第68話 余韻とカルテ
研究室・臨床後
拘束具が外され、篠原はゆっくりと上体を起こした。 肩で荒く息をするたびに胸が大きく波打ち、汗が肌を伝って滴り落ちる。 「……っ、はぁ、はぁ……」 解放されぬまま寸前で切られた身体は、なおも虚ろな震えを残していた。
(……止められた……。あのままなら……っ)
羞恥と悔しさが入り混じり、胸の奥が焼けるように疼く。 だが声に出せば、委員長の立場そのものが崩れてしまう――言葉は喉で潰れた。
深雪は変わらぬ無表情で端末に記録を打ち込み続ける。
「――閾値直前での持続、確認。反射と報酬系が過敏化し、理性の抑制は限界まで摩耗。 臨床的に十分な価値があるデータです」
その冷徹な声に、篠原は思わず顔を背ける。 (……私の身体を、“データ”としてしか見ていない……)
被験者カルテ(篠原美沙子)
被験条件:多点センサー装着、刺激レベル=中強度
反応経過:閾値直前で持続 → 波形安定、心拍増幅、膣内導電度上昇
観察所見:尿道圧迫感を伴う潮吹き誘発寸前で停止 → 持続的緊張を確認
心理所見:委員長としての理性を維持しようとするが、発話は途切れ、羞恥・否定は有効な抑制にならず
総括:被験者は閾値突破可能性を有するが、寸止め状態においても十分な過敏化・摩耗を呈す
今後の方針:再現性検証のため、次回は拡張型センサーによる局所刺激(Gスポット領域)を計画
「閾値直前での寸止めは有効。だが次は、局所に直接経路を刻ませる。
誤差ではなく、再現可能な真実として――篠原委員長の身体に」




