まだ見ぬ未来へ
周囲に何もない荒野に移動して対峙するのは、互いに巨大になったアタシと女悪魔だ。
そして少し離れた安全な場所には多数のヘリや車が待機しており、現場の様子を常に全世界に中継し続けている。
しかし魔王の顔色はとても艷やかだが、自分は疲れた表情でげっそりとしていた。彼女の全身くすぐり攻撃により、今すぐ布団に潜り込んで朝までグッスリ眠りたいぐらい精神的疲労が溜まっているのだ。
「ママぁ…大丈夫?」
「これが大丈夫に見えるなら貴女の目は節穴だよ!
さっきは自分が楽しみたいから、わざとゆっくり飛んでたでしょう!」
「えへへっ、バレちゃった?」
イタズラがバレた子供のように舌をペロリと覗かせ、彼女の頬がほのかに朱に染まる。見た目は妖艶な美女なのだが、全体的に精神年齢が若いと言うか何ともちぐはぐなのだ。
尻尾でくすぐられて悶える姿が全世界に生放送されたしまったことで、アタシは羞恥心で顔を赤くしながら声を荒らげて女悪魔に話しかける。
「あと! 貴女の名前は! たっ…戦う前に一応話し合いをね?」
「えー! やだやだー! お話し合いより、ママと一緒にプロレスごっこがしたいよー!
さっきは出来なかったチューチューをしたいー!」
戦闘=プロレスごっことは、どれだけアタシとニャンニャンしたいのか。もし彼女が本当に自分の娘だった場合、母親とやるのは論理的に思いっきりアウトだ。
交渉が通じる魔王との殺し合いと同様に、女同士で非生産的な行為に勤しむのをアタシは望んでいない。
だが最近は貞操観念の防衛戦が色々と崩壊しかけており、強引に迫られれば受け入れてしまうほどの危険域に突入している。
「どうどう! とにかく落ち着いてよ! そっちはあとで付き合ってあげるから」
「本当に? ママといっぱいチューチューできる?」
「えぇ…そっ、…それは」
アタシが付き合うのは交渉が決裂した場合の戦闘行動だ。そう口に出したいのだが、GB本部からはとにかく今は黙って頷いておけ! …と、強い命令口調でいいから続けろとゴーサインが送られていくる。
そのため、若干顔を引きつらせながら女悪魔に肯定を返す。
「うっ…うん、チューチューさせて…あげる…よ。…多分」
「わあいっ! やったー! ママとチューチューできるー!
…うん! それじゃ何でも聞いてね!」
アタシは嘘をつくのは苦手で、嫌いなので胸が痛む。彼女にはあとで誰にも見られない場所で、こっそりとチューチューさせてあげないと…と、心の中で諦めたような溜息を吐く。
「あー…取りあえず立ち話も何だから座ろうか」
「うん! ママ! 大人しくお座りしてるからナデナデして!」
「うえぇ…うう、何でこんなことに!」
あぐらをかいて腰をおろすアタシの上に、自分よりも年齢が上の美女が背中を向けてもたれかかってくる。
そのまま艷やかな紫の髪をグイグイ押しつけてくるので、きっと撫でて欲しいのだろう。そこから漂ってくる甘い香りも霊力が混じっているが、邪悪な感じはしないのできっと無自覚だ。
だがここで渋っていては話が進まないため、仕方なく女悪魔の髪をそっと指で梳いてあげると、魔王は体を小刻みに揺らしながら上機嫌で元気良く喋り始める。
「プロトの名前はプロトだよ!」
「プロトって言うの? それが貴女の名前?」
「違うよ! 名前はないの! でも偉い人間たちはお前はプロトタイプの魔王だ! だが出来損ないだって! そう呼ぶの!」
いきなりの重い過去を聞いて一瞬硬直するが質問を止めるわけにはいかない。髪を撫でる手を止めずに、声を震わせながら質問を続ける。
だがプロトは気にしていないように機嫌良く話してくれるので、彼女が内心で何を考えているのかはわからない。
「その、魔王って何なの?」
「プロトにもよくわからないけど、偉い人間たちはね。
ママの細胞に魔族の因子をかけ合わせれば、凄く強い魔王になるって聞いたよ!」
そんな闇が深い話、アタシは聞いてない。そもそも論理的に認められるわけがないし、知ったら絶対に計画を潰しているはずだ。
プロトの髪を撫でながら、顔だけを明後日の方向に向けて重苦しい溜息を吐く。
「それは初耳なんだけど」
「それはそうだよ! だって魔王計画はママが死んだあとに始まったんだもん!」
秘密結社は現代過去未来の時間軸の中から、この世で一番強い魔王を召喚したとか言っていた。
だが未来の大人たちは出来損ないの魔王と蔑んでいる。しかし結社は彼女の召喚は大成功と褒め称えた。何とも辻褄が合わない。
「あのさ。プロトは強いの?」
「凄く強いよ! でも偉い人たちの命令を聞かないから出来損ないだって!
