プロローグ サーシャとアレクシス
「さあ、サーシャ。目を開けてごらん。できたよ」
姿見に映る自分に、少女は歓声を上げた。
「わあ……! ほんとうに男の子みたい! ありがとう、サルドにいさま!」
服を探してきてくれた三番目の兄に抱きつく。
長い髪を結い上げて防寒用の帽子の中にしまい、兄のお古の服を着た姿は、幼いサーシャの目にはちゃんと男の子に見えた。
「よーし、今からお前は俺たちの弟だ! 名前は……うーん、何にしようかな」
「アウィンにいさま! うんとかっこいい名前にしてね」
期待に目を輝かせるサーシャに、二番目の兄は困ったように頬をかいて、一番上の兄に助けを求める。
「カルス兄、どう思う?」
「そうだな……アレクシスというのはどうだろう」
「アレクシス! すてき!」
サーシャがカルスに飛びつくと、カルスはさっとサーシャを抱き上げた。
「曾祖父さまの名前だ。とっても強い人だったらしい」
「わたしもひいおじいさまみたいに強くなれるかしら?」
「そういうときはね、『ぼくもひいおじいさまみたいに強くなれるかな?』って言うんだよ、アレクシス」
サルドがサーシャの頬をつついた。サーシャは、きゃあきゃあ笑いながら、男の子みたいに返事をした。
「わかったよ、にいさまたち!」
その日から、サーシャは四人兄弟の一番末の弟、アレクシスになった。ずっと昔の話だ。




