416号室
翌日は一人で学校へ向かった。二人とも気を使ってくれたのかもしれない。
早めに家を出ていたため教室には数人しかいなかった。
しばらくして奈央は来たが、その日充希は来なかった。
帰り際、奈央が俺のところに来た。
「憲、あのさ……。今日、充希来なかったじゃん」
「ああ、風邪でも引いたのかな、昨日は元気そうだったのに」
「あのさ、それなんだけど、充希、倒れたみたい」
頭が回らなかった。
その日、学校からそのまま電車で病院の最寄り駅へと向かった。
来たことのない駅だったので少し興奮した。だが、それを言ったら奈央に怒られそうだと思ったので口を噤む。
「充希はどこが悪いんだ?」
「そこまでは聞けなかった。とりあえず着いたら聞いてみよう」
「そうだね」
歩いて十分程で病院に着いた。面会カードを受付で書き、奈央がエレベーターの四階を押す。
「416号室」
白い扉の前に立ってノックをする。
充希の声が返ってきてドアを開ける。
「一人部屋なんだね」
「そうなの、他は空いてなくて。少し高いんだけどね」
憲は思い切って聞く。
「充希、どこか悪いのか?」
「あーそれね、私癌なの、白血病っていうんだけどね。ごめんね黙ってて」
「え」
二人で唖然とする。癌という言葉の重みを感じた。詳しくは知らないがとても有名な病気だ。よくない想像が働く。
「それって治るの?」
奈央が疑問を口にする。
「分からないけど、あまり良くないみたい。さっきまでバタバタしていて、ようやく落ち着いたところなの」
「ごめんね、そんなに忙しいときに」
「ううん、来てくれて嬉しい」
その後の二人の会話は良く覚えていない。ただ呆然としていた。だけど、どこからか治るんだろうという思いがあった。
暫くして奈央が帰る様子だったので、一緒に帰ることにした。
部屋を出るときに見た充希は、寂しげに感じられた。