だからプロトは五年しか表に出られなくて、あとはずっと寝てたの!」
確か制約や色々な縛りを行おうとしても、吸収したり弾かれてしまったと聞いた。未来の世界でもプロトに命令したが、彼女はきっとそれを無視して五歳児らしく自由奔放に暴れ回ったのだろう。
今はアタシに髪を梳かれるのが気持ちいいのか、幸せそうな表情で鼻歌を歌っている。しかし巨大サイズで暴れられたら、溜め込んだ霊力が尽きるまでは誰にも止めることは出来ない。
「じゃあ、プロトはどんな目的で作られ…ううん、生まれたかわかる?」
「わかるよ! 地上の魔族を一匹残らず駆逐するために作られたんだよ!」
魔族と言うのは妖怪や妖精、人魚や吸血鬼等、人間以外で霊力を持つ者のことだろう。それを根絶やしにするためにプロトが作られたという未来では、一体何が起こっているのだろうか。
「えっと、何でそんな酷いことになってるの?」
「ママが死んじゃったからだよ!」
「あっ…アタシのせいなの?」
自分は人間なのでどれだけ長生きしても百歳が限界だ。生まれ落ちた以上は、遠からず死ぬことは避けられない。
とにかく続きが気になるので、魔王の紫色の艷やかな髪を優しく撫でながら静かに待つ。
「ママは二十歳になる前に死んじゃうんだよ!」
「うええっ!? あっ…アタシ、そんなに早死するんだ!」
「女の子同士のプロレスごっこをしてる最中なんだけどね!
日々強まる魔性の快楽に耐えきれなくなって、ママは天国に逝っちゃったんだって!」
穴があったら入りたい気持ちだ。今の会話は全世界に生放送されている。未来の自分の死因はとりあえず横に置いておく。
と言うよりこれ以上踏み込みたくないので、思わず天を仰ぎながら絶望の言葉を口に出す。
「そんな死因は知りたくなかったよ!」
アタシからは見えないが、きっとまた顔が真っ赤になっていることだろう。今はとにかく一刻も早く、別の話題に変えたかった。
「とっ…とにかく! 何でアタシが死んだだけで、世界が酷いことになっちゃったの!」
「えっとねぇ。ママが間に入ることで人間と魔族は良い関係だったんだけど。
死んじゃったあとは、利権…や、差別、奴隷、領土、そんな色々な問題が一気に表面化して世界中で戦争が起きたんだー! …って教えられたよ!」
知りたくなかった未来の知識を立て続けに聞かされてしまった。精神的に五歳児のプロトはあまり意味がわかっていないらしく、ウンウンと思い出しながら説明してくれた。
一方アタシは未来の自分の世界平和への貢献度に感心する。
「それでどっちが勝ったの?」
「魔族だよ! 人間は二度と逆らわないことを条件に、許してくれたんだって!」
話の流れ的に気になったから聞いてみたものの、そもそも彼女は魔族を駆逐するために生み出された。
だが人間が戦争に負けたのなら、その後にプロトの出番は来ないはずだ。
「もしかして反乱軍?」
「うん! 魔族は人間に失望して隠れ里から出て来なくなったんだけどね!
