第66話 多点センサーの導入
研究室・午後
白光に照らされた研究室に、再び篠原の足音が響いた。 扉を閉じると、深雪は既に準備を整え、端末の前に立っていた。
「……本日は、条件を揃えた再現試験です。前回と同じ誤差確認の一環として」 淡々とした声。その隣の台には、新しい装置が静かに待っていた。
篠原の視線がそこに吸い寄せられる。従来の電極とは異なる、わずかに膨らみを帯びた形状。 「これは……?」
深雪は迷いなく答える。 「拡張型の多点センサーです。膣壁の広い範囲を同時に計測できる仕様に改良しました。 導電面が細分化されているため、局所的な反応も“誤差”と切り分けやすい」
篠原の胸がわずかに上下する。 (……つまり、局所の揺れも逃れられない……)
深雪は手早く記録用紙を差し出した。 「ご確認ください。目的は“閾値前後の再現性評価”。――条件は前回と同様、外乱要因なし」
委員長としての理性が、署名を拒めない。 篠原はペンを握り、細い文字で名前を書き込んだ。
深雪は静かに頷き、拘束台の準備を始める。 「では、患者着に着替えてください。下着は前回と同条件で」
わずかに指が震えた。だが篠原は無言で頷き、準備室へと姿を消していった。
拘束台上
準備室から戻った篠原は、前回と同じ患者着に身を包んでいた。 下着は身につけていない。白布越しの身体が、白光にさらされる。
深雪は無言で手袋をはめ、篠原を拘束台に導いた。 ベルトが腕と脚を固定し、胸部と腰の電極が次々と接触する。 最後に――新型の多点センサーが慎重に膣内へと挿入された。
「……っ」 豊満な下腹部がかすかに震え、篠原の眉が寄る。 (……従来のものと違う……広い面で、内壁を……)
端末には複数のラインが同時に走り、局所の反応を鮮明に拾い上げていく。
深雪の声は平板だった。 「前壁、接触。――記録開始」
センサーが角度を変え、前壁をなぞった瞬間、赤いスパイクが鋭く跳ねた。 「……っ、あ……!」 篠原の喉から抑えきれない声が漏れる。
深雪は表情を変えず、センサーをわずかに押し上げる。 再びスパイク。さらにもう一度――波形は同じ位置で跳ね上がった。
「局所反応、再現性あり」 淡々とした声が突き刺さる。
「……ち、違っ……これは……!」 篠原は必死に否定するが、胸は荒く上下し、乳頭の電極が鋭く反応を刻む。
深雪は容赦なく記録を重ねた。 「同一点で三度目。……閾値直前、安定したピークを示しています」
(――……ここが……私の……!) 篠原は唇を噛む。 声にせずとも、身体が応え、波形が答えを刻み続けていた。




