や商店街の人達は声で分かるか。


 そう感心していたら、大男が口を開く。


「フン! どうやら何処ぞの田舎者のようだな。この俺、王国代表、クライヴ・マスグレイヴを知らんとは!」


 大男が言うと野次馬がざわつく。


 って、此奴が王国代表?


 確かに代表選手の名前と同じだが、何だってこんな奴がこんな所に。


 気になるが、それは後だ。


「なら、こんな所で問題を起こして良いのか? 下手をすると国王の顔に泥を塗る事になるぞ」


 まぁ、もう塗ってるけど。


 チラリと後ろを見ると、親子が信じられないという顔で、私を見上げていた。


 私は親子に、視線を合わせるようにしゃがみ


「大丈夫ですか?」


 と声をかけた。


「は、はい」


 母親が返事をするが、やはり驚いている。


 男の子も、真っ赤にした目を見開いている。


 私は男の子の頭をなで、声をかける。


「よしよし、怖かったな。もう大丈夫だぞ」


「そっそんな! 私達のような者に勿体ない!!」


 その行為に何故か母親が慌てているが、気にせず私はなでる。


「貴様! 俺を侮辱しただけでなく、何をやっている!!」


「お、お兄ちゃん!」


 後ろの大男が激怒し大剣を振りかざした姿が、男の子の大きな瞳に映った。


 大剣を振り下ろした瞬間、私は右腕を上げ、鞘から抜いた状態の『朔夜』を腕輪から出し




――――ギーン!




 っと、大きな音を立てて受け止める。


「なっ!?」


「いい加減、私も怒るぞ?」


 驚いた大男に言った後、私は黒い靄に包まれ、鎧を装着した。


「き、貴様は!?」


「申し遅れた。私は黒騎士、帝国代表の一人だ。さっきは私の部下が世話になったな」


 しゃがんだ状態で大剣を受け止めながら、後ろを向き、アーメット越しで睨みながら言った。


 大男は信じられないと言う顔で私を見ている。


 野次馬達はやっぱりと言う表情だった。


 やっぱりばれてたか。


 大剣を押しのけ、大男が二、三歩後ずさる。


 私は立ち上がり、大男の方に体を向け、口を開く。


「私の部下達が、せっかく穏便にすませようとしていたのに、お前のせいで台無しだ。まったく、さっきも言ったがお前は自国の王の顔に泥をぬるきか? 国の代表の自覚も無いのか?」


