↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女医乃深雪の記録ー快楽の追及ー日常侵食編  作者: 女医乃深雪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/147

第45話 報酬系の奴隷


深雪は端末に指を走らせ、久慈主任の波形を呼び出した。 (……ここを明確に定義しなければ、研究は進まない)


研究記録メモ:閾値とは


刺激に対し、生体が「何も起きない」から「全身が反応する」へ切り替わる境界点。


疼痛研究では既に解明済み。一定強度を超えれば神経は必ず痛みを伝える。


しかし快楽では、この境界の仕組みが未だ不明。


「……久慈主任の波形は、その閾値を越えた証明だ。疼痛と違い、快楽は一線を越えた瞬間に質が変わる」


深雪は赤く跳ね上がる曲線を拡大し、指先で追った。 「この変換点を再現できれば、快楽を数値で制御できる。……だが突破だけでは足りない」


カーソルが瞬きを繰り返す。 「次に必要なのは――臨床。そして、“突破の固定”だ」


研究記録メモ:閾値寸止め継続


脊髄反射:閾値寸前の発火が途切れず続く。全身は反応を積み重ねるのに、解放は来ない。


側坐核(報酬系):ドーパミン放出が高まり続けるが、報酬は与えられない。結果、飢餓のように回路が敏感化する。


前頭前野(理性):制御を続けるが、やがて摩耗する。理性そのものを削る過程になる。


扁桃体(情動):緊張が持続し、不安と快楽が同時に強化される。


海馬(記憶):この“渇き”は強烈に刻まれ、二度と消えない記憶になる。


「寸止めは、与えない実験ではない。報酬系を追い込み、理性を削り、恐怖すら快楽に混ぜ込む……突破よりも残酷で、持続的」


深雪の瞳に一瞬だけ熱が宿る。 「もしこの状態を自在に制御できれば――人間の意思そのものを作り替えられる」


研究記録メモ:閾値継続とは


快楽の閾値を越えると、一時的に理性回路(前頭前野)は沈黙する。


疼痛では閾値を越え続けると「破綻」=ショック状態になる。


だが快楽では、閾値を維持することで「破綻」ではなく「同化」=新しい基準値を形成する可能性がある。


(例:ランナーの陶酔・依存症患者の“常用量”の拡大)


仮説


閾値直後の状態を長時間維持 → 脳内回路が再配線される。


「快楽が常にある」前提が刷り込まれ、報酬系は通常活動に対しても過剰反応を返す。


結果:従属・依存の固定化。


「……疼痛は避ける学習を残す。快楽は、迎えに行く学習を刻みつける。 もし閾値継続が可能になれば、人間の意思は“報酬系の奴隷”に書き換えられる」


深雪は端末に打ち込みながら、跳ね上がった久慈の波形を見据えた。 (……次は、突破点だけでなく、その“持続”を記録しなければならない)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。