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種付けオッサンとビッチギャル ~二日に一度ヤらないと死ぬ二人の異世界転生~【注目15位、日間217位ありがとうございます】  作者: 黒瀬 量衡
第一章 種付けオッサンとビッチギャル

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第一話 木の筒がオホ声を上げて孕みましたぞ

 野原だった。


 草。草。草。遠くに森。反対側には土の道。空は青く、風は気持ちいい。


 そして、おじさんは裸だった。


「ドゥフフ……いやいやいや。これはさすがに、どういうプレイですかなぁ……?」


 正確には完全な裸ではない。


 眼鏡。


 ネクタイ。


 革靴。


 以上。


 シャツなし。ズボンなし。パンツなし。靴下すらなし。


 四十代後半。腹は出ている。胸や腹には手入れしていない毛が生え、頭の毛は逆に心許ない。


 そんなおじさんが眼鏡とネクタイと革靴だけで野原に立っている。


 どう見ても変態だった。


「いやぁ~、せめてパンツくらい残していただけませんかねぇ。おじさん、現代日本では普通に社会人だったんですぞ。これでは通報待ったなしですなぁ。ドゥフフ」


 しかも困ったことがもう一つあった。


 股間がまったく落ち着かない。


 おじさんは昔から、そこだけは妙に規格外だった。神からもらったものではない。生まれつきである。


 それが今は、性神の祝福のせいなのか、ずっと元気だった。


 隠しようがない。


「いやいや。これはいくらなんでもまずいですぞ」


 おじさんにだって常識はある。


 パパ活をしていたとはいえ、金を払って若い女性と食事したり飲んだりしていただけである。町中を裸で歩いていいと思うほど壊れてはいない。


「何か……何か被せるものでも……」


 暑い。


 おじさんはネクタイの端で額の汗を拭った。ついでに眼鏡を外し、今しがた汗を拭ったところでレンズをゴシゴシ擦る。


「うむ。服はなくともネクタイは便利ですなぁ。ドゥフフ」


 たぶん汚れは伸びている。


 だが気にしない。


 少し前まで、ここにはもう一人いた。


     *


「あなたを異世界へ召喚します」


 女が言った。


 ものすごく好みの女だった。


 黒髪。化粧は薄い。白い肌。物静かな雰囲気。


 清楚という言葉が、そのまま人間になったような成人女性だった。


 しかも、なぜか分かる。


 男を知らない。


 おじさんの好みを、本人が認めたくないところまで正確に抜き出したような女だった。


「ドゥフフフ……いやぁ、お嬢さん。これはまた随分とおじさん好みで。こういうサービスは聞いてませんぞぉ?」


「サービスではありません」


「またまたぁ。おじさんみたいなオッサンの前に、こんな別嬪さんが無料で現れる方が怖いですぞ。で、おいくらですかな?」


「必要ありません」


「えっ。それは逆に信用できませんなぁ」


「なぜです?」


「おじさんみたいなのに理由もなく若い女性が近寄ってくるわけがありませんからなぁ。ドゥフフ」


 昔からそうだった。


 若い女性と食事をするなら金を払う。


 時間をもらうなら金を払う。


 向こうは金が欲しい。おじさんは若い女性と飲み食いしたい。


 パパ活というものは、その意味では非常に分かりやすかった。


「卑屈ですね」


「ドゥフフ。よく言われますなぁ」


「私は神です」


「……ほう?」


「性を司る神です」


「性の神」


 おじさんは女を上から下まで眺めた。


「ドゥフフフフ……いやぁ。それはまた、実におじさん好みの神様ですなぁ」


「気持ち悪いですね」


「神様にも言われた!」


「ですが、私を好みだと思っているのは事実でしょう?」


「そりゃまあ」


「私は見る者によって姿が変わります。その者がもっとも性的に惹かれる異性の姿として知覚されます」


「なるほど。つまり神様、おじさんの性癖を勝手に覗きましたな?」


「その言い方はやめてください」


「プライバシーがありませんなぁ。ドゥフフ」


 性神は無視した。


「あなたには私の祝福を与えます」


「チートですかな?」


「まず、性交に起因する感染や疾病を恐れる必要はありません。また、行為によってあなた自身が傷つくことも、相手を傷つけることもありません」


「ほうほう」


「体格差や身体的な差があっても、私の加護が保護します」


「便利ですなぁ」


「性交によって、疲労、負傷、生命力の消耗も急速に回復します」


「かなりの当たりでは?」


「さらに、同意してあなたと関係を持った相手は、性的な感覚が大幅に増幅されます」


「ドゥフフフフ……!」


「その顔をやめなさい」


「いやぁ、神様。これはおじさんにも春が――」


「相手の意思を操るものではありません」


「分かっておりますとも。おじさん、無理強いは趣味ではありませんぞ」


「そして」


「あっ」


 来た。


 絶対に何かある。


「四十八時間以内に一度、種付けプレスを完遂してください」


「……はい?」


「できなければ死にます」


「軽く言いますなぁ!」


「四十八時間は最低限の生命維持期限です」


「最低限?」


「祝福を受けたあなたには、それとは別に種付けプレスを求める強い衝動が生じます」


「……どのくらい?」


「個人差があります」


「怖い言い方ですなぁ」


「一日に複数回行っても不思議ではありません」


「多くない!?」


「気持ちもいいですよ」


「そこまで正直に言います?」


「性神ですから」


「説得力がありますなぁ」


 そして条件は、妙に細かかった。


「相手を仰向け相当にする。あなたが上から覆いかぶさる。身体を重ね、上から圧をかけた状態で腰を下方向へ動かす。そして、その姿勢のまま最後まで完遂する。それで一回です」