「す、好き勝手言いおって!!」


「事実だろ? 現に公衆の面前で騒動をおこし、子供の誘拐未遂に公務執行妨害。これだけで十分牢屋に放り込めるぞ?」


「グッ」


 ようやく自分の不利が分かってきたようで、言葉を詰まらせる。


 でも、いい加減私も頭にきているんだ。


「だが、一応あんたは代表だ。今日はおとなしく城に向かえ」


 私の言葉に大男を含め、野次馬達が驚いている。


 大方、何を言っているんだと、思っているんだろう。


 そして、何を思ったのか笑い出した。


「フハハハッ! そうだろう! そうだろうとも!!」


 それはもうケタケタ笑っている。


 あ~、不快だ。


 本当に不快だ。


「お前は俺を見逃すしかない! そうでなければ困るのはこの「何を勘違いしている」え?」


 大男の言葉を遮ると、間抜けな顔をする。


 その隙に距離をつめ、切っ先を大男の喉元に突きつける。


「こんな所では、私が剣を振るえない。でも幸い私もお前も代表だ、剣を振るう舞台は整っている。そこで徹底的に潰してやるよ」


「なっ!?」


 声にドスを効かせ言ってやると、大男の顔が歪む。


 それを見て、アーメットの下で口角をつり上げながら続ける。


「さぞ良い見せ物になるだろうなぁ? 公衆の面前で大口をたたき、迷惑をかけた奴が、皇帝、国王、聖王の前で無様に敗北する姿は」


「貴様ぁ! 言わせておけば!!」


 激怒のあまり大剣で喉元に突きつけた『朔夜』を払いのけ叫ぶ。


 だがここで暴れさせる訳にはいかない。


「それが嫌なら、三日後せいぜい抗え。もしかしたら一撃ぐらいなら、入れられるかもな」


 と挑発する。


 すると案の定。


「上等だ! 貴様を屠るのはこの俺、クライヴ・マスグレイヴだ! 貴様こそ精精、足下をすくわれぬよう、気をつけるのだな!!」


 そう吐き捨て、野次馬達をかき分け去っていった。


 本当、単細胞は直ぐに挑発に乗る。


「何やってんだよ、クロ…」


「ん? あ、クロード。よっ!」


 声がした方を向くと、呆れ顔のクロードがいた。


 私は片手を上げて挨拶をする。


「いや、よっ! じゃねぇよ。何他国の代表と、もめてんだよ」


「あ~、お前さっき来たばっかか? 後で説明するよ」


 クロードには悪いけど、仕事増やす事になったからな。


 それはそうと、私は後ろで唖然としている親子の元へ近寄る。


「念のため、兵士二人にご自宅まで護衛させます。我々がいながら、このような事態に陥り申し訳ございませんでした」


 そう言って頭をさげる。


「そっそんな事は!」


 またも慌てる母親。


 ハハ、そんな畏まらなくても。


「いえ、民を守るのも私達の役目です。おい、お前達! もう動けるか?」


 母親にそう言って、吹っ飛ばされた二人に声をかける。


 幸いたいした事はなさそうだ。


 二人は立ち上がり、私に返事をする。


「はい! このぐらい平気です!」


「そうです、日々の訓練に比べればこの程度!!」


 元気に返事をするぐらい、平気そうだ。


 まぁ、毎日鍛えさせてんだから当然だ。


「そうか、ならこの親子の警護を。それと、万が一に備えて今日から五日間、親子の自宅近辺の警護に当たれ。後ほど数人送るから、交代制でおこなうように」


「「はっ!」」


 兵士達は返事をした後、親子の元へ行き、戸惑う二人を自宅へと送りに行った。


 とりあえず、あの親子はこれでよし。


 あとは、城の警護体勢と、町の夜の巡回の修正しないと。


「なるほど、だいたい分かった」


 今までのやり取りで、大体察してくれたようだ。


 助かる。


「すまん、お前の仕事も増やす事になった」


 周りに聞こえないように、クロードに言う。


「良いよ、しゃぁねぇし。調査の方も区切りがついたしな」


 ガシガシと頭をかきながら、答えるクロード。


「それより、お前は大丈夫かよ? これから五日間、あの脳筋と顔合わせる回数多いだろう?」


「それこそしょうがないさ。ここで流血沙汰になるよか、よっぽどましだ」


 言ってから、周りを見る。


いつの間にか野次馬はちり、お祭り騒ぎに戻っている。


 それを見てホッとする。


 ここで収拾がつかなくなる方が、よほど問題だったから。


「そうか」


 クロードは納得した顔をした。


 理解が早くて助かるよ。


「細かい事は後で。私はこれから、各国の来客と顔合わせだから」


「わかった。がんばれよ」


 ひとまず私達は別れ、城へと急ぐ。


 全く、早速面倒事を持ってきたよ、他国の代表。


 そもそも、何でこんな所にいたんだ?


 そんな疑問を抱えながら、私は走ったのだった。








To be continued


後書き

第30話いかがでしたでしょうか?

前話から時間が飛び、大会3日前を書かせていただきました。

今回初めて他国の人間を、智慧と絡ませてみましたが、いかがでしたでしょうか?

なんかどんどん智慧が男らしくなっていきますが、前回のように女の子らしい所も書いていこうと思います。

こんな小説ですが、今後ともよろしくお願いいたします。


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