16:荷物を拾おう。
林の中をフンフンと鼻息荒く見回っていたら、結構色んなものが落ちていることに気付いた。靴とか画面がバリバリに割れたスマホとか――――スマホ!?
慌てて仕事カバンの中を確認した。
「あった! 無事っ!」
スマホの電源ボタンを押したら、画面が点いた。圏外だけど動いている。なんだろう。すごく、すごくすごく安心する。
電池は大切にしたいから、一旦電源を落とすことにした。
他に落ちているものはないかなぁと地面を探してみる。ペンケースやお財布……どんまい。ハンカチなんかもあれば、ペットボトルみたいなゴミもあった。
とりあえず仕事カバンに入れていた買いもの用のエコバッグに入れた。
「なにかあったのかい?」
「うーん。ゴミと、ほとんどゴミかも、くらいです」
ゴミの回収もきっと大切。
とてとてと歩いていると、子どもが保育園などで使うようなカバンがあった。近くには、子供用の靴も。
「もしかして、ここって…………」
リオに少しだけ聞いた、助けられなかった人たち。幼い子もいたと聞いた。ちらりとリオを見るけれどあまり感情は読み取れない。
「…………遺体は、どこかに?」
「ん? ああ。魔獣が来ない場所に埋葬しているよ」
後で手を合わせに行こうと思った。
「あとはあっちに大きな鉄の塊が落ちていたが、燃えていてね……少しヒヤッとしたよ」
リオに案内されて見に行くと、真っ黒焦げでひっくり返って潰れた車があった。恐る恐る運転席を覗き込んで、ホッ。誰もいなかった。
乗りものは、車やバイク、自転車もあった。バイクも自転車も鍵が掛かっているのと、フレームが曲がっているのでどのみち使えない。
「自転車は修理すれば乗れそうだけど、山じゃ使わないかぁ」
「自転車?」
リオにきょとんとされたので、自転車で山道を走るのは危なくないかと話したら、そもそも自転車とは何か、と言われた。
自転車、ないらしい。
まって!? ここ、どういう世界なの?
あれ? 異世界に自転車がないって、普通? いや、普通かも? ん? んんん?
「どうした?」
「あ、えっと――――」
自転車の説明をしたら、すごく便利なものじゃないかと言われた。
確かに便利だけど……うん。
家電のようなものは沢山あるのに、自転車は存在しないのかという謎もある。
もうちょっと、色々なものの認識のすり合わせ、しないとだめかも――――。
ではお昼に。




