モンスタートレイン〜シャインの奮闘〜
2月となりました(^^)!
今月もよろしくお願いします!
本作を気に入ってくれた方は、ブクマ等の支援魔法をかけて貰えるとありがたいです(^人^)
私は墓地に着いてから、ずっとお兄ちゃんの背後に隠れていた。
子供の頃にテレビに映っていたゾンビが余りにも怖くて、今でもホラー系は苦手です。
既に、この薄暗い状況と墓地にいるというだけで、心が挫けそうになります。
中学時代に、学校で肝試しをしたことがあるのだが、私は恐怖の余り、手に持っていた竹刀で、お化け役の先生をボコボコにしてしまったことがあります。
今でも中学時代の友達に会うと、そのことをネタに弄られることがある。
今回は、お兄ちゃんが一緒だからと安心していたのですが、完全に油断していました。
まさか、距離が空いた瞬間を狙って襲ってくるなんて。
「……ここ何処?」
余りにもびっくりし過ぎてしまい、一人で走り出してしまったのが、私の失敗です。
このゲームの運営はタチが悪いようですね。
私は、またゾンビが襲ってくるんじゃないかと、周りの警戒を怠らない。
「どうしよう。夢中で走って来たから、方向が分かんないよ。どっちに行けばいいの?」
周りを見回しても墓石、墓石、墓石と、特徴が無い。
「あっ!? フレンド機能でお兄ちゃんの場所を探せばいいんだ!」
私がフレンド機能のことを思い出し、メニューを開いた瞬間、再びゾンビの群れが現れた。
「いやーー!?」
私はメニューを消して、ゾンビが居ない方向へと走り出す。
なんで一箇所だけ居なかったんだろうなんて、今の私に考える余裕なんてない。
全速力で走り抜けると、墓石の裏から何かが飛び出してくる。
「またゾンビ!? いい加減にしてよ!?」
私は、ゾンビを回避しながら、再びゾンビの居ない道を選択して駆け抜ける。
何度もこれの繰り返しに合い、墓地内には私の叫び声が木霊する。
そして、私の背後には私を追いかけるゾンビの群れ。
完全にモンスタートレイン状態である。
ここに他のプレイヤーが居たなら、シャインは迷わずにこのゾンビ達を押し付けたことだろう。
「いつまで付いて来るのよ! ストーカーゾンビ!」
私は背後のゾンビを確認し終えると、ひたすら付いて来るゾンビに悪態を吐き、再び前を向く。
「骨?」
私の目の前には、ゾンビ集団では無く、人型の骨。
スケルトンというモンスターが待ち構えていた。
スケルトンは、片手に錆びた剣、もう片方の手には古ぼけた盾を持っていた。
スケルトンは、ゆっくりと骨を鳴らしながら剣を持つ手を振り上げる。
カキーン!
その瞬間、スケルトンの頭部が宇宙の彼方とは言わないが、場外ホームラン並みの勢いで吹き飛んでいった。
なぜ、そうなったかというと、シャインがジャンプした上で、杖をフルスイングし、スケルトンの頭部を吹き飛ばしたからである。
スケルトンの胴体は、頭を無くして彷徨い、墓石と激突してしまい、骨がバラバラとなる。
「只の骨じゃない。骨なら怖くないのよ。」
ゾンビに追いかけられて、ストレスが溜まっていたのよね。
ちょっとスッキリしたわ。
「ゾンビは見たく無いんだけど。……いい加減にしなさい! 『ライトレーザー』!」
私は急停止して反転すると、嫌いなゾンビ達を余り見ないように心掛け、光属性の魔法を放つ。
「「「「ガアァアアアア!?」」」」
モンスタートレインとなっていたゾンビ達は、三列でシャインを追っていた為に、その内の一列が一撃で葬られる。
「あれ? 案外弱いじゃん?」
今のシャインが知る術は無いのが、アンデット系モンスターは、光属性が弱点であり、ダメージ量が跳ね上がっているのである。
「これなら『ライトレーザー』、『ライトレーザー』!」
残っていた二列に向かって、ライトレーザーを放ち、追ってを消滅させる。
「やったね。なぁんだ怖がって損したな。」
私は、ゾンビが弱いことに安心し切ってしまう。
「「「「ガアァアアアア!!」」」」
「え? いやーー!!」
私のライトレーザーでは、前方の方にいたゾンビ達を纏めて消滅させることは出来ても、モンスタートレインが長過ぎた為に、全てのゾンビを消しきれていなかった。
ライトエフェクトの中を駆け抜けるゾンビ列車。
ゾンビにキラキラとか合わないから!?
