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腐った世界で異世界生活(ライフ)  作者: たんぽぽ
第2章(上) 悪夢
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コンコン。


「オレだけどー。」


雛菊の部屋のドアをノックし、声を掛ける。


「ど、どうぞ・・・。」


そう言う小さな声が聞こえ、オレは扉を開ける。


雛菊の部屋はオレの部屋と作りは同じだったが、明らかに()()()の部屋だった。

部屋は主に水色で統一されており、掛け布団は水色に白い水玉柄。枕も水色。

小さな窓にかかっているカーテンも水色のチェック柄で、そこに棚のように取り付けてある板には

3つの小さな植木鉢が置かれており、小さなピンク色と黄色の花を咲かせている。


ベッドの反対側、入って右側には備え付けのクローゼットがあり、その隣には手作りと思われる棚があった。

棚には薄い水色や白色の籠が引き出しのように置かれていて、

まるで細かく区切られている棚のサイズに合わせて作られているのかと言うくらいピッタリだった。

―――――恐らく、籠のサイズに合わせて棚を作ったというだけだろうが・・・。



「えと・・・。・・・何・・・ですか?」


何も言わないオレに、雛菊から声を掛けてくる。

しかも、何故かぎこちない敬語だ。


「あぁ。ちょっと・・・。」


後ろ手で扉を閉め、雛菊が寝ているベッドに近づく。


「オレ、やっぱ料理なんて出来ねぇから代わりに飯作ってもらえないかなーって。」


オレが言うと、雛菊は毛布を頭まで被りモゴモゴと小さな声で言った。



「・・・でも私、具合悪くて起きれない・・・。」




・・・・・・あ、うん。そうらしいからこれがある。


オレは左手に持っていた付箋を見つつ、雛菊の上に右手を(かざ)しながら唱えた。



「【上弦(じょうげん)ノ月 (おさ)マレ】。」



呪文の意味もわからないし、この呪文にどんな効果があるのかもわからない。

とりあえず、学校でオレが使っていた机の裏に貼ってあった()()の付箋の1つだ。

あの変な紙切れを見つけた日、引き出しのものを全部出した後にびっしりと除霊の御札のように貼りつけてある大量の付箋を見た。

その光景はマジでこの机には呪いでもかかってるんじゃないかと思ってしまうほどだ。


そのうちの1つに書かれていたのが、今の呪文と『6月15日に雛菊麻美花に対して使うこと。ただし効果は彼女のみ1時間。』という簡潔な説明だった。



「・・・ぅ・・・ん?・・・その呪文、何?・・・ですか?」


「さぁな。・・・ほい。お前にやる。」


そう言って、楽になったのか起き上がってベッドに座った雛菊に付箋を渡す。



「ありがとうございます!・・・えっ。」


オレから受け取った付箋を眺めた雛菊は、驚きの声を漏らした。



「・・・・・・何か?」


「・・・いや・・・その。・・・・・・斎藤くんの字に似てるな・・・って。」


・・・えっと、それは・・・。



「・・・・・・オレ?」


「あっ。そうじゃなくて・・・斎藤ユウマ君・・・じゃなくて・・・。

 ・・・えっと・・・アサマ君?の字に似てるなって・・・。」


・・・・・・アサマって・・・。



「・・・・・・あの、アサマか?」


「え?・・・あ。・・・ごめんなさい!」



不穏な空気を感じ取ったのか、雛菊が謝る。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「・・・とりあえず、飯。」



オレは彼女に言い捨て、雛菊の部屋を出る。




そして、1階へ行くために階段を降り―――――



バン!


ガツン!


ドッシーン!



―――る直前、脇腹にアイクが刺さり、オレは『ドッシーン!』と思いっきり壁に叩きつけられる。


どうやら、『バン!』はMさんが勢いよくドアを開けた音のようで

『ガツン!』はもちろんオレにアイクがぶつかった音。


最近、Mさんにこき使われてるアイクさんが可愛そうに思えてくるのは気のせいなのだろうか・・・。


「気のせいだっつーの!」


美結が、真っ赤に充血した目でこちらを睨む。



・・・・・・・・・・・・んー、確か・・・。


「【(なんじ)ハートノ傷 隠レヨ】」

「何よ!」


「・・・ん?別に。・・・何でもねぇし。」


略して【(シン)(きず)隠蔽(いんぺい)】ってとこか。


そして、『暗記しといた方が良い。』との忠告を無視しなくてよかったということだろう。



「うっさいゎ!クソ虫が!」


「・・・ハイハイ。今の魔法、覚えておいた方が良いかもねー。泣き虫美結ちゃーん。」


「・・・ッ。」


オレが棒読みでからかうと、美結はキッとこちらを睨んで自分の部屋に戻っていった。





「・・・今の呪文って、目の充血治せるの?・・・・・・・・・ですか?」


雛菊がキラキラとした目で聞いてくるが敬語を付け忘れたのに気づき、瞳のキラキラは失われる。


「・・・・・・正確には、“泣いた後の充血のみ”らしいがな。」


そう、付箋に書いてあった。



「えっと・・・・・・美結ちゃんは泣いていたの?・・・ですか?・・・あの、美結ちゃんが?・・・ですか?」




・・・・・・・・・なんか、イラっと来る。


「・・・なぁ。変な敬語、止めない?」


言うと、雛菊はビクンっと跳ねて目を伏せる。

たぶん少しイラついているせいで、視線が鋭くなっているのだろう。



「・・・g、ごめんなさい。」


雛菊が声を震わせながら言う。

怒っている気は無いのだが・・・。



「・・・・・・ごめんなさい、ごめんなさい。今までも、いっぱい、いっぱい、ごめんなさい。

 ・・・馴れ馴れしくしたりしてごめんなさい。タメ口聞いてごめんなさい。いろいろごめんなさい!」



・・・え?・・・あっ、ん?



ポタリ。



・・・ええええ?!



床に雫が落ち、余計に混乱する。



「・・・本当にごめんなs・・・。」

「・・・ちょっ、待った!」


とりあえず、待ったをかける。

驚いたように顔を上げた雛菊は、潤んだ瞳でオレを見つめてくる。


そんな彼女から視線をそらし、オレは半分投げ遣りに言う。


「・・・別に、怒ってなんかいねーし。ただ、取って付けたような変な敬語にイラっと来ただって。

 ・・・そもそもオレ、こういう顔なんだっつーの。勝手に怒ってるって解釈しないでくれないかなー。」


睨むだけで黙ってくれるくらいだしな。



「・・・ごめんなさい。」


「あ、いや、だからs・・・。」


「・・・でも、仲良いわけじゃないのに馴れ馴れしくしたのは事実だし、

 ゆうまくんのこと何も知らないのに、知ったようなこと言ったのも事実だし・・・。」




そういえば。


「・・・・・・同じクラスのくせに違うクラスだって嘘ついたしな。」

「・・・ほ、本当にごめんなさい。」



本来ならこっちが謝るべきことなのだが・・・。



「・・・・・・まぁ、とりあえず・・・、朝飯食いたい。」


さっきから胃がグルルと唸っている。

と、同時にキッチンの惨状を思いだし、げんなりする。


「・・・雛菊。キッチン、ヤベェことになってるぞ。」

「美結ちゃん?」

「だろ。美代はまだ寝てたみてーだし。」

「アハハ。じゃあ、お掃除から始めないと~。」



雛菊はまつげにキラリと光る1粒の雫をくっつけたまま、楽しそうに笑った。


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