「……神様。判定が厳密すぎませんかな?」


「立ったまま後ろからでは無効」


「ほう」


「座位も無効」


「ほうほう」


「普通に性交しただけでも無効」


「最後までしても?」


「種付けプレスの条件を満たしていなければ無効です」


「怖っ!」


 つまり。


 四十八時間以内。


 正式な種付けプレス限定。


 別のやり方でいくら楽しんでも生命維持にはならない。


「おじさんの死因が『体位を間違えたため』になりかねませんぞ」


「気をつけてください」


「そこだけ妙に事務的!」


「なお、相手は人間である必要はありません」


「……ん?」


「条件を満たせるなら、人間以外でも構いません」


 おじさんの眼鏡が光った。


「木は?」


「可能です」


「石」


「可能です」


「家具」


「可能です」


「建物」


「形状次第です」


「ドゥフフフ……選択肢が広いですなぁ」


「ただし」


「またただし!」


「あなたの影響を強く受けた人間以外の対象は、雌化します」


「……はい?」


「さらに正式な種付けプレスを完遂すれば受胎します」


「木が?」


「孕みます」


「石が?」


「孕みます」


「椅子が?」


「孕みます」


「この世界、本当に大丈夫ですかなぁ?」


「あなた次第ですね」


「責任重大!」


「そして雌化した対象は、非常に分かりやすい反応を示します」


「分かりやすい?」


「オホ声を上げます」


「……」


「液体も出ます」


「……神様?」


「はい」


「真顔で何を言っております?」


「事実です」


「木も?」


「はい」


「石も?」


「はい」


「椅子も?」


「はい」


「口がなくても?」


「はい」


「ドゥフフフフフ!」


「なぜ笑うのです?」


「いやぁ、くだらなすぎて逆に好きですなぁ!」


「また、あなたが股間を隠すために中空の物を被せるような場合でも、強く接触した物は雌化することがあります」


「え?」


「筒や器などですね」


「待ってください。それ、服がない現状と非常に相性が悪くありません?」


「そうですね」


「神様!」


「では、良い種付けを」


「まだ聞きたいことが――」


 光が広がった。


「ちょっ、せめて服! あと金! 神様の連絡先も!」


 世界が消えた。


     *


「……神様の連絡先、聞き損ねましたなぁ」


 そして現在。


 裸。


 眼鏡。


 ネクタイ。


 革靴。


「いや、それより隠さないと本当にまずいですぞ」


 おじさんは周囲を探した。


 すると倒木のそばに、腐って中心が空洞になった短い木片が転がっている。


 ちょうど筒状だった。


「おお」


 拾う。


 覗く。


「……ドゥフフ」


 一瞬、性神の説明を思い出した。


 中空の物を被せても雌化することがある。


「いやいや。しかし裸よりはマシでしょう。人に見せるわけにはいきませんからなぁ」


 おじさんにも常識がある。


 だから隠した。


 木の筒で。


 三秒後。


「オッ……」


「……ドゥフ?」


「オホッ……!」


「いやいやいや」


「オッホォォォォォォォッ!!」


「早い早い早い! まだ隠しただけですぞ!?」


 木の筒が叫んだ。


 口などない。


 木である。


 なのに、若い女性のような高い声が野原へ響いた。


 さらに木肌が艶を帯び、内側から透明な液体が溢れてきた。


「オホッ! オッホォォッ!」


「いやぁぁぁ! 神様、本当にこうなるんですなぁ!」


 おじさんは慌てて外した。


 木の筒は地面へ落ちた。


「……」


 静かになった。


「助かった」


「オホォォ……」


「まだ言ってる!」


 木の筒がぴくりと動いた。


 開口部が、妙に誘うように開閉している。


「……」


 おじさんは眼鏡を押し上げた。


「いやいやいや」


 少し離れる。


「おじさん、現代人ですぞ?」


 木の筒。


「オホォ……」


「普通なら逃げますぞ?」


 木の筒。


「オホッ……」


「……」


 そして身体の奥から、妙な衝動が湧いてくる。


「これが神様の言っていた……」


 種付けプレスをしたい。


 非常にしたい。


「いやぁ……困りましたなぁ」


 おじさんは土の道を見る。