世界中の偉い人たちは何としても駆逐するんだって、逆らい続けたんだよ!」
戦争で家族や友人を失った人も居るだろうが人類は敗北した。そして二度と逆らわないことを条件に魔族は隠れ里に引き篭もった。憎しみは消えないどころか泥沼化している気がする。
未来の世界に絶望しか見えないが、少なくとも自分が生きている間は大丈夫だ。そう無理やりにでも前向きに考えなければ、変な叫び声をあげてしまいそうだ。
「それでプロトは何でこの時代に来たの?」
何とか呼吸を落ち着けると、アタシは目の前の魔王にさらに尋ねる。
「プロトは戦う以外は知らなくて、ずっと一人ぼっちで寂しくて、胸が苦しかったの!
そんなときに偉い大人から、魔王たちの体の素体になったママのことを知ったの!」
何故そこで一般人のアタシなんだろうか。もっと優れた霊能力者など星の数ほど居る。しかし何となくだが見当はついている。
人外から異常なほどに好かれやすく、彼女たちから多量の霊気を受けて巨大化しても、副作用や拒絶反応が一切起こらない。そんな相性抜群の肉体を持っているからだろう。
「それでプロトが出来損ないとして焼却処分される時に。
消える前に一度でもいいからママに会いたいよー…って、神様にお願いしたの!」
そこから先は何となくだが想像がついた。プロトは死の直前に持てる全ての霊力を使って願ったのだ。それが結社の召喚魔法に引っかかり、この時代に呼び出された。
彼女が消えた未来は変わらず先に進んでいくが、この場に魔王が居る現代は同じ道筋を辿ることはない。
とても面倒な事態になった。だがこのままでは絶望の未来編に一直線だとわかったので、頭のいい人たちが何らかの手を打つだろう。それで少しはマシな結末になるはずだ。
アタシが考えを整理して気持ちを落ち着けるために深呼吸をしていると、今まで静かにしていたプロトが頬を朱に染めて、モジモジしながらこちらを見つめてくる
「ねえママぁ。そろそろチューチューしても、…いいよね?」
「えっ? それは…待って! 待ってよ!」
アタシが待てと言ってもプロトが止まらないことは明白であり、不意を突かれて抱きつかれてしまい、あっさりと仰向けに押し倒される。魔王の向こうには綺麗な青い空が見えた。
今日はとっても良い天気だと現実逃避したいが、そんな状況ではない。プロトは瞳を潤ませたまま、柔らかそうな桜色の唇を近づけてくるのだ。
最初のようなお遊びの接吻ではなく、全力全開のディープキスをする気だと本能で理解した。
「待って! …チューチューの前に! プロトは巨大化を解こうね!」
「どうして? 元の大きさに戻ったら、魔族をやっつけるのが面倒になるよ?」
「魔族なんてやっつけなくてもいいから!
巨大化をとっ…解いてくれたら! 好きなだけチューチューしていいから!」
とうとう禁じ手を使ってしまった。アタシから持ちかけたので責任を取らないといけない。だがここで自分が吸い尽くされて天国に逝ってしまうと、プロトを止められる者が誰も居なくなる。
たとえ娘から恥辱を受けることになろうと、人間界が滅茶苦茶になるよりはマシだ。
「それってママからもプロトに、チューチューしてくれるの?」
「えっ…? あっ…もっ、もちろんだよ!」
「わかった! でも小さくなるのはママも一緒だよ! えへへっ、楽しみー!」
ひょっとして自分はとんでもない口約束をしてしまったのでは。しかし目の前まで迫った世界の危機よりはマシだと信じている。
内心は穏やかではないが、ともかく巨大化を解除するように守護霊にもお願いする。
「えへへー! 小さくなったよ! ママ! チューチューしてー!」
プロトは約束はきちんと守る子のようで、アタシにピッタリとくっつきながら一緒に小さくなり、すぐに成人女性のサイズまで背丈が縮まる。
嬉しそうにチューチューをせがむ未来の娘に、己の不運を嘆きながらも仕方なく承諾する。
「ううぅ…どうしてこんなことに…! はぁ…わかったよ」
覚悟を決めた以上は、パパっとやって終わらせるに限る。自分からするのは初めてだが、ここで躊躇っていては魔王に何をされるかわからない。
