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14 最終話

 小さな庭はまだ雪に埋もれて、その姿が分からない。ルナはキッチンの作業台にガーデニングの本広げ、何度も読み直してはイメージを膨らませている。


 まだ日が短く外はすっかり暗くなっている。夕食の支度が整って、ルナはフィンリーの帰宅を待っていた。


『フィンリーがポプラのなみきみちをすぎたよ』

『いまハーデンさんとあいさつしてる』


 妖精たちが勝手に教えてくれるから、好きな人を待つ妙味が半減する。


「あなた達、少し静かにしてくれないかしら? 」


 サービス過多な妖精たちにうんざりしながら、スープを温め直し始める。


「私は普通の人みたいに普通に暮らしたいのに。私の他に古の血を持つ人いないのかしら? 」


 と、ルナが言うと妖精たちは答えた。


『いるよ。いるんだけどねぇ~。ルナはいちおうおひめさまだからねぇ~~』


「初耳。いちおう……なんだ? 」


 妖精の血を持つ人が他にいてもおかしくはない。妖精を見たり話せたりするのだろうか?


『ルナはねぇ~74だいめのおひめさまかな? 』


「えっ!? そんなに古いの? 」


『ちがうよ47だいめだよ!』


 妖精たちが、ルナが何代目のお姫さまに当たるのかを言い争い始めた。


「そんないい加減なら、私ですらないんじゃないの? 」


 その可能性とそう思った方が楽だと思った。ルナはチキンを焼く準備を始めた。


 玄関口からフィンリーが帰ってきた音がする。ベルが鳴っているのは、妖精たちが遊んでいるからだ。二人しかいないはずの家なのにうるさい。


 フィンリーには妖精たちのおしゃべりは聞こえないが、妖精たちの起こす怪奇現象にはすっかり慣れている。


「お帰りなさいませ」


「ただいま」


 ルナは帰宅したフィンリーを玄関まで迎えに行くと、マフラーと手袋を外したフィンリーがルナをハグしてキスをした。唇とコートが冷たい。


『フィンリーのくちびるつめたいねー』

『ほっぺひえひえー』


 ……いちいち妖精たちがうるさい。ルナの周りで実況するからムードもへったくれもない。ルナは妖精たちの声が全く聞こえないフィンリーが羨ましい。


 夕食をとり終えて、食器を片付けると、ルナとフィンリーは食後のコーヒーを飲みながら寛いで話をする。


「明後日の昼、友だちをここに招きたいんだけど、いいかな」


 と、フィンリーは言った。


「何名様ですか? 」


「三人ぐらいだと思うんだけど、その買い物は明日いっしょに行こう」


 ルナはにっこりと「お願いします」と応えた。


「それと」とフィンリーが続けた。


「そのメイドの服は、その日だけはやめてもらって良いかな? 」


「あ、ごめんなさい。つい仕事をし易くて」


「謝らなくて良いよ。ただ、さっきはハーデンさんがルナの事を紹介してくれって言う事もあるから……」


 ちょっと困ったんだとフィンリーが言った。


『ハーデンさんのむすこさんがルナのことすきだってーー! 』

『ルナはあいじんなのか? とかきかれてたよーー』


 ……妖精たちは、全部言っちゃう。


「えっ! そんな、ごめんなさい! 」


 フィンリーの言う事に少し遅れての反応に、フィンリーはルナに問いかけた。


「また何か妖精たち話した? 」


「……ハーデンさんから聞かれたことをだいたい……」


 後ろめたそうにフィンリーに伝えるが、妖精たちはどんどん話してしまう。


『ルナのことはこんやくしゃだって』

『しばらくしたらこきょうにふたりでもどるからってはなしてたよーー』


 妖精たちの勝手な報告に顔色をコロコロと変えるルナをフィンリーは観察する。


「ルナは僕と二人っきりなはずなのに、話し相手が多くて忙しいね」


 と、片膝をついて笑った。

 妖精たちは止まらない。


『メイドふくはフィンリーのしゅみなのかとかきかれてたよーー! 』

『しゅみですってこたえてたよーー』


 顔が赤くなっていくルナに、フィンリーはため息をついて、テーブルの席から立ち上がった。


「……何を聞かされてるかは、ルナの部屋で聞いてもいいかな? 」


「……はい」


 フィンリーはルナの手を引いてルナの部屋に向かった。


ーーーどこまでも妖精たちがついてくるのだけど。


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