完成図2(枠組み)
『さてと、どこから取り掛かろうか……』
結局、昨日は【やる気】も失せて部屋の片隅に放置したパズルだったが、買ってしまったものは仕方がないと半ば諦め状態で、部屋の中の不要物を片付けてからパズルを袋から取り出した。
『と、言ってもジグソーパズルなんて久しぶりだな。……以前やった時は……、そうだ! 周りだ。周り、んと……枠組みから始めるんだったな』
小さなパズルを眺めながら、気の遠くなる思いの中、僕は袋の中から蓋の中に全てのピースを移し替えると、パズルボードの上に枠組みになる隅と端のピースを取り出し始めた。
『それにしても小さい! まだ若い筈なのに老眼になった気分だ。ふぅ〜! 端っこって何個あるんだ!?』
そう思うのも無理はない。普通のパズルピースの10分の1の大きさなのにもかかわらず、普通のパズルであれば124個のところが、こいつは1296個もあるのだから。
1292個の端ピースと、4個の角ピースを探し続ける。途方もない話だった。朝起きて、部屋の片付けをしてから始めたというのに、昼前にして、まだ端ピースを探しているのだ。角ピースは見付かった。しかし、端ピースを繋げ合わせながらの作業は、僕を次第に発狂させ始めていた。
『あ〜! もう! 休憩! 休憩だ!』
小さすぎるパズルピースを見る事に飽きてきた僕は、一先ず休憩がてら昼食にする事にした。
今日の昼食はインスタントラーメンにする。鍋に水を入れ、お湯を沸かすと袋から取り出したラーメンの塊を投入する。同時に餅を2個入れグツグツしたお湯の中で、ラーメンがほぐれていくのを見ながら、餅を溶かしていく。我流のタイミングで火を止め、粉末スープを注ぎ込むと、スープが餅でドロドロになっている事を確認してからドンブリに移し替えた。
他人に言わせると「気持ち悪い」らしい【ドロドロラーメン】。何故この美味さが分からないのか、理解に苦しむ。見た目で判断しないで欲しい。麺と麺が餅で絡み合い、汁を飲む必要もない。しかも、ドロドロのおかげでラーメン自体が冷める事を防げるのだ。
僕は、ドロドロラーメンを堪能して食べると、机の中から秘密道具を取り出した。
『ふっふっふっ! これさえあれば、もう少しスピードアップが望めるぜ!』
秘密道具をパズルの場所に置き、ドンブリと鍋を洗って片付けた。
『さぁてと、第二回戦始めますか!!』
秘密道具を片手に座り込むと、パズルに向かい合った。
端ピースと角ピースの組み合わせを再開する。それにしても絵が見にくい。
『しか〜し! ここで登場、秘密道〜具ぅ! こんな時は、やっぱりドラ〇もんにかぎるな。ぅおっと、ふざけている場合ではないな』
僕は傍らに置いてあった【秘密道具】虫眼鏡(学術的に言うとルーペと言ったりする)を左手に握ると、ピースに書かれた絵柄を確認しながら、作業を進めていった。
『こ、こんな筈では……。話が違うではないか! 謀ったな! 謀りおったな越後屋ぁ!』
と、ふざけている余裕などない。あれから3時間が経過した。しかし、まだ端ピースは完成しない。というよりも、絵は見易くなった。絵は見易くなったが、組み立てスピードは大幅ダウンだ。あれから3時間、3時間経つのに、右端のみしか完成していない。朝からこれだけ時間をかけて右端のみ。数にして250ピース。
それでも集中してやった。まあいい。これが毎日の暇潰しになるだろう。
『よし! 一息入れたら、もう一戦やったろうではないか! み、見ておれよ仮面〇イダー。我が能力見せてくれるわ!』
僕は、マグカップに牛乳を入れてくると、パズルの横に置き、牛乳を飲みながら組み立てを再開した。
虫眼鏡がないと絵が見にくい。虫眼鏡を使うとスピードダウン。無情な現実の中で、僕は無駄なことを考えず、一心不乱にパズルに取り組んだ。
更に3時間が経過し、腹が減ってきた。当たり前か。もう19時だ。今から夕食を作るのは面倒臭さいので、今日はカップラーメンを2個食べることにした。
キッチンの棚からカップラーメンを取り出すと、ポットのお湯を注いで3分待つ。
『そういやぁ、昼もラーメンだったな……』
そんな事を考えながら、時間を待った。出来上がったラーメンを一つのドンブリに移し替える。
『う〜ん。いまいち美味そうではないな。そりゃそうだわな。昼も夜もラーメンじゃ飽きるっての』
余計な思考は、そこで中断してラーメンを食べると、パズルは一先ず中断して、ドンブリを洗ってから風呂に入った。
風呂から出ると、マグカップに一杯の牛乳を左手に持ち、右手を腰に当てると一気に飲み干す。
『ぷはぁ〜!』
大きく息を吐き出すと、その身体の火照りに少しの間身を任す。そして、マグカップを洗ってからドンブリも一緒に片付けた。
『さあ! もう少し頑張るか!?』
僕は、パズルの前に座ると、組み立てを再開した。火照った身体が心地良く、思い込みかもしれないけれどスピードアップする。なるべく虫眼鏡を使って。絵と見比べながら。端ピースを組み立てていった。
本当にこれは絵と同じ柄なのだろうか? そんな疑問に取り付かれる。それでも、今は絵を頼み綱とするしかない。そんなこんなで、四苦八苦しながら作業を進めいく。
『ぐわぁ! も、もうダメだ! し、死ぬ……。死んでしまうぅ! 目が、目がぁぁぁ! きょ、今日のところはこのくらいにしてやろう……』
目の痛みに耐え切れず、時計に目を向ける。時間も晩くなり、明日は仕事なので今日は止めることにした。
歯を磨き、布団に潜り込むと目を閉じた。ずっと細かいパズルピースを見続けたせいだろうか? 目の奥がチリチリと痛む。本当ならもっと作業を進めたかったのだが、今日は端ピースの上側と右側のみの完成で終了した。
現在完成ピース数649。残りピース数99351。まだ先は長い……。




