武器&防具製作
見事ボスゴブリンを討伐し、エアストへと戻ったクラウド達。
新たな武器、防具の製作に取り掛かります。
エアストで俺達とヴァンは合流し、シャインの工房へと辿り着いた。
「なぁシャイン。前に来た時も思ったんだけど、この工房って、道具とか無いけど、どうやって鍛治するんだ?」
「ゲームの中では、鍛治に道具は要らないの。」
要らないって、じゃあこの鍛治工房って何の為にあるんだ? 何だあの釜?
シャインは、アイテムボックスから大きな釜を取り出していた。
「その釜は?」
「これは、鍛治釜って言って、鍛治職人には初期配布されているものなの。これに素材アイテムを入れると、武器や防具が完成するのよ。鍛治釜は鍛治職人の職業しか扱えないらしいわ。」
鍛治職人である必要があるのだろうか? ゲームならではだな。
釜一つで鍛治がこなせるのに、何で工房にいる必要があるのか、シャインに尋ねると、鍛治釜は工房に来ないと使えない設定になっているそうだ。
「ってことは、鍛治職人なら誰が作っても同じなんじゃないのか?」
鍛治釜があるなら、完成品に差は出ないだろう。
「同じな訳あるかーー!! シャインさんを他の鍛治野郎達と一緒にするな!!」
えーー? 釜に素材入れるだけだろ?
「NPCからの情報だと、鍛治職人のレベルや、鍛治スキル、釜の使用回数やレベルとか、後は運に左右されるそうなの。」
成る程な。
それなら、シャインの実力アップのためにもシャインに鍛治を任せた方が良い訳だな。
俺はメニューを開き、アイテムボックスからウルフの毛皮とワイルドボアの毛皮、鉱石(銅)を取り出した。
「それじゃあシャイン、よろしく頼むよ。」
「任せて。じゃあ早速製作するね。」
シャインは、素材を持って、鍛治釜に近付く。
「まずはクラウドの武器から作るね。柄のグリップ力を上げるために、服屋から布は買っておいたから、一緒に鍛治釜に入れるね。」
金属剥き出しより、握りが安定するからな。
流石、シャイン!
(大好きなお兄ちゃんの武器……良いのが出来ます様に!)
シャインが祈りを込めながら、鍛治釜へと素材を放り込む。
「……。」
『何が出るかな? 何が出るかな? ん〜? これは! 出来ました! 銅剣+5』
なんだ今のふざけた声は? 釜が喋った?
「うっそ!? +5? 私が聞いてた話だと、+3が超レアで最高だったのに!?」
そうなのか? ってことは、この+5は、激レアな武器ってことか。
「シャインさん凄すぎです! 世界一の鍛治屋です!」
ヴァンは拍手喝采で、シャインを褒め称える。
「びっくりね。はいクラウド。」
おおーー!? かなりしっくり来るな。
これなら戦闘が楽になるな。
「ありがとなシャイン。」
現実世界じゃ、シャインの頭を撫でることも無くなったな。
「へへへぇ〜次は防具を作るね。」
シャインは、鉱石(銅)とウルフの毛皮を鍛治釜に放り込む。
(お兄ちゃんの命を守るものなんだから、良いのが出来ます様に!)
『何が出るかな?何が出るかな? んん?? こ、これは!? 銅狼の防具+5』
また+5!? 凄いな! 本当に+5は激レアなんだろうか?
シャインが作り上げた銅狼の防具は、胸当て、肘当て、脛当ての一式であり、身体に密着する側にウルフの毛皮が使われており、攻撃を受ける外側が銅の素材で出来ている。
「どうぞ。装備して見せて!」
「はいよ。」
おおーー!? 見た目も戦う者って感じが出てきたな。
「うん。かっこいいよクラウド。」
「ありがとな。」
「シャインさん! 私のもお願いします!」
うぉ、いきなり割って入るなよヴァン。
びっくりした。
「分かりました。」
シャインは、鉱石(銅)から銅盾+1、鉱石(銅)とワイルドボアの毛皮から銅猪の鎧+1を作り上げた。
ヴァンの見た目もかなりかっこよくなったな。
+値は1だけど、市販のよりもかなり性能は良いな。
「シャインさん、ありがとうございます!! 一生大切にします!」
おいおい、一生その装備でいる気かよ? ゲームが進めば使わなくなるだろ。
「いえいえ。私の鍛治職人としての能力も上がりますから。次はスカイの分ね。」
「よ、よろしくお願いします。」
シャインは、鉱石(銅)から銅杖+1と鉱石銅とウルフの毛皮、服屋から買ったただのローブを放り込み、銅狼の魔法衣+1を作り上げた。
うんうん。スカイも似合ってる。魔道士っぽくなったな。
「シャ、シャインさん、ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
次にシャインは、スカイと同じ材料で武器と防具を作り上げたのだが、+5の武器と防具が完成していた。
「シャ、シャインさんの魔法使い姿、カッコイイ、半端ねぇ………。」
シャインは、家族の俺が見ても容姿はいいと言い切れるからな。
「……どうかなクラウド?」
そんな潤んだ瞳で俺を見上げるなよ。
「うん。すっごい可愛いぞ。」
シャインは、綺麗、可愛いは喜ぶけど、カッコイイはあまり好きじゃないんだよな。
シャインは、よく女子から告白されたり、ラブレターを貰うくらい、女子目線でもカッコイイと感じるところがあるからな。
「本当に? ありがとう。」
シャインのこの笑顔は、反則だと思う。
「ぐはぁ!?」
あっ!? ヴァンが鼻血出してる? もしかして、シャインに惚れたのか?
