8.
「あんたら、いい加減片付けなさい」
「片付けただろ」
「二人で一部屋じゃねぇんだよ。片方の部屋にモノ置くな」
自己紹介も終わり、寮に荷物が届いたため整理していたのだが、影夜と無愛は一つの部屋に荷物を押し込め、もう一つの部屋を生活スペースにしている。
「つか、お前話終わったのか?」
「取ってきてやったわよ。感謝しなさい」
ソファで寛ぐ二人に、青海が紙の束を投げ付ける。
「………んだよ、この量」
「許可書とあんたらの契約書。注意事項もそれ全部書いてあるわ」
「……データが良いんだが」
「隊長が機械苦手だから諦めろ」
「昔からこういうのは副隊長が担当ですからね」
「この人たち、いろいろと反対だからな」
青海は近接を得意としており、遠距離は苦手。逆に、笙人は遠距離を得意としており、近接は苦手。
互いに得手不得手を理解し、協力しているからこそ、二人で一つのような雰囲気がいつも出ている。
「無愛も手こずったもんな」
「……そろそろ、あんたらの体勢にツッコミを入れてもいいかしら?」
「んぁ?」
ソファで寛ぐ………正確には、座っている影夜の上に横になって影夜に頭を撫でられ満足げな無愛という、二人からすれば普段の光景。
「これが本当にあの【死月】?」
「………影夜」
「どうした」
「A3、来てる」
A3。【月】たちの暗号であり、これの場合。
「距離、二百。方向、九時。数、十五」
「時間ねぇな。無愛、久々の戦闘いけるか?」
「ちょ、待ちなさい。何があったの」
「メノウが来た」
「防衛システムに反応なんてないぞ」
「雑魚だからだろ」
メノウと防衛システム、どちらを指してるのかは不明だが、面倒なことに変わりはない。
「無愛、屋上行くぞ」
「青海、たちも、来れば?」
二人に連れられ寮の屋上に行くと、空にうっすらと、何かいるのが分かる。
「………何あれ」
「お前ら、対メノウの部隊なのに知らないのかよ」
「あれ全部!?」
「メノウは群れないはずだが」
メノウが群れをなすことはない。弱肉強食を現すメノウたちは、本能からか群れをなすことを嫌う。
「無愛、いけるか」
「あの程度、なら、よゆー」
「んじゃ、頼む」
残り百メートルのところで、無愛の手に数個の弾丸が現れる。
「………装填」
無愛は弾丸を宙に投げ、
「殺れ」
ただ一言、そう発する。
弾丸は空中にいるメノウたちの方へ飛んでいき、命中する。
「何体か外した!」
「安心しろ。全部仕留めれる」
「……捕捉」
無愛は手で銃の型を作り、自分の頭に当てる。
「バン」
弾丸が当たらなかったメノウたちに、上空から何かが当たる。
「終わり、かな」
「んー、やっぱこれが楽だな」
「………何、あれ」
「無愛の【空間】で弾丸を動かして貫いた」
【空間】は、簡単に説明すれば座標と座標を繋ぐのみ。そこに物体を動かす力はない。あくまで送る、取り出すの動作のみが可能。ならば何故、銃器を使っていないのに貫けたのか。それは、
「俺の【共有】で青海の【反重力】を無愛に貸した」
影夜の能力【共有】は自分と対象のモノを共有できる。思考、位置、動き、能力さえも。
まず影夜の能力で青海の【反重力】を影夜自身が使えるようにする。そして、影夜と無愛に【共有】を使用し、影夜に共有した青海の【反重力】を無愛に使わせる。
「そうすりゃ、音のない超高速弾の完成だ」
「………私の能力を、他者に共有」
「ちょっと待て。お前らのその話が本当なら、なんで」
「昔にしなかったか?」
「理由は、二つ」
一つ目、影夜の【共有】は肉眼で見れる範囲の者にしか効果がない。映像などでの視認による【共有】は不可能。
二つ目、影夜の【共有】は、明確な関係性がなければ使えない。
「視認はなんとなく分かるが、関係性って言うのは?」
「敵対関係とか味方とかあるだろ」
「【月】は、あくまで、中立」
「やられたらやるって方針上、お前らと敵対してる訳でもなかったからな」
「あんたらからしたら、黒よりのグレーだったってことね」
青海たちにとって【死月の災厄】は敵。しかし、無愛たちからすれば攻撃はしてくるが敵とは言いきれない相手。故に、明確な関係性がなかった。
「どっちにしろ、視認できてなかったしな」




