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2-8 吸血鬼だって

一昨日(9/20)に一度間違えて投稿しておりました。その時に読んでいただいた方には申し訳ありませんが、この投稿が本筋です。

よろしくお願いします。

「おい! ヴィンターの娘。こっちに来い。お前の父親は俺たちの仲間だ」

「え? は、はい」


 ミールはしたり顔で、ミミへと声をかける。

 うん。あれは絶対よからぬことを考えている顔だ。

 耳を呼び寄せて、人質にでもしようってのか?? 言うことやること、全てにおいてむかつくやつだな。


「ミミ。あいつは吸血鬼だ。その隣りの女は俺を襲ってきたから返り討ちにした。腕が無いのは俺がその時に切り落としたからだ」

「え? それは…」

「お前には言ってあるが、吸血鬼は全員倒す。あいつらもその対象だ。ミミの親父の話は本当かどうかは分からないけど、向こう側に行くなら敵だ。」


 俺はなるべく突き放したように、冷たく告げる。ミールがバラしたせいで、ミミにもヴィンターのことを知られてしまった。

 知ってしまったのなら、本人にある程度は選択させてやろう。色々考えるのは

面倒だったんだ。そうしよう。


「ククク、確かに俺たちは吸血鬼だ。人間を超えた存在だ。人間のガキが倒すと息巻いたところでどだい無理だろうがな」

「お前には聞いていない。黙っていろ。お前の話は聞いていてムカつく」

「な!? …まぁいい。ヴィンターの娘よ。お前が仲間になるのなら、吸血鬼にして、ヴィンターと共にいることも出来るんだぞ」

「それは……」


 ミールの甘言に、躊躇いを見せるミミを見て思う。村から一人だけ生き残った少女には父親は必要だろう。でも今はミールのそばに近づかせる訳にはいかない。


「おい、黙れと言ったんだ腐れ吸血鬼。さもミミの為を思って言っているようだが、本心は違うだろ? それにミミを吸血鬼にすることが出来るのか? お前を吸血鬼にしたご主人様も、確実に吸血鬼化させることは出来ないはずだ。調子いいこと言うなよ」

 

 俺の言葉にミミは動きを止める。コーメーが説明した魔剣の能力を思い出したはずだ。俺はそのままたたみかける。


「ヴィンターというのが、ミミの父親で吸血鬼であったとしても俺のスタンスは変わらない。ヴィンターとも闘う」

「……クオンさん」

「だが、父親と話す時間ぐらいは与えてやれる。もし本当に父親と共にいたいと言うなら、否定はしない。ただあの馬鹿吸血鬼と共に行くのだけは許さない」


 俺はミミへと視線を向ける。ミールを警戒する必要はあったが、ミミのほうが優先だ。ここできちんと俺の考えを伝えるしかない。


「うるっせーんだよ。このガキはぁああ!」


 あ、あっちが先にキレた。


「ゴチャゴチャと俺を邪魔しやがって! 」

 叫びながら、懐から指揮棒のような棒きれを取り出した。


「お前なんか、これで消し炭にしてやるよ!」








     ――――――








 俺様の目の前には、炎の海が広がっている。

 先ほどまで散々生意気を言っていた小僧は、その炎の中だ。きっと全身を焼かれて死んでいることだろう。


「吸血鬼である俺様に逆らうからこうなるんだ」


 俺様は炎の領域から離れている少女へと目を向ける。

 大体あの小娘も気に入らない。あの生意気小僧に対しての人質以外にも、ヴィンターへの切り札にもなると考えていたのだ。俺に対して敬意のない態度をとる狩人が気に入らなかったので、弱みとしてもつには都合がよかったのだ。


 今は目の前の惨状に驚き動けないようなので、さっさと捕獲してしまおう。


「おいコリル、あのミミとかいう小娘を捕らえて来い」

「…しかし近くには守神様がいるので、正直私には荷が重いです」


「ちっ、使えない女だな」

 俺様は本人には聞こえないように愚痴る。


「おい、ミミ! これで邪魔者はいなくなった。さっさとこっちに来い。父親に会わせてやる」

 小娘は茫然とした表情を、だんだんと険しくしながらこちらを睨む。なんだ、あの態度は! こいつも面倒だ。人というのは馬鹿ばかりなのか?