 町へ行く。


 服を探す。


 食事。


 寝床。


 普通ならそうする。


 だが。


 四十八時間以内にやらなければ死ぬ。


 しかも今後も何度もやる。


 そして隠そうとしただけで木の筒がこうなった。


「……」


 おじさんは少し考えた。


「死ぬか」


 木の筒を見る。


「こういうのを増やすか」


 もう一度考える。


「……ドゥフフ」


 答えは早かった。


「まあ、生きますわなぁ」


 仕方ない。


 異常だとは思う。


 現代日本なら完全にアウトだ。


 でも死にたくない。


「ギャグみたいな物が増えるくらいで命が買えるなら、安いものですぞ」


 ここで、おじさんは諦めた。


 異世界へ来て一時間も経っていなかった。


「それに……」


 木の筒を見る。


「試験は必要ですなぁ」


「オホッ!」


「そうでしょうそうでしょう。ドゥフフ」


 誰と話しているのだろう。


     *


 それから少しして。


 野原に妙な音が響き始めた。


 ズンッ。


「オホォッ!」


 ズンッ。


「オッホォォォッ!」


 ズンッ、ズンッ。


「オホッ! オホォォォォッ!」


「いやぁ、音まで大きいですなぁ!」


 性神指定の正式な種付けプレス。


 細かい過程については省く。


 ただ一つ確かなことがある。


 木の筒は非常にうるさかった。


「オッホォォォォォォッ!!」


「ドゥフフフ! 野原中に響いておりますぞ!」


 液体まで飛び散る。


 草が濡れる。


 おじさんも濡れる。


「いやぁ、後始末まで酷いですなぁ!」


「オホッ! オホォッ!」


「まだ元気!?」


 そして、正式な条件を最後まで満たした瞬間。


 身体の奥から熱が広がった。


 疲労が消える。


 草で擦った脛の小さな傷までなくなる。


 身体が妙に軽い。


「……おお」


 おじさんは立ち上がった。


「これは本当に凄いですなぁ」


 四十八時間。


 これで生命維持の時計は最初から数え直し。


「なるほど」


 木の筒を見る。


「死にませんなぁ」


 木の筒が光った。


「おや?」


 木肌が波打つ。


 少し膨らむ。


 明らかに形が変わっていく。


「……」


 おじさんは眼鏡を外した。


 汗と謎の液体が付いたネクタイでレンズを拭いた。


 かけ直した。


「ドゥフフ……」


 孕んでいた。


 本当に。


「神様、嘘は言ってませんでしたなぁ」


「オホォ……」


「まだ鳴くんです?」


 しかも木の筒は、おじさんが離れると少し寂しそうに開閉した。


「……」


「オホッ」


「いや、もう一回求められても困りますぞ」


「オホォ」


「……」


 おじさんの身体には、まだ妙な衝動が残っていた。


 四十八時間はもうリセットされている。


 生命維持上は必要ない。


 それでも。


「……神様」


 おじさんは空を見た。


「これ、別に四十八時間待つ必要ありませんよね?」


 返事はない。


「ドゥフフ」


 嫌な予感がした。


 たぶん、おじさんはこれから一日に何度もやる。


 死なないため。


 そして。


「まあ……気持ちいいですからなぁ」


 そこは認めるしかなかった。


     *


「おーい!」


「……ドゥフ?」


 遠くから声がした。


 土の道。


 馬車が止まっている。


 人がこちらを見ていた。


「さっきから女の声がするぞー! 大丈夫かー!?」


「……」


 聞かれていた。


 全部ではないだろう。


 たぶん。


 そう信じたい。


 おじさんを見る。


 眼鏡。


 汗やら何やらを吸ったネクタイ。


 革靴。


 それ以外は裸。


 横には、液体まみれで孕んだ木の筒。


「オホォ……」


「今は黙っていただけませんかな!?」


「おーい! 誰かいるのかー!?」


「……ドゥフフ」


 おじさんは空を見上げた。


「これはどう説明したものですかなぁ」


 異世界へ来て、まだ一時間も経っていなかった。


 そして。


 おじさんはもう理解していた。


 この世界で生き延びる限り。


 こういう物は。


 たぶん、ものすごい勢いで増える。

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