3.
【死月の災厄】。約百年前、メノウと人間と言う勢力図を変えた存在。
自らを『月』『災い』と呼び、己の欲のためだけに動く人の姿をしながら、メノウのようなことをし、人ともメノウとも敵対関係となった。
「ま、そんな存在と似た空気纏ってれば狙われるよな」
無愛が軍関係者たちに攻撃し、周りがパニックになっている隙に、影夜はある部屋まで来ていた。
「会長権限マジ楽」
鍵を開けて、そこにあったものを弄る。そして、
『あ、あー。聞こえてるかな? どうも生徒会です。現在、生徒会と軍関係者の方々のよる模擬戦闘が行われています。中にいると攻撃が当たる可能性も出ますので、グラウンドに出てください。あ、様子は見れますのでご安心を』
影夜が行ったのは放送室。信頼されてかマスターキーを持っていたため、鍵は簡単に開けられた。
(これで全員外に出る。一部の生徒に協力してもらって映像も写せる。無愛には善戦してもらって、俺も入る。ある程度したら無愛は離脱)
無愛が離脱するのは、他生徒からしたら当たり前のようなもの。軍関係の者たちに何か言われそうだが問題はない。教師陣も、適当並べれば大丈夫だと判断した結果だ。
「さてさて、見に行きますか。あ、モニター出さなきゃか」
一方、無愛たちはと言えば。
「………結構、やるねぇ!」
「強いっ」
「ほんと、あの子を思い出させるわね!」
無愛を相手に、軍関係の者たちはかなり善戦していると言えるだろう。とは言え、押されている。
『あ、あー』
「え、何。もう、放送?」
そう言うと無愛は雰囲気をガラリと変え、後ろに下がり常に所持している小型銃を取り出す。
「早く、来て、欲しいん、だけど…」
(モニターでも作ってるのかな?)
「………そろそろ、息切れ、しないと、か」
タイミングを合わせたと言わんばかりに、無愛が息切れしたように見せたときに、在校生たちの歓声が聞こえてくる。
「無愛、交代」
「…………遅いん、だけど」
「悪いって。状況は?」
「体力、残り、四」
「持ちこたえた方だな。後方支援。武器の使用を許可する」
「屋内は、キツいんだ、って」
無愛は後ろへ下がり、逆に影夜は前へと出る。
「さて、後ろにも気を配らないとか」
そう言いながら前へ進み、一気に間合いを詰める。それと同時に、無愛が後方から腰に着けていたガンホルダーから銃を取り出し、影夜に当たらないように発砲する。
「おい、実弾じゃないよな?」
「能力弾、だよ。実弾は、違法、なんだから」
「能力弾も結構怪しいけどな」
無愛の能力の力を弾にしただけのモノ。けれども、込められている力の量によっては、
「………!?」
能力をフルで使ったときと同等の威力を誇る。
無愛の撃った能力弾に込められた能力の力は、無愛にとっては一割にも満たない。けれど、人間の感覚で言えばそれは、軍のトップクラスの力に並ぶ。
無愛の撃った弾は壁に当たり、半径五メートル程の穴を開けた。
「………壊れた。でも、瓦礫も何もない…?」
「やりすぎだ」
「調節、難しいんだよ。これでも、ちゃんと、やってる」
「人に当たれば死ぬぞ!」