鼻を抑えて蹲るヴァンはほっとくとして。
「この+値の差ってなんなのかな?」
+が付いていない物は、今回出来なかったし、+値が1と5でばらつきがある。
何か、法則や同じ素材でもレア度が違うとかあるのだろうか?
それとも単純に、運の要素なのだろうか?
「検討も付かないな?」
……鼻抑えながらも話に参加するんだなヴァン。
「分かりません。」
「う〜ん。なんだろうね。(お兄ちゃんのは、すっごい思いを込めたし、私の分も良いのが出来るようにお願いしていたけど……まさかね。」
「分からないことをいつまでも考えていても仕方ないか。新しい武器の性能を試そうぜ。」
やっぱり新しい物が手に入ると、直ぐに試したくなるよな。
剣道に夢中だった頃は、買ったばかりの竹刀をひたすら振ってたなぁ。
「そうだな。」
「そうね。」
「は、はい。」
こうして俺達は、新しい武器と防具の性能を確かめる為に、再び草原フィールドへと向かった。
「そっち行ったぞ!」
「おりゃ! ははっ、こりゃすげぇ!」
ワイルドボアの突進を銅盾で受け止めたヴァンが感想を漏らす。
今までは、少し後退させられていたけど、全くブレなくなったな。
試しにノーガードでワイルドボアの突進を喰らってみたが、今までと比べ物にならないくらい、防御力が向上していた。
「やー!」
スカイが銅杖でワイルドボアにトドメを刺す。
スカイは魔法使いだが、武器が銅杖になったことにより、一撃の威力が格段に上がっていた。
「いやぁ、武器と防具でかなり変わるもんだな。」
「シャインさんのお陰だな! 感謝しろ!」
「何故ヴァンが威張るんだよ! シャインには感謝してるよ。」
「いえいえ。」
数回のバトルを終えて、フィールドからエアストへと歩きながら雑談する。
「ん〜、シャインに良い武器と防具作ってもらったから、なんかお礼しようか?」
ゲーム内でもいいし、リアルでもお礼は出来るからな。
「本当ですか!?」
うわっ!? そんなに飛びついて来なくても。
「あ、ああ。これでも同世代じゃ稼いでる方だからな。現実世界でも、こっちの世界でも、どっちでもいいぞ。」
一流企業とか、自営で上手く行ってる人には勝てないけどな。
「じ、じゃあ、今度の休みに家に帰って来て。それまでにお礼してもらいたいこと考えておくから!」
ん? そんなに考えるのか? まぁ、最近実家に帰ってなかったからな。
「分かった。今度の非番の日に帰るから、母さんに俺の分の夕飯も頼んでおいて。」
久しぶりに、母さんのご飯だな。
「うん。楽しみにしてるね。」
今の高校生が何を欲しいのか分からんが、多めにお金持って帰るか。
「シ、シャインさん。そ、それなら俺からもお、お礼を……。」
ヴァンのゴニョゴニョした声は、誰にも聞こえることはなかったのだった。
今回のおまけの前に、鍛治釜に、同じ素材を入れているのに別のものが仕上がるのは、鉱石の分量の違いと、鍛治職人が作成する武器防具の種類を選択できるためです!と後付けしました( ̄▽ ̄;)
ということで、今回のおまけ
クラウド:おぉ、これが新しい武器と防具か!
シャイン:カッコいいよクラウド! 私の初めてなんだから、大切にしてね。
クラウド:勿論だ。大切にするよ。
ヴァン:シャインさんの初めては、俺が欲しかったのに。
スカイ:わぁ〜初期装備から初めて更新した武器がこんなに良い装備だなんて! これなら直ぐにやられないぞ!
ヴァン:!? 俺の初装備は、シャインさんのもの!
クラウド:なぁシャイン。何で俺とシャインの装備は+5だったと思う?
シャイン:(そ、それは)私がお兄ちゃん大好きだから(えっと何だろうね。)
クラウド:俺もシャインのこと大好きだよ。
シャイン:(え? )これは夢? お兄ちゃんが私のことを。
作者:シャインさん心の声の方が出てますよ!笑
シャイン:嘘!? キャーーーー!
クラウド:どうしたんだシャイン?
作者:ヴァンやれ!
ヴァン:イエッサー! 『シールドアタック』!死ねやクラウドー!
クラウド:え?
スカイ:ンギャ!? dead
クラウド:スカーーイ!?
作者:ヴァン、外してんじゃねぇよ。
ヴァン:次は仕留めてみせる。




