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第78話 発覚

 訓練はウォルス団長の監督の下、訓練場で武器を扱う練習が行われた。

 僕はその場にはいなかったので知らなかったのだが、勇者組たちは初めて訓練を受けた日にそれぞれ自分に合った武器を選ばされたらしく、今はその自分で選んだであろう武器の練習を進めている。

 

 具体的には何をしているかというと、それぞれが選んだ獲物を扱える騎士団員が指導者としてそれぞれについて、武器の取り回し方や、様々な場面での立ち回り方を教えているようだ。

 苦戦しているところは、時々団長がサポートに入ったりしている。


 ちなみに葵さんは弓を選んだようで、理由は近接戦が苦手という自己分析によるものだった。

 結果論だが、護身用リビングナイフがいれば迂闊に敵も近づけないだろうし、悪くないとは思う。

 

 それに、見ていても葵さんが訓練で木製の長弓を引く姿は中々様になっている。

 命中精度は、まだ完全とは言い難そうだが。


 そうして皆が訓練を進める中、一方で僕は何をしているかというと……【俺】に体の操縦を任せて、暇を持て余していた。

 何せ僕は、双剣に関してはAランク冒険者の動きをそれなりにマスターしている。

 言っては悪いが、一介の騎士団員に教えられる事は特にないのである。


 ならば他の武器について教えてもらえばいいのでは、となるかもしれないが実はそうもならない。

 今までもしてきたが、僕は単純な技や体捌きならその動きを見るだけで自分の物にすることが出来る。

 そのため、僕は今までに見た他の人の訓練の様子から、他の武器の扱いも訓練レベルならばマスターしてしまっているのだ。


 と、いったような状況のため、今現在僕が訓練でやるべきことといったら、【俺】に普通の篠宮努の演技をするよう指示を出すくらいものになっている。

 退屈な時間だ。

 わざわざサボる程の事でもないので、付き合っているが。

 

 しかし、どうやらそんな退屈な時間も今日は早めに終わりそうだと、僕は【俺】の視界に入ったウォルス団長に慌てた様子で何かを報告している衛兵を確認して考える。

 あの衛兵の様子を鑑みるに、何か異常事態が起きている事は明らかだろう。

 そして、直近で起こっている異常事態と言えばあれしかない。


 衛兵の報告を聞いているウォルス団長の顔つきがみるみるうちに険しくなっていく。

 報告を聞き終えた様子の団長は、衛兵に何か言うと、衛兵と共に訓練場から王城内部へと向かって行った。

 恐らくだが、事件現場に案内しろ、とでも衛兵に言ったのだろう。


 それからしばらくして、ウォルス団長が訓練場へと戻って来た。

 それはそれは、苦々しい顔をして。

 苦虫を噛み潰したような顔、という表現があるが、これを使うならば今のウォルス団長は苦虫を数匹は噛み潰していそうだ。


 訓練をしていた他の勇者組も戻って来たウォルス団長の表情を見て、一体何があったのかと、気にする様子を見せている。


「皆、訓練を一旦中止して俺のところに集まって来てくれ。大事な話がある」

 

 ウォルス団長の台詞をトリガーに、訓練場の空気が一瞬にして凍り付く。

 過去、ウォルス団長が似たような事を言った時のことはまだ皆の記憶に新しい。

 そのため、皆もしかしてと悪い想像をしたのだろう。

 そして、その想像は当たっている。


「たった今、衛兵からまた城内で死体が発見されたと報告があった。俺が直接確認したところ、その死体は橋川のものだった。本当に……すまない。また俺は、防げなかった」


 僕は【俺】がウォルス団長の話を聞いてショックを受けるふりをしているのを認識しつつも、案外死体が見つかるのが早かったな、などと呑気なことを考えていた。

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