復讐には復讐を
いよいよ、男女のもつれがファイナルとなりますΣ(-᷅_-᷄๑)
8000PV突破となりました( ^ω^ )
ブクマ、評価、感想ありがとうございます(^^)
溝口千夏の転落事案から2日後。
俺とヴァン、シャイン、スノウ、シグレの五人で冒険者ギルドを訪れていた。
「そろそろ俺達も次の街、ネクストに向かうか。」
ネクストの街が解放されてから、最初の街エアストのプレイヤー数は減少している。
減少はしているが、次の街とエアストにはポートと呼ばれる機能があり、いつでもこのポートを使って、街の移動が一瞬で可能なのである。
俺達は、東の森に出現したダンジョンの更に地下を目指すことは、一旦保留とした。
地下へ行く程、明らかに敵の強さが上がっている為、現状では、次の街を目指し、レベル上げとより強い武具を手に入れてから、再度挑戦しようと言うことで、話がまとまった。
「もう、かなりの数が向こうに行ってるからな。」
ヴァンの言うように、俺達には仕事もあるため、ずっとゲームをやり続けることは出来ない。
ログインし続けている人と、差が出るのは当然である。
俺達が今後の方針を決め、冒険者ギルドから出ようとすると、背後から声を掛けられた。
「なぁ、少し聞きたいことがあるんだけど?」
後ろを振り返ると、杖を片手に持つ、ローブを羽織った男の姿があった。
「なんだ?」
「俺はドッグ。俺の仲間が、この世界で酷い仕打ちを受けたみたいなんだ。やったのはルキって言うらしいんだけど、知らないか?」
酷い仕打ちって何だ?
「ルキって名前には聞き覚えが無いな。みんなはどうだ?」
俺が仲間に声を掛けると、皆首を横へ振る。
「……そうか。」
よっぽど大切な仲間なんだろうか、相当落ち込んでるな。
「因みに、なんて奴がやられたんだ?」
「パーティー仲間のバードとチナツだ。」
バード!? バードって遺書に有った名前だな。
遺書の名前の奴と同一人物かは分からないが。
チナツってのも溝口千夏と名前が同じだし、あの部屋の写真にもチナツと書かれていたものがあったな。
……これは偶然か?
「バードとは、リアルでも友達なんだ。バードからどんな目に遭ったか聞いた。……このゲームがそんな恐ろしいものだとは思わなかったよ。」
俺はドッグに、バードとチナツがどんな目に遭ったのか、詳細を聞くと、耳を塞ぎたくなるような残酷なものだった。
「……自分がやられたらと思うと恐ろしいな。」
「だろ。……怖いけど、俺達はバードとチナツの仇を打ちたい。」
「復讐には、復讐を……か。」
あまり褒められた行為では無いが、この世界には現実世界の法律が適用されていない。
勿論、人を殺そうが、襲おうが、物を盗もうが、現実世界で捕まることは無い。
今のところ、仮想世界でのペナルティーも無い。
以前俺が問題を解決したとして、マネを報酬に受け取ったことがあるが、解決した人に報酬があるくらいだ。
「バードって奴は、ログインしてるのか?」
「怖くてログインしたく無いって。ルキは殺したい程憎んでるみたいだけど。今は、ニュースで溝口千夏さんって人が転落死したって知って、もしかしたらチナツかも知れないから、確認するために葬儀に行くって言ってたな。」
葬儀については、ネットで調べると、溝口千夏の同級生らのカキコミから判明したそうだ。
「そうか。……チナツって、どんな人何だ?」
「チナツは、オレンジ色のロングヘアーで、モデル並みにスタイルが良い、元気で明るい女の子だよ。ゲームで知り合って、パーティー組んでただけだから、本名とか素顔は分からないけどな。」