なので彼女の両肩に手を置いてプロトの柔らかそうな桜色の唇に近づける。やがてアタシの唇と軽く触れ合う。
「これで約束は果たし……にょわっ!?」
「ママ…大好き! ママー! もっとちょうだい!」
約束通りにキスしたので、すぐに離れようとした。だがプロトはそれを許さずにアタシの後頭部に両手を回して逃げ道を塞いだところに、今度は向こうから唇を近づけてくる。
そのまま無理やり唇を重ねて、流れるようにサキュバスの赤く舌を入れてこちらの口内を激しくかき混ぜる。
プロトの本気の接吻を凄まじく、あまりにも強烈な刺激にアタシは意識を保つことが出来なかった。
瞬く間にフニャフニャに弛緩させられて、アタシはあっさりと幸せな夢の世界に旅立ったのだった。
目覚めたのは丸一日経ってからだった。その状態のアタシはまだ足腰に力が入らずに、頭の中もピンク色で心地良いまどろみの中を彷徨っていた。なお、意識が正常に戻るまではさらに一週間がかかった。
だが別に肉体的に異常があるわけではない。表向きは何もおかしなところがないので森久保家で養生という形になった。だがその間に色々とやらかしてしまった。
アタシは自室のベッドの上で実体化したエルザを前に、土下座をしていた。ちなみに双方ともに素っ裸であり、時刻は平日の真っ昼間だ。
「別に謝らなくても構いませんのに」
「謝らないとアタシの気が済まないんだよ! うぅ…色欲に溺れていたとはいえ、何て酷いことを!」
あのときサキュバスのプロトの本気のキスで理性が蕩けてしまったアタシは、頭の中がピンクのお花畑になっていた。
その状態は一週間ほど続いて森久保家で養生していたが、今ようやく正常に戻った。しかしあろうことか、ベッドの上でエルザとニャンニャンしている最中にだ。
「お相手は私だけではありませんし、精算しようとすると余計面倒になりますわよ。
この際、諦めて受け入れるべきだと思いますけど」
「そのお相手って…なっ、何人ぐらい?」
顔をあげて恐る恐るエルザに尋ねる。一時的に理性が崩壊していたことを言い訳にして、無理やり肉体関係を迫ったのだ。これは断じて許されるものではない。
相棒の守護霊は自分のことを気に入っているので喜んで行為に及んだが、他の者は内心腸が煮えくり返っている可能性が高い。
ならばやはり精算するべきだ。森久保除霊事務所のメンバーならば、まだ穏便に済ませられる。誠心誠意謝って慰謝料を払い、裁判だけは許してもらおう。
「ええと、…この白百合名簿によりますと」
「用意がいいね」
「こうなることは予想出来ていましたの。
それよりもですわ。まずは森久保除霊事務所のメンバー全員と行為に及びましわね」
白百合名簿が何かは知らないが、アタシの被害者の会のようなものだろう。今は自分はエルザの前で正座して顔を俯かせ、沙汰を待つ罪人の気分だ。
まだ予想の範疇だが背筋がゾクリと寒くなる。
「それ以外に沙紀との肉体関係を求めたのは、河童、人魚、天女、ドリアード、アルラウネ、エルフ、吸血鬼、妖精…それぞれの住人ですわ。
回復するまでは一週間と早かったですが、何とか一周は出来ましたわね。
各部族の上層部には大変満足したらしいですわ」
予想以上の大事件になってしまっている。アタシは顔を青くしてガタガタを震えるが、もはや慰謝料で穏便に済ませられそうにない。
何処かの校長先生が多くの女性と肉体関係を持ち、表沙汰になって逮捕されたニュースが頭に浮かぶ。
アタシもきっと同じような記事がかかれるになるのだと、目尻に涙が溜まってくる。
「どっ…どうしましたの!?」
「うぅ…エルザはアタシが刑務所から出てくるまで、友達で居てくれる?」
「沙紀とはいつまでもお友達ですけど、誰も訴えませんわよ」
実体化しているエルザが涙を指でそっと拭ってくれたので、アタシはハテナと首を傾げて話の続きを待つ。
しかし肉体関係を持ってしまったのは事実で、理性崩壊を言い訳にしても限度というものがある。
