7.
嘉代ゆら、能力【浮遊】。
古野光泰、能力【屈折】。
杵島雫、能力【三態】。
冬影尊、能力【逆転】。
黒瀬紗愛、能力【加速】。
黒瀬音葉、能力【変速】。
「で、名字呼び希望が冬影な」
「女みたいな名前で好きじゃない」
「………親が、くれるだけ、良いと、思うけど」
親がいない無愛と影夜からしたら、贅沢だなという感想になる。
「あんたら、昔はなんて呼ばれてたのよ」
「『00』と『08』」
「まさかの番号?」
「造られた順だ。俺らを生き物の枠組みで捉えるな」
二人が馴染めない理由であり、複数の能力を所持している理由。
「ま、一旦置いとくぞ。天月影夜。これの前は【死月の災厄】の兄。【月】たちには【闇月】って呼ばれてた」
「天月無愛、【死月の災厄】」
「能力は俺が【暗闇】と【共有】、【造物】。無愛が【崩壊】と【空間】、【剥奪】、【再生】」
「複数持ち……」
「【崩壊】は昔使ってたな」
「【剥奪】も、元々持っては、いた」
無愛の能力、【剥奪】は強いがリスクが大きい。何より、
「力に身体が順応してないんだ。だから、基本は【崩壊】を使わせてる」
「………なんか、思ってたのと違うな」
ポツリとそう、ゆらが呟く。
「てっきり、【死月の災厄】が上だと思ってたけど、実際はアンタが上。【死月の災厄】にとって、よっぽど大切に見える」
「それは力とかのって意味か?」
「それもあるが、なんつーか、【死月の災厄】の意志が見えねーって言うのか」
無愛が喋るのは喋る必要があるときのみ。他は影夜が喋る。無愛がやろうとしないのもありはするが、
「【死月の災厄】に問題があるようには見えない。お前が何か隠してるように見える」
「………一つ、長く生きてるこっちからアドバイスやるよ」
ゆらの頬を何かが掠める。
「! あんたっ」
「詮索しすぎると寿命が減るぞ?」
何も持っていなかったはずの影夜の手には、短剣が握られていた。
「【造物】。生き物じゃなけりゃ大抵造れる」
「…随分物騒な教え方だな」
「今は味方だから殺さない。利害が一致してるからな」
「影夜、そこまで。時間の、無駄」
「出たよ、無愛のそれ」
「事実。ここに、来たの、あいつら、見つける、ため。仲良し、ごっこ、違う」
そもそもで人間を好きではない無愛からしたら、この人数でも一緒にいるのが嫌なのだ。
「協力関係結んだんだ。我慢してくれ」
「そういえば、あんたたち何の話したのよ」
「………人に害を与えないことを条件にこいつらの要望を呑んだ」
「その要望ってのは?」
「軍いりゃ嫌でも知ってる場所だ」
影夜から話を聞いている笙人以外はどこを指しているのか分からない。軍には表に出していない施設などたくさんある。
「軍施設の一つ、メノウ研究所。そこがこいつらの目的だ」
「は!?」
メノウ研究所。表には公表されていない施設であり、知っているのも一部の者のみ。
「そこに何の用が?」
「ゴミ、掃除」
「無愛、ゴミじゃなくて有害物質な」
「お前らなんでそんな目の敵にしてるんだよ」
目の敵にしているも何も、二人からすれば最も嫌悪する人物がそこに揃っている。
「んで、青海に頼みがある」
「……………メノウ研究所に乗り込ませろ、でしょ」
「頼むぞ、隊長」
青海が上に掛け合い、言い争いをしたのは言うまでもないだろう。