19:小屋から出ないように。
少し遅めのお昼を食べ終え、お皿を洗った。
洗うのは私、拭くのはリオ。
彼氏とかいたことなかったから、良くわからない。でも、なんだかお家デートの一環みたいでドキドキした。
このあとも倉庫の確認をしようかと話していたら、リオがじっとどこかを見るような仕草をしていた。
「リオ?」
「魔獣が発生した」
――――発生?
「討伐してくる。小屋から出ないように」
「え、うん。気をつ――――」
気をつけてと言い終わる前に、リオは物凄い速さで走りながら消えて行った。リオの後ろ姿を見送って、玄関を閉めて少しぼーっとしてしまった。
魔獣が発生したってなんだろう?
そもそも『魔獣とは何か』というのが良くわかってない。
親から生まれて育つのとは違うベクトルなのかな?
分からないことをグルグル考えても仕方がないので、リビングに戻り拾った仕事カバンの中身を確認することにした。
日焼け止めクリーム、ミニボトルの化粧水、アイブロウ、色付き薬用リップ、ハンカチ、折りたたみ傘、手帳と走り書き用のノート、ペンケース、モバイルバッテリー、充電コード。
そして、スマホ。
普通のカバンの中身だなぁと思いつつ、スマホの電源を入れる。
「……ないか」
やっぱり、電波はない。来ている連絡もない。
電池残量が危ういので省エネモードにするか、電源を落とすかを悩む。
ふと、リオと写真を撮りたいなと思った。
この世界には写真って、あるのかな?
リオが帰ってきたら聞いてみよう――――と思っていたけど、なかなか帰ってこない。
とりあえず夕食の準備を始めた。
大玉スイカくらいの大きさの牛肉の塊が冷蔵庫にある。これは自分でスライスしたりして使うそうだ。
こんなに大きいもの食べ終わるの? 腐らない?
早めに使ったほうがいい気がするから、粗ミンチたっぷりのボロネーゼにすることにした。
自力で普通に売られているようなミンチにするのは大変だから、粗ミンチにしたけど、どのみち大変だった。
「ふぃー」
粗ミンチを炒めて、ボロネーゼの鍋に投入。
弱火でコトコト煮込んで、煮詰めて、少し味を整えて完成。
パスタは乾麺があったので、リオが帰ってきたら茹でよう。
「…………遅いなぁ」
日もとっぷりと暮れてしまっている。
外の様子はちょこちょこ見ているけれど、人や動物の気配はない。
ふと、テレビや本で見ていた物語だと、こういった瞬間に外に探しに出る人っていたなと思い出した。
「出ちゃ、駄目だよね――――?」
 




