41:二年半ぶりに。
◇◇◇◇◇
目が覚めたら、リオにギチギチに抱きしめられていた。
――――ふぉぉ。
胸板から視線を上げると、ご尊顔のどアップ。
真紅の目隠しを外したリオは、人外の美しさがある。
イケメンというか、美人。
じーっとリオの顔を見続けていたら、眠っているはずのリオがクスクスと笑い出した。
「っあ……起きてたんですか!?」
「はははっ。ん、おはようマキ」
「おふぁようございまふ……」
「身体はきつくないか?」
頬を撫で、身体のラインをなぞり、下腹部をそっと撫でられた。
――――ぎゃっ! 素っ裸!
おわぁぁぁぉ!と叫びながら掛布を身体に巻き付け、おわぁぁぁぁぉ!と更に叫びながらお風呂に逃げ込んだ。へっぴり腰で。
「マキ?」
「ちょ、ちょっと、精神統一をさせてください!」
扉の向こう側からリオの心配そうな声が聞こえてきたけど、それどころじゃない。
「入浴するのなら、一緒に入りたいのだが?」
やっぱり心配そうじゃなかった。
「心頭滅却っ!」
「っ、ふははははっ」
リオは扉の向こう側で笑い続けていた。
シャワーを浴びてリビングに向かうと、リオが真紅の目隠しを着けて朝食の準備をしていた。
「着けちゃったんですね」
「予期せぬ事故は、防ぎたいからな」
「……はい」
少し寂しいけれど、事故が起こってリオや誰かが傷付くのは嫌だもんなぁ。なんて考えていたら、リオがチュッとバードキスをしてきた。
「寝室でだけは、外してもいいか?」
「っ! はいっ」
二年半ぶりに、二人で向かい合ってご飯を食べた。
二人で洗い物をした。
全てが二年半ぶりで、全てが今までと違って燦めいて見える。不思議。
食事のあと、身体がきつくないのなら、落ちてきた荷物の分別をしないかと聞かれた。
昨日作業途中だったらしい。
「あ、またキャリーケース落ちてたんですね」
解錠し、パカリと中を開けると、背広や男性用の私服、何かの資料などが入っていた。
出張か何かだったんだろうなぁ。資料丸ごと異世界とか、これは出張先で大変なことになってそう。なんて話しながら背広を持ち上げてみた。
「ん? リオとサイズ同じくらいですね?」
ふと頭を過った妄想。
思い付いたからには、やってみたい。
背広に浄化魔法を掛ける。
「……また無詠唱か…………」
「へ? 何か言いました?」
ちょっと聞き取れなくてリオに確認したものの、なんでもないと言われてしまった。
「リオ、これ! 着てみてください」
濃紺ベースに白いストライプ柄の背広。最近流行りの細身で仕上げられている。
絶対に、リオに似合う――――そう、思ったのに。
「あははは!」
真紅の目隠しをした煌めく銀髪の長身男性が、ビジネススーツを着ているというのは、思ったよりもコスプレ感が酷かった。
爆笑してしまうほどに。
予想外に似合わないうえに、変態くさかった。
「ぷふふっ、変態っぽい!」
「………………ふぅん?」
――――あ、やばっ。
リオの口角がクイッと上がり、唇が美しい弧を描いた。
漏れ出る魔力は物凄く複雑な様相で、本能が『ドS』センサーを感知した。




