34:あれから。
ディーノさんには日常や国の様々なことを教えてもらい、魔法の基礎は個人教師から学び、魔法学院にどうにか入学出来た。
魔法学院は、二年制。
学校っていうと、なんとなく三年制って感じがするけど、そういえば専門学校とかは二年制も多いっけなー、なんて思いつつ通い始めた。
そして、いつの間にやら卒業間近。
毎日が忙しいと、時間の流れがとても早くて助かる。
…………リオのことを、思い出さずに済むから。
魔法学院は、年齢制限がある程度あるものの、私は状況から入学を許可された面もあったので、当初は同級生たちから敬遠されていた。なんせ、同級生は十代だから。
「マキ! 置いて行きますわよ」
「まってよ、テス」
公爵家のお嬢様であるドリル金髪のエステファニア。
私の面倒を見るように公爵様から言われているらしく、入学当初に唯一話しかけてくれた子。
どこからどう見ても、悪役令嬢感だったけど、物凄く良い子だった。
今では親友と呼べる関係になっている。
あと、名前が難しすぎてテスと呼んでいる。
「貴女、本当に二八歳ですの!?」
「もぉー、年齢は言わないでよ」
このまえ誕生日を迎えて二八歳になった。
何かドジをやらかすたびに、テスは私を年齢でイジる。そのおかげなのか、同級生たちにもドジキャラとして根付いてしまい、なんやかんやで皆と仲良く出来ていると思う。
あと、魔法学院の人たちは、私の目的に対して肯定的な人が多かった。
それは、リオが魔獣を狩ってくれていることが大きいようだった。
「来月にはディヴァルダ聖山に戻るのでしょう? 本当に大丈夫なんですの!? 迷子にならないでよ?」
「ディーノさんが送ってくれるから、大丈夫」
「……ディーノ様をよくもまぁそこまで使えますわね」
ディーノさんはいつの間にやら、騎士団長まで上り詰めていた。物凄く忙しい人らしい。だけど、私の前では相変わらずいつのもディーノさん。
よく『俺に乗り換えないの?』とか茶化して言われるけど、私の心の中にはまだリオがいるから、キッパリ『嫌です』と答えている。
「たまには、顔を出しなさいよ?」
「うん」
「ちゃんとご飯食べなさいよ?」
「うん」
「困ったらいつでも相談しなさいよ?」
「うん。テス、お母さんみたい」
「十も年上のマキに言われたくないわよっ! 失礼ね!」
テスがぷんすこ怒っているのを見て、自然と笑みが溢れた。
二年半城下町生活は、とても楽しいものだった。学院にも近所にも、いっぱい知り合いができた。
離れるのは、ちょっと寂しい。
でも、私はリオに逢いたい。
「さ、出発するぞ?」
「はいっ!」
見送りに来てくれたテスに、いつまでも手を振り続けた。
――――またね!




