33:異世界って。
焔魔法は割と簡単に出来た。人差し指をロウソクに見立てて、指先にポッと炎を出す。不思議なことに、指はいつまでも熱さを感じない。魔法だからなのかな?
他に燃え移ったら怖いからすぐ消したかったのに、消し方が分からなかった。
水は作り出しては大きなボウルに入れて、台所に捨てていたけど、炎はどうしたら良いの?
試しにフッと息を吹きかけたけど、消えなかった。
「えっ……えっとぉ!?」
慌てて左手で本を捲っていると、魔法を消す方法が書いてあった。発動させた時と同量の魔力を魔法に重ねて『理を元に戻せ、現象隠滅』と唱えると消えるそう。
いまいち意味と感覚がわからなくて十回くらいやっていると、フッと消えた。たぶん、成功したんだと思う。
「ハァ……次は、風魔法ね」
無の状態から風を出すって、どういうことだろう?
そんなこんなで超初級の魔法を攻略していたら、いつの間にか夕方を過ぎていて、玄関のドアがノックされた。
「はーい!」
返事をしながらドアをガバリと開けると、ディーノさんが目を見開いて凄く驚いていた。
「……不用心すぎるぞ」
いくらドアに防衛魔法が掛かっているとはいえ、簡単に開いてしまっては防衛にならないと言われてしまった。
防衛魔法とはなんぞや?と首を傾げていると、ディーノさんが「そこからなのか。アイツ何やってたんだよ……マジで」とベッコリと凹んでいた。
なんだかご迷惑をおかけします。
防衛魔法とは、その名の通り防御のことで、建物自体とドアに掛けてあり、鍵を掛けていなくても中からしかドアを開けられないシステムになっているそう。
そういえば、契約の時に鍵と扉に魔力を流し込んで登録するみたいに言われてやった。
――――それか!
この世界って、凄く便利。
テレビとかスマホとか全然ないけど。
雰囲気は古き良き西洋の近世時代っぽいというか、アニメとかにあるファンタジー世界だけど、魔法によってとても快適な生活を送れるっぽい。
――――異世界って、不思議。
「さ、行こうか」
「はい」
アパートの敷地から一歩出ると、キラキラとイルミネーションのようなものが輝いていて、海外のナイトマーケットのような屋台が沢山並んでいた。
「うわぁ! 凄いですね」
「俺のおすすめは――――」
ディーノさんのおすすめの屋台を教えてもらいつつ、一緒に散策。
子どものように『あれはなに?』、『これはなに?』と聞きまくってしまった。
「ここなんてどうだい?」
「ラビオリ専門店ですか! 初めて見ました」
様々な種類のラビオリの中から、チーズとポテトが詰まった物を選んだ。ソースはサーモンクリーム。
この世界の食べ物は、元の世界とあんまり変わらないみたい。
――――異世界って、ほんと不思議。