ツッコミを入れつつも、素早く身体を反転させる。
シャインは、一度立ち止まって魔法を放っていた為に、ゾンビとの距離が詰まっていたこともあり、その場でMPを回復して敵を殲滅することは出来なかった。
というよりも、ゾンビとの距離が近付いたことに恐怖してしまい、MP回復を考える余裕も無かったのである。
「どうしよ〜、どうしよ〜!?」
早くみんなと合流したいのに、みんなの位置を探す時間も無い。
「ガルルルル!」
「今度は何よ!?」
次に現れたのは、スケルトンでもゾンビでも無く、目玉の飛び出したウルフ、そうゾンビウルフである。
ゾンビウルフの周りには、ゾンビゴブリンやゾンビボアの姿もあった。
「邪魔しないでよ! 『ライトレーザー』! ……あれ? なんで?」
私は、ゾンビウルフ達に杖の先端を向けて魔法を唱えたのだが、何故か魔法が発動しない。
「ガルルルル!」
ゾンビウルフが駆け出し、シャインへと迫る。
「ヤァ!」
私は魔法の発動を諦め、杖でゾンビウルフを迎え撃つ。
シャインの杖がヒットするも、物理攻撃力の低い魔法使いであり、武器も攻撃力の低い杖であることから、ダメージが稼げない。
先程のスケルトンの様に、頭を吹き飛ばして倒すやり方が出来ればいいのだが、ゾンビウルフではそうもいかない。
ゾンビウルフを相手取っている間に、背後のゾンビ集団が間近に迫っていた。
「……もう逃げ切れない。……お兄ちゃーーん!」
私はこの数の敵を捌き切れないと悟り、頼りになる存在を思い浮かべていた。
「『ブルージェット』!」
突如、シャインへと迫っていたゾンビ集団は、地面から天へと駆け登る青い稲妻に呑み込まれる。
「ふぇ?」
私は何が起きたのか理解出来なかった。
「待たせたなシャイン。大丈夫だったか?」
私の目の前には、大好きなお兄ちゃんの姿。
「お、お兄ちゃーーん! こわかったよ。」
私は、独りぼっちの寂しさから開放され、お兄ちゃんに抱き着いた。
「もう大丈夫だ。」
シャインを追いかけようと、フレンド機能で位置を調べた俺達は、直ぐにシャインを追いかけ始めたのだが、中々追い付けず、最短距離を突っ切ることにしたのだ。
つまり、墓地の道を無視して、罰当たりだが墓石の上を一直線にここまで来たのである。
「さて、一気に殲滅するぞ。」
直ぐに追いついて来たヴァン達と共に、付近のゾンビらを殲滅したのだった。
「みんなごめんなさい。勝手に動いちゃって。」
私は、みんなに迷惑を掛けてしまったと謝る。
「気にしないで下さい。シャインさんが無事で良かったです!」
ヴァンの言葉に、スノウとシグレも同意し、シャインの無事をみんなで喜び合う。
「それにしても、よく一人で大丈夫だったな?」
「うん。怖かったけど、途中で何度か魔法を使ったから。」
私が、ライトレーザーでゾンビを一撃で仕留めた話をすると、「ゾンビだからか。」とみんな納得していた。
「ここまでで結構倒したから、みんなレベルが上がってるな。」
みんなのレベルを確認すると、レベル22まで上昇しており、全員がクラスチェンジしていることが分かった。
「盾士から中級盾士になったぞ。」
「私も中級弓士ね。」
ヴァンとシグレは、それぞれワンランク上がったと分かるような職業になっている。
「私は剣聖から銀の剣聖になりました。」
スノウの職業は、恐らく氷属性を使うので、銀の剣聖となったんだろう。
「シャインはどうだった?」
「えっと、鍛治職人から幸運の職人になってる。」
何だがラッキーそうな職業名になっているな。
その後は、HPとMPを全回復し、それぞれスキルポイントで新技を覚えた。
「この依頼って、アンデット討伐ってなっていたが、何体倒せばいいんだ?」
これまででかなりの数を倒しているが、終わりが分からなかった。
「彼処に大きな墓石があるから、何かあるんじゃないかな?」
シャインの指差す先には、一際大きな墓石が設置されている。
「そうだな。取り敢えずそこまで行ってみるか。」
明らかに目立つ墓石に向けて、俺達は進み始めたのだった。
今回のおまけ
シャイン:全く、酷い目に遭いました。
クラウド:シャインが無事で良かったよ。
シャイン:動揺して、お兄ちゃんって言ってましたね。
クラウド:仕方ないさ。
シャイン:それでは、恒例の『今日は何の日』コーナーです。
クラウド:あっ!? そのまま流れでやっちゃうんだ。
シャイン:今日は、『ニオイの日』だそうです。ファブリーズ暮らし快適委員会が2000年に制定しました。
クラウド:に(2)お(0)1(1)の語呂合せなんだってな。
シャイン:ゾンビ達にもファブリーズして、ニオイを除去しましょう。
クラウド:いやいや、いくらファブリーズでもゾンビのニオイは消せないだろう。
シャイン:そう言えば、体臭を消すものではありませんでしたね。
クラウド:そうだよ。
シャイン:なら、上空から雨のように墓地の敷地内に降らせて空間ごと除去しましょう。
クラウド:凄い発想だな。
シャイン:そう言えば、お父さんにもファブリーズしなきゃ。
クラウド:え?
シャイン:最近歳のせいなのか、加齢臭が。
クラウド:ま、待てシャイン!? それは流石に可哀想だ!
シャイン:え、でも。
クラウド:娘にそれを言われたら、父さんが泣いちゃうよ。
シャイン:わ、分かった。
クラウド:俺もいつか子供に言われるのかな。
シャイン:クラウドはいい匂いだから、大丈夫だよ!
クラウド:そ、そうか? ありがとう。
シャイン:どういたしまして。