ゲーム名チナツ……オレンジ色のロングヘアー……モデル並みのスタイル……バード……ルキ……。
ドッグの言葉で、俺の頭の中のパズルが繋がっていく。
「そう言えば、バードが言うにはチナツとルキは、リアルの知り合いみたいで、婚約破棄された、悟って奴みたいだ。」
今の一言で、完全にパズルが完成した。
「ヴァン悪りぃけど、緊急事態だ。ログアウトする!」
「ん? どうしたんだクラウド?」
「バードってのが、ルキをいや、悟を殺す可能性がある!」
「え!?」
俺の言葉に、みんなの表情が固まる。
「ど、どう言うことですか?」
ドッグが慌てた様に、クラウドの肩を揺さぶる。
「バードがチナツの葬儀に行く目的が、元婚約者のルキいや悟を探して殺すことだとしたら? バードは、ルキを殺したい程憎んでいたんだろ?」
「あ!?」
俺の説明で、皆が状況を理解した。
「ログアウトとし、葬儀場に警察を向ける。バードの本名を教えてくれ!」
「あ、ああ、羽鳥 蒼士25歳だ。」
「特徴は?」
「えっと、身長170センチ、体型は普通、髪型が坊主頭で、黒縁のメガネを掛けてます。」
「分かった。ドッグも直ぐにログアウトして、羽鳥に電話を掛けてくれ。」
「わ、分かりました。で、でも、ルキが葬儀に来てない可能性も。」
「いや、奴は来る!」
俺の直感が告げている。奴なら必ず葬儀に来ると!
俺はドッグの話す特徴を記憶し、直ぐにログアウトした。
俺は、現実世界に戻ると、直ぐに110番通報し、経緯を説明しながら、愛車に乗り込み、車を急発進させ葬儀場まで、車をかっ飛ばした。
取り敢えず、警察署から葬儀場に連絡と、警察官を急行させることになった。
俺の家から葬儀場は近かった為、警察官より早く現場に到着する。
「どこだ!? 何処にいる?」
俺は車から飛び降りて、葬儀場を探し始めた。
「あれ!? 係長どうしてここへ?」
俺が古橋悟と羽鳥蒼士を探していると、私服姿の大野さんと遭遇した。
「大野さんこそどうして? いや、今はそんなこと話してる場合じゃない。古橋悟か羽鳥蒼士を探すんだ。」
「はい。私は左側を見てきます!」
「頼んだ。」
大野さんがどうしてこの場に居たのか不明だが、人手は多いに越したことは無い。
雲河原が葬儀場に到着する少し前。
「この度は、……。」
葬儀場の受付には、羽鳥蒼士の姿があった。
「あの悟という方は、来られてますか?」
「悟君なら、彼処にいる人よ。」
俺は受付の人の指差す先に、一人の男を見つけた。
受付の人にお礼もせずに、そのまま男へと近付く。
「よぅ。悟か?」
「……誰?」
「酷いなぁ覚えてないのか?」
まぁ、リアルで会ったのはこれが初めてだから仕方ないよな。
俺は、袖に隠していた特殊警棒を取り出し、悟の頭へと振り下ろす。
ガンッ!
「あーーぁぁああおぁぁぁぁぁぁぁぉぉぁぁぉ!?」
悟は、地面は倒れ込み、両手で出血している頭を抑える。
「五月蝿えよ!」
俺は、痛みで大声を出している悟の口へと特徴警棒を押し込む。
「ルキお前だけは許さねえ!」
「がはっ!? まさか、バードなのか?」
やっと気付いたか。
貴様に受けた苦しみは、こんなもんじゃ済まされないぞ。
「……復讐には復讐を。」
俺は再び特徴警棒を振り上げ、悟の指を一本ずつ潰し始めた。
「悲鳴!?」
俺が悲鳴のする方へ駆け付けると、そこには悟に馬乗りになっている男の姿が。
「やめろバード! いや羽鳥蒼士! ここは現実世界だぞ!」
「そんなことは分かってますよ。何を言っても無駄だ。俺はコイツを殺す。」
羽鳥の目は、深き闇のように真っ黒であり、その表情は狂気に満ちていた。
「た、助けてくれ!? 死んじまうだろ!?」
グサッ!
