44.
話している間に呼んでいたのか、無愛の後ろには十体のメノウ。その全てが攻撃してくることはなく、指示を待っている。
「あんたにそんな能力あったかしら?」
「これは体質関連だから能力じゃあないんだよね~」
基本的にメノウに知能はない。ここにいる個体が全て知能持ちである可能性は限りなく低く、無愛が何かしらの方法で操っているのは明らか。
「そろそろ戻らないとだし、今日はここまでかな」
「行かせるワケが…!」
くるりと踵を返し、帰ろうとする無愛を止めようとするが、
「君らの相手はこの子たちだよ」
メノウに道を阻まれできなかった。
メノウを殺すも既に無愛の姿はなく、痕跡などは残っていない。
「……君、大丈夫かしら」
「え、あ、はい!」
「すまないが、本部まで着いてきてもらってもいいか」
問いかけではあるものの、史に拒否権はない。大人しく言われた通りに軍基地までついていく。
「厳重ですね」
「まぁ、あんなことかあった後だからね」
あんなこととは、一年前のできごとのことなのだろうと史は思い、それ以上は聞かない。
建物の中に行けば、人がいる部屋へと通された。
「隊長、どうでしたか」
「最悪よ」
「そっちのは?」
「目撃者」
短く返答している辺り、焦っているのだろう。
目撃者は一般人。無愛が人を食らっていることもバレている。
「……あなた、名前は」
「史ですけど…」
「来てもらって早々悪いけど、最低最悪の二択を選択してもらっていいかしら」
青海は頭を抱えながら、史に問う。
「さっきの出来事を忘れるか、軍に入るか、選んでちょうだい」
「……さっきのって」
「先ほど、というよりも、今日起きたこと全てです」
青海の代わりにと答えたのは慧斗。
「あなたはただ、歩いている途中にメノウ出現に遭い、避難。その後討伐が終わり、帰宅。そんな感じに記憶を書き換えます」
記憶を書き換える、と簡単に言っているのを見るに、そういう能力の持ち主がいるのだろう。
「そもそもなんですけど、軍ってそんな簡単に入れるんですか? こう、入隊試験とか」
「この隊は基本的に特別入隊。全員が軍直々に引き入れてるから試験はないの」
入隊すれば死の危険が伴う。入らなければ記憶を失うが、全てではない。後者を選ぶべきだ。
「……一つ、聞いてもいいですか」
「いいわよ」
「さっきの女の子、見つけてどうするんですか」
史の中にあったのは、メノウといた子ども──無愛のこと。実年齢は不明だが、あの様子では軍に追われている身。見つけ次第殺されるのかが不安だった。
「保護して、場合によっては能力の制御装置を着けることになるかしら」
「さっきはあれだったが、あいつもここの隊の人間だ。連れ戻す」
「そのために探してますからね」
史の答えは決まった。




