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気がつけば、そのレイサを買っていた。衝動買いなど今まで一度もしてこなかった彼女は自分の失態に苛立ち、しかし気がついたのは道端で、かといって家に連れていく気も起きずハルアールトは転移魔法を唱え、それごと町の外の廃墟へ向かった。
そしてはじめて彼をまじまじと見ることになる。
背は彼女より少し高く、戸惑い警戒した目でこちらを見ている。青い契約の首輪をし、ずたずたに切り裂かれた衣服から伸びる手足は細く、彼女がよく見たエスコートのレイサとはまるで違っていた。
さて、どうしたものか。ぼんやり廃墟に腰かけ考える。彼は立ったまま、である。ぽたぽた血だまりができる。
「・・・・治癒の雫よかのものに降り注げ“ケア”」
ハルアールトはためらいなく魔法を唱えた。彼の傷は瞬く間にふさがれた
彼は驚きの表情を浮かべていた
「なんだ?私とて目の前で生物が無益に死ぬのは好きではない」
「いや・・・悪い、ありがとう。殺されると思っていたから、まさか治されるとは思ってなかった」
すこしほっとした表情になる
「あんたはきちんと精霊祈祷法なんだな」そして驚く言葉を口にした。
「お前に精霊祈祷法がわかるのか」精霊祈祷法とは精霊に魔法を使う祈りをささげることだ。他には非精霊法がありその場合は“ケア”と唱えればよい。そちらの方が楽なので今では多くのヒトが非精霊法である。
「ああ。俺自身はよくわからないが本で読んだ」
なんとなく、興味を持った。彼は、なんというか違う。そんな気がしたからだ
「・・・名は?」
「ルードと呼ばれていたけど・・・」
「これからお前は自由だと言ったらどうする?」
彼はまた驚いた顔をし、そして次の瞬間には悲しげな顔をした
「町を離れ自由に暮らしたいが、まあ、魔獣にやられるかレイサ狩りに合うだけだろう」
「私の元に来るか?」
三度彼は驚いた顔をする。
「嫌か?」
「いや、嫌とかじゃなくて・・・あんたレイサ嫌いだろ?雰囲気でわかる。
俺は他のレイサとは違う。余計にあんたとは合わないんじゃないか?
慈悲ならやめてくれ。俺は誰にも情けをかけられたくない。」
その目は私を見て、揺らぐことはなかった。
「ハルアールト・ダンタルクーゼ。」
「は?」
「ハルアと呼べ。私はお前に興味がわいた。契約を交わそう。
私ハルアールト・ダンダルクーゼはお前に住みかと安寧を与えよう。そのかわりルード、お前はその安寧分の仕事を果たせ」
「し、仕事って?」
「掃除や洗濯・・・そして社交の場へのエスコート」いいづらく最後の言葉は俯いてしまった。
草原のゆれる音がした
「わかった。ハルアールト・ダンダルクーゼと契約をかわそう」
暖かく笑う彼、ルードを見て草原のゆれる音は彼の笑い声だと気がついた。
普段‘冷華’と称されるが自然と頬が緩む。さて、それではまずは・・・
「浄化の雨をかのものに降り注げ“シャワー”」
銀青髪金目のヒト――ハルフはいい奴なのかもしれない・・・と思っていると
「つめてっ」ザ―――俺の周りだけ雨が降り注いだ。
・・・・・前言撤回だ。
呆然とする俺の髪に手を伸ばしてきた。
「良く洗わないと汚れが落ちないぞ?」わしゃわしゃと綺麗な指が動く
浄化の効果か、石鹸を使わずともあらかたの汚れは流されていった。
「汚れでわからなかったがルードの髪はやさしいクリーム色なんだな」微笑まれて顔が熱くなる。
「・・・ハルフの家に他のレイサはいるのか?」
「いや、侍女や男手はいるがレイサはお前が初めてだ」
「へえ、珍しいな」
レイサのいない家というのは普通の一般家庭などでは当たり前だが、ハルフの立ち振る舞いは明らかに上流階級のそれだ。上流階級では美しいレイサの品評会があるとか・・・また単純労働などをレイサに任せているところも多い。
「父上の意向だ。父はレイサへの扱いに心を痛めている」
「そうか・・・」
変な家族だな、とは言わないでおいた。
「それにしても・・・いい毛並みだな」
再びほほ笑むハルア。そのときルードはピシリと固まった
・・・・・奴隷扱いではないがこれは・・・・・
犬扱い、であり、俺は、(レイサだから当たり前だが)男として見られていないんじゃないか
優しく髪をなでられながら、ルードは泣きたくなった。




