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白銀のヴァールハイト  作者: A86
3章 ユーバーファル
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第47話 散策

 翌日、ダニエル先生を含め騎士団の人達は地下道を調べに街へと向かった。ちなみにこの地下道というのは下水道のことである。

 今日は仕事が特にない。つまり、一日中自由時間なのだ。俺は少しでも給仕の人達の手伝いをしたほうがいいと言ったが、その提案は即却下された。よって今日はホテルの散策をすることになった。


「リアムも行こうよ。探検」


「……俺はいい。宿題があるから」


「そっか、じゃあ4人で行こうー」


こうしていつもの4人組で、ホテルの散策が始まった。じゃんけんで俺とクレア、アークとミリーネに分かれて行った。


「このロビーにあるシャンデリア大きい……」


「ああ確かに、とりわけここは豪華だな」


 改めて見るとここのロビーは大きかった。巨大なシャンデリア、大理石の床などだ。このホテルは貸し借りの状態だけれども、誰かここに泊まる人がいるのかな。この街が観光に向いているようには見えないんだけど。


「やぁ、君達。調子はどう?」


「コンラッドさん……奇遇ですね。ダニエル先生と一緒に下水道の調査に行ったのかと……」


「まだこっちで仕事が残っているからね。それよりここで何しているの?」


「ホテルを散策しているところなんです。どこかおすすめの場所とかありますか?」


 コンラッドさんは考えた様子をした。すると何か思いついたようだ。


「最上階にある展望台はどうだい?あそこは見晴らしもいいからさ」


「そうですか。教えてくれてありがとうございます」


 エレベーターに乗って、俺は最上階のボタンを押した。エレベーターの扉が閉まりゆっくりと上昇し始める。

 そういえば、アランの母親はどこに行ったのだろう。ホテルを回ってみたが、母親らしき人物は見かけていない。盗み聞きをしてた時、影しか見えなかったからもうすでにすれ違っているかもしれないな。単純に分からないだけで。


 展望台に着いた。クレアは真っ先に外の景色を見る。


「わぁすごい。本当にいい眺め」


 確かにそうだ。家が何軒か建っているが遠くには山が見えている。その風景に真っ白なカーペットが上から覆いかぶさっていた。


「デューク見て!あれ飛行機雲だよね」


「本当だ。しかも綺麗な形を保っている」


 クレアは手すりにしがみつき、雪景色を見ている。こんなにはしゃぐクレアは中学の時以来だな。再会をした後はどこか控えめな性格になっていたが今見ているクレアの方が本物なのかもしれない。それくらい、まだ俺に遠慮がちになっているのだ。


 誰もいない展望台で俺とクレアが外の景色を見ている。この光景を何て言うんだろう?デート?いや、違う違う!そうじゃなくて……。


「初めて出会った時のこと……覚えてる?」


「え……いや、どうかな」


「……そうだよね。4歳の頃だもの……。覚えてないか……」


 初めて…クレアとリックに出会ったあの日。本当はよく覚えている。見たことがない土地で慣れるのにとても苦労をした。両親は二人共人間で、俺だけが獣人であることにいつもいじめられていたのだ。

家にも戻らず、茂みで泣いていた時にリックと出会った。


――こんなところで何してるの?お父さんとお母さんが心配するよ。


 帰りたくない……そう答えて、俺は事情を全て話した。リックはしばらくの間考えると、こう言った。


――じゃあ僕と友達になろうよ。そうすれば君は泣くことはないでしょ。いじめられても助けることができる。


 ゆっくりと顔を上げて、リックの顔を見た。彼は……笑っていた。純粋に、嘘という言葉が存在しない表情。俺はあの時こう思った。この人と一緒にいれば何か変わるんじゃないか?……この人と一緒にいたい。そう感じたのだ。


 その後にクレアと出会って、俺達は3人でよく遊んでいた。来る日も、来る日も。楽しかったな、あの時は。


 気付けば日が沈みかけていた。何時間、ここにいたんだろう。クレアは……眠っていた。


「起きろ……クレア」


「う……ん、今何時?」


「五時くらいじゃないかな。さて、そろそろ戻るか」


 その時だった。エレベーターが開くと同時にアークとミリーネが展望台に入ってきた。二人共焦っている感じだった。


「よかった、ここにいた……。早く来て!大変なの!」


「一体どうしたんだ?」


「いいから!」


 鋭い、切羽詰まった声で言った。俺とクレアは二人に押されて、エレベーターに乗り込む。ミリーネが一階のボタンを押した。エレベーターは、ゆっくりと……下降していった。

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