「早くしろ! それに来るのはお前だけだ! 他のモノはその場から動くな。邪魔をすればあの男のように火だるまにしてやる」

 俺様は今しがた、圧倒的な力を見せつけた魔道具を見せつけるようにして指示を出す。これで、ビビったあいつ等は俺様の言うことを聞くようになるだろう…。


「あのさー、ミールさん。その魔道具は誰から貰ったんだい?」

「あ? なんだてめーは? 黙っていろよ」

 俺様の力にビビっていないのか?? この小人みたいな子供は笑顔を向けながら気軽に話しかけてくる。気に入らないな。


「まあ、そう言わずに教えておくれよ。言われたとおりにオイラたちはここから動かないよ。ミミもそちらに行かせるからさ。だからその代りに教えておくれよ」

「はん。仲間を売ってまでこの魔道具のことが知りたいのか? 全く人というのは哀れな生き物だな」

「そうだね。オイラも人については同じような印象を持っているよ」


 小娘は子供に促されるようにして、ゆっくりとこちらへと歩いて切くる。どうやらやっとこちらの言うことを聞くようにしたみたいだ。出来るのならさっさとしやがれ。


「…いい心がけだ。子供のくせに世の中のことを分かっているじゃないか。お前らみたいな、弱い人間は黙って強者に従っていればいいんだよ」

 小娘は俺様に恐れをなしているのか、こちらへと近づく歩みは遅い。まだずいぶんと距離がある。


「おい、なんでお前みたいな子供がこの魔道具に興味を持つ?」

 俺様は獲物が自分から来るまでの時間潰しに、話しかけてやることにした。


「簡単な話だよ。それと似ている魔道具を知っていてさ。気になっただけだよ」

 これに似ているだと? これほどの性能を持つものは世界にそう多くはないはずだ。こんな子供がそれを知っているとは驚きだが、もしその在り処を知っているようなら是非とも奪っておきたい。


「そうか。ならば教える代わりにお前の知っている魔道具の情報をよこせ。それによっては、お前らは無傷でここから逃がしてやろう」


「そうかい。それはありがたい。知っていることなら何でも話すよ」

「……よし。ではコレだがな、我々吸血鬼の主から頂いたものだ」


「主? それってもしかして守神の片割れかい? 黒い色した方の?」

「ああ、そうだ。……だが、なぜお前はそのことを知っているんだ?」

「やっぱりそうか……」

「おい、俺の質問に答えろ。何で知っている」


 急に納得したような表情を作り、考えるようにうつむく子供は、俺の呼びかけに反応しない。聞くだけ聞いて黙り込みやがって。


「もういい。魔道具のことを話せ」

 だが、またしても俺を無視する。



「もういいだろう。そのムカつく吸血鬼は倒すぞ」


 どこからか、声が聞こえた。

 声のする方へと顔を向けると、きらめく刃が目前に迫っていた。








     ――――――








(あつい)


 俺はミールからの炎を【好都合領域コンビニエント・エリア】で防ぎながらじっとタイミングを見計らっていた。コーメからの念話で、しばらくそのままで、と言われて炎の中で動かずにいた。ミミにも俺の無事は伝えてあるようで、情報を聞き出すための手伝いをお願いしているようだ。

 コーメーとミールとのやりとりは念話で教えてもらっていたが、あつさにノックダウン寸前でそれどころではなかった。コーメーは幾つか聞き出したい、と言っていたがそんなに待てない。


 それに、たまに聞こえるミールのわめき声が癇に障ってイライラとしてくる。魔剣のおかげで、たまたま吸血鬼になった高飛車な男の勘違いな言葉は精神を逆撫でしてくる。バスタリアのバカ王子とはタイプは違うが、同じレベルの嫌悪感を持ってしまう。


「やっちゃおう」

 

 ミールからは大した情報は得られないと思う。神官と繋がりがあるわけじゃないだろうし、きっと利用されているコマ扱いだろう。それに俺を殺しに来たんだから、殺し返しても問題ないだろう。そんな奴のために我慢するのもバカバカしい。よし!