「お前みたいな奴は、生きてる価値も無い。」
羽鳥は、やりきったといった表情をして、古橋悟の心臓に突き刺したナイフから手を離す。
古橋悟は、胸から血を流し、吐血しながら、目が虚になる。
「馬鹿野郎が!」
俺は、羽鳥に駆け寄り、古橋悟の上から突き飛ばして身柄を拘束する。
俺が羽鳥を取り押さえていると、大野さんも騒ぎに気が付いのか、俺の下へ走って来た。
「大野さん古橋の容態と救急車の要請を!」
「はい! 血が止まりません! 脈も確認出来ません!」
大野さんは、直ぐに救急車を要請し、俺は後から駆け付けた警察官に羽鳥の身柄を引き渡した。
「チナツを死に追いやった罰だ! ザマァみやがれ!」
パトカーに乗せられるまで、羽鳥の笑い声が葬儀場に響き渡った。
「お巡りさんですよね? 今のは一体?」
溝口千夏の両親が、俺に事の顛末を聞くために近付いてくる。
……事の顛末は、説明せざるを得ないか。
「分かりました。全てお話します。」
こうして、俺が知り得た全てを両親に打ち明け、何故溝口千夏が自殺してしまったのかを知った両親は、更に深い悲しみを味わったことだろう。
「ゲームの世界だからって、何でもしていい訳じゃない。仮想世界は、第二のリアルなんだ。」
俺が関わったこの事件の顛末は、ニュースで取り上げられ、世の中の話題となり、同じような被害が多発していることが判明した。
仮想世界の犯罪を現実世界の法律で裁く声が多数上がるが、世の中の法律は、そんな簡単に変えられるものでは無い。
運営側へ、禁止行為の設定を呼び掛ける声も出るが、運営の回答は、『アバター同士の接触を禁止すれば、仮想世界内での夜の営みは無くなる。設定するのであれば、合意の上でなら接触出来るという設定が出来ない訳では無いが、現実世界にそんな機能は無いのだから、仮想世界にも取り入れるつもりは無い。ムードが壊れてしまう。PK行為については、現実世界でも起きること。実際に人が死ぬ訳では無い。』であった。
ムードとか言ってる場合じゃ無いだろうが!
それに、仮想世界内では死ななくても、仮想世界が原因で亡くなった人もいると言うのに!
運営側は妥協案として、『仮想世界に法律が有る訳では無いが、仮想世界内の罰則として、道徳に反する行為をしてギルドに突き出された者は、ステータスの減少や所持金等の没収を行うこととする。』と発表。
これ以上、運営は譲歩しないと表明したのだった。
今回のおまけ
クラウド:今日が何の日か分かるか?
シャイン:1月25日が何の日かってこと?
クラウド:そうそう。
シャイン:う〜ん、分かんないや。
クラウド:何でも今日は、「主婦休みの日」らしいぞ。
シャイン:そうなんですか?
クラウド:なんでも、生活情報紙の『リビング新聞』だかが、2009年に制定したそうだ。毎日家事を頑張ってる主婦がリフレッシュをする日なんだって。
シャイン:そうなんだ!? 初めて聞いたよ。どうやってこの日に決まったのかな? 語呂合わせでもないし。
クラウド:読者アンケートで、年3日、1月25日・5月25日・9月25日になったらしい。
シャイン:へぇ〜。年に3日しかないんだね。
クラウド:......そう言われると、確かに少ないな。
シャイン:なんで、この話になったんだっけ?
クラウド:ああ、親父にもたまには家事をやって、母さんを休ませてやれよって、伝えといてくれ。
シャイン:そう言うことね。分かったよ。
クラウド:世の中の旦那さん! たまには奥さんを休ませてあげなよ。俺はまだ結婚してないがな。そして、世の中の奥さん! 旦那さんも毎日仕事で疲れきってますので、早く帰りたいと思える家にして下さいね!