「まずこれは、沙紀から迫ったわけではありませんの。
私たちが理性の壁が消えたのを絶好の機会と判断し、心だけでなく体も求めたのですわ」
彼女の話が事実だとすると被害者と加害者がそっくりそのまま入れ替わる。アタシが断りきれずに襲われて、ベッドの上で散々搾り取られたほうなのだ。
「予想通り沙紀は私たちを受け入れて、各々の希望通りに愛してくれましたわ」
そのときのことを思い出したのかエルザは胸元に両手を組んで頬を染める。そのまま切なそうに身動ぎする。
行為中の体の感覚とかはどうやって補うのだろうかと思ったが、今口を挟むのはよろしくないと感じて、黙って続きを待つ。
「それに沙紀と私たちが親密な関係になるのは、今では国を挙げて推し進めていますのよ」
「どっ…どういうことなの?」
そこからは少し長かったので簡潔にまとめると、プロトがアタシに語った未来の状況を知り、人類はこのままでは不味いと危機感を覚えた。
一番良いのは各国に存在する隠れ里と、話し合いで解決することだ。しかしこれまで通りではアタシが行為中に早死して、八連合の協力を得られなくなる。その後の歩み寄りは一気に難しくなるだろう。
それらを考慮した結果、まずは人間と魔族が共通の目標を見据えて、協力体制を取ることに決定した。
共通の目標とは第一に森久保沙紀の延命であり、第二にアタシが少しでも多くの魔族と友好を深めることだ。
そのための特例として人間界の法律を気にすることなく、隠れ里の決まりごとを優先してニャンニャンし放題だ。
そうエルザは説明してくれた。
「あとは定期的に医師が診断に来るのと、八連合の霊薬を飲んで健康体を保つようにですわよ」
つまりアタシに何が何でも死ぬな。あとは八連合以外の全世界の隠れ里とも交渉をして、親睦を深めろと言うのだ。何という無茶振りをしてくれるのか。
若いうちに逝きたくはないが自分一人の身に世界の命運がかかっているかと思うと、どうにも気が休まらない。
「そう言えばエルザ、プロトはどうなったの?」
「無罪放免とはいきませんが、人的被害は秘密結社だけですわ。
それにプロトは不幸な身の上で、強引に召喚されただけですのよ」
どうやらプロトが現代社会で爪弾きにされることはなさそうだ。アタシはホッと一息ついて控え目な胸を撫でおろす。
核爆弾よりも怖い魔王を怒らせたら、今度こそ世界がヤバイのだ。
「未来の知識と桁外れな霊力、善悪の判断がつかずに堪え性のない童子のような性格。
何より沙紀をママと慕っていますので、森久保除霊事務所で預かることになりましたわ。
今日は居間で皆とテレビゲームをして遊んでいますわよ」
成り行き上仕方ないが正直プロトの面倒は見たくない。別に嫌っているわけではないが、苦手意識を持たされてしまったのだ。
「そのうち慣れますわよ」
「だと良いけどね」
体に覚え込まされたと言うべきだろうか。ともかく魔王を目の前にすると自然に内股になってしまいそうで、今から戦々恐々としているのだ。
「それよりも、途中でしたしそろそろ再開しませんか?」
「えっ……いや、あの…アタシたちは女の子同士だし、もうこれ以上は必要な…」
正気に戻ったアタシの言い訳を封じるようにエルザがベッドの上に仰向けに押し倒し、流れるように唇を重ねてくる。
だが舌を入れるわけではなく、お互いの愛を確かめ合う優しいキスだ。
この一週間でアタシの体に念入りに覚えさせられたのか、一度受け入れてしまえば、あとは坂道を転がり堕ちていくだけだ。気づけば自分からエルザを求めて、舌を絡めていた。
プロトの世界では自分はそれであの世に逝ったようだが、こっちではサポート体制は万全なので大丈夫だろう。
アタシの寿命が延びれば人間と魔族が歩み寄る時間が増える。もしも天寿を全うしても変わらなければ、それはもう諦めるしかない。
そこまで責任を持てないし死後に頑張る義理もない。自分は今までと同じでインドア派を通すだけだ。
そんなことを考えながら守護霊のエルザと愛を確かめ合うために、ベッドの上で互いの肢体を交わらせるのだった。