 俺はあつさで朦朧とする頭で決定を下す。


 亜空間から【三日月の斧(クレセント・アックス)】を取り出すと、コーメーに言葉を告げながらミールへと投げる。


 当たった手応えのようなものを感じながら炎から飛び出す。新鮮な空気を吸い、火照った体を冷ましていく。

 俺の攻撃はミールの顔を半分に切断させたようだ。目がキョロキョロ動いているのでまた滅んではいないようだ。



「しぶといな。さすが吸血鬼様だ。顔が半分でも平気みたいだ」


 俺はミールへとゆっくりと近寄りながら三日月の斧を手元へと戻す。トドメを刺そうとするが、目の前にコリルが立ちはだかる。


「ミール様はやらせません」

「邪魔をするなら、あんたからだ」


 まえに対峙した時以上の圧力プレッシャーを放ち、爪による攻撃を仕掛けてくる。その勢いに押され、数秒ほど回避に徹することになった。


「随分と気合が入ってるな?」

「……」


「だんまりか。…お前の何がそうさせる。あのミールはそんなにしてまで守る存在か?」

「…お前に何がわかる? 黙って私にやられなさい!」


 さらにスピードが上がり、紙一重でやっとかわせる程だ。コリルの爪は頬を掠め、髪の毛先が切られて宙を舞う。改めて吸血鬼の身体能力に驚かされる。


「俺は何も分からない。知らないからな。でも知りたくもない。お前にとってどんな存在かは知らないが、俺にとっては敵でしかない」

「……くっ」


 コリルの顔つきが変わる。どうやら俺の攻撃に気づいたようだ。俺は避けながら、腕に棒手裏剣を叩き込んでいた。杭のように腕に刺さったそれらは、腕の可動域を制限している。徐々にコリルの隻腕は満足に動かすことができなくなった。有効な攻撃手段を持っていないのか、コリルからの攻撃が止まった。

 爪による攻撃が途絶えたので、トドメを刺すべく心臓部に目掛けて拳を放つ。


 俺の右手はコリルの胸へと突き刺さり、親指サイズの魔石を掴んだ。引き抜こうとしたその瞬間に、コリルは牙を剥き噛みついてきた。その牙を左手のミスリルの手甲で受ける。


「あんたはよく頑張ったよ」

 気休めにもならないような言葉をかけて、俺は魔石を引き抜いた。コリルはミールへと振り返り、そのまま灰になってゆく。どんな顔でミールを見つめているのか、俺からは見えない。

 コリルが灰になると、一本の短剣が残った。魔力を感じるので何かの魔道具かもしれない。俺はそれを亜空間へとしまうと、再びミールへと向かう。


 ミールは二つに割れた顔を徐々につなぎ合わせている最中だった。吸血鬼の回復力に驚かされるが、感心している場合ではない。


 何か言いたげな視線を無視して、俺はミール灰へとかえした。

 近くには炎を生み出していた指揮棒のようなものがあったので、忘れずに回収しておく。


「本当に吸血鬼だったんですね」

 いつのまにか、ミミが近くまで来ていた。


「なり損ないと同じで、最後は灰になるようだな」

 俺は気のない返事をして、耳へと顔を向ける。


「このまま吸血鬼を倒しに行くけど、付いてくるか?」

 俺は何でもないことのように、声をかける。俺の言う吸血鬼とはミミの父であるヴィンターも含まれている。ミミもそれを理解しているのか、表情を固くする。


「行きます。最後までお願いします」

 考えるそぶりさえ見せずに返事をするミミに、そっと頭を撫でてやり笑いかける。


「ハクから離れるなよ。さぁこのクソッタレな状況を終わらせに行くか」


 ミミは頭に乗せられた俺の手を握り、手を繋ぐようして俺の隣に並んだ。


明日にも投稿予定です。


よろしくお願いします。

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