第四話、第五話、第六話
第四話 夫婦喧嘩は猫も食べません
続いてやって来たのは、若い夫婦の家だった。研修期間のような様子見。双方よければ成立。
あたしはもう、可愛がってくれるならどこでもいい状態だった。
夫婦は可愛がってくれた。だけどここでも、幸せな時間は続かなかった。
仲のいい夫婦ほど、喧嘩の時が目も当てられない。
原因はあたしだった。
旦那さんは犬派だった。
連日連夜の口論。平行線。わかりあえない夫婦。 ついに奥さんの方が壊れた。
その日、奥さんの帰りは遅かった。 帰ってきた奥さんを見て、旦那さんは泣いた。
「パンチパーマはやめてくれ!」
第五話 鳥と小説家
続いてやって来たのは、売れない小説家の家だった。 本が多かった。本棚はなかった。その代わりだろうかテーブルの上に積んであった。収まらない本は床にも積んであった。テーブルだけは何故か何台もあった。
付箋だらけのメモが挟まった本。領収書らしき紙。読みかけの文庫本。そういうものが至るところにあった。 あたしは気に入った。踏み台が多い家は好きだ。
先住人がいた。九官鳥のキュウジロウだ。 天井近くの鳥かごの中から、あたしをじっと見下ろしていた。
「犬かと思った」
初対面だった。
あたしはジャンプしてキュウジロウの鳥かごを前足で揺らした。
「ちょっと、やめてよ」
やめなかった。
、、、
小説家はよく唸っていた。パソコンの前に座って唸っていた。書けないわけではないらしかった。まとめられないらしかった。
キュウジロウはそのたびに「また詰まってるの」と言った。 小説家は何も言わなかった。慣れているようだった。
ある夜、小説家が珍しく上機嫌で帰ってきた。
「書けた。今日はまとまったぞ」
キュウジロウは少し間を置いてから言った。
「どうせ没になるよ」
あたしは鳥かごを揺らした。今日は少し強めに。
小説家は壊れそうで壊れなかった。 キュウジロウは一言多かった。 あたしにはちょうどよかった。
この家は居心地がよかった。踏み台も多いし、見ていて飽きなかった。
第六話 こたつが恋しい
猫のミロは少しガッカリしていた。この家にはこたつがないのだ。
ご主人である小説家がミロの前に分厚い布のようなものを置いた。
彼女と目が合った。彼女は何も言わない。
ホットカーペットというものらしい。九官鳥のキュウジロウが教えてくれた。
ミロはとてもいい気分になってうつらうつらした。
キュウジロウが叫ぶ。
「ミロが死んだ。ミロが死んだ」
小説家はパソコンを打つ手を止めて一瞬、こちらを向いたが何事もなかったようにまた、
机の上でカタカタと音を立